ツッコム俺の身にもなってくれ!!
三月一日。 快晴。
卒業式も無事に終え、友と肩を組みながら家へ帰る生徒や、この日を機に好きな人に想いを告げる生徒もいた。
本校の卒業生の一人、西野大地は今までお世話になった教員や、クラスメイト、友達に挨拶を終えて校庭に咲く一本の桜の木の下で静かに花弁が散るのを眺めていた。
「終わったな、俺たちの学校生活」
彼に近付き、声を掛けるは親友、東野院空。
対して大地は「そうだな」とどこか寂しそうな声音で瞳を閉じた。
「これで本当に離れ離れになってしまうのだな……」
大地のその言葉に空は「はぁ? 何言ってんだお前?」と的外れな答えを返す。
それにより大地は「ん?」と困惑する。
「お前はこれから俺と一緒に吉元に行って芸人を目指すんだよ」
空の意味不明な発言に「何言ってんだ? 俺は音大に行って音楽の道を歩むんだよ」と言った時、大地はハッ!? と何かを思い出すかの様に自分の合格通知を確認する。
すると、合格通知がヒラリと落ちて、そこに記されていたのは吉元興業の合格通知だった。
飛んで行った音大の合格通知を見ると、合格と記載されている筈の部分だけが綺麗に切り抜かれていたのだ。
どういうことだってばよ……!? と大地は驚きを隠せないでいた。
そんな彼の心情を読み取ったかの様に空が口を開く。
「少し力を使わせてもらった」
何一つ悪い事をしたと思っていない空に対して「ふざけんじゃねぇよ! どうしてくれるんだ!?」と大地が叫ぶ。
しかし空は悪びれる事無く「まあ、そう怒るなよ? 一緒に世界一の芸人、目指そうぜ?」と笑った。
それに対して大地はワナワナと身体を震わせ、そして遂に弾けた。
「ツッコム俺の身にもなってくれ!」
今日は三月一日、快晴。
二人の新たな伝説の始まりを祝福するかの様に、春の暖かい風が優しく校内を吹き抜けた。




