俺たちの夏
八月下旬。
夏休みも終わりに近づき、TVでは全国各地で花火大会が次々と行われている。
今日は隣町が花火大会であるが、大地一行は空の手品によって拡張されたベランダで彼の母が用意した料理を摘まみながら花火が上がるのを待機している。
「まさか大地の家のベランダで花火が見れるとはな」と月華は紙コップに入っているミルクティーを口にしながら言った。
「その代り、俺の家の近辺に集まる人が多いけどな」と大地は苦笑しながらそう言った。
空は左腕に付けている腕時計を見て「上がるぞ」と口にすると同時にヒュルルルッ! と音を立てながら花火が上がる。
満開に開かれる花火の輝きにおおっ! と小さな歓声が沸き上がる。
花火が次々と上がっていく中、不意に陽子が口を開いた。
「もうすぐ夏休みが終わるね?」
その言葉に「そうだな」と首を縦に振る一同。
「これから受験に追われると思うと寂しくなるね」というジャスティスの言葉に大地は「そういや皆、進路は決めているのか?」と質問した。
「私は大学へ行く」と月華は言った。
「私も大学に行くかな」と陽子は言った。
「僕は警察学校に通うよ」というジャスティスの進路に大地が「警官になるのか?」と聴くと彼は「勿論! 最終的には警察庁長官になるつもりだけど」とどこか自嘲気味に答えた。
ジャスティスも将来の事について考えているのだな……、大地はますます自分が三年生だと言う事を思い知らされる。
「俺と雪姫は就職する」と言う菅原の言葉に大地は「それは意外だな。 進学するのかと思った」と言うと「まあ、色々とあるのさ」と彼は言った。
「ミーはアメリカに帰るよ」というレベッカの発言に一同は驚愕する。
「そうか、帰ってしまうのか」と月華はどこか寂しそうな表情を浮かべた。
「寂しくなるね」と陽子が言うとレベッカは人差し指を振って「別に二度と会えなくなる訳じゃないよ? 日本にはまた遊びに来るつもりだし。 その時はテルするよ」と特撮ヒーローの仮面越しに笑った。
「僕も故郷に帰るよ」
あっちにはやることが沢山あるからね、とジャックが言った。
皆、色々と考えているのだな、と大地は思った。
「空はどうするんだい?」とジャスティスが問うと空は「それはヒ・ミ・ツ!」と不敵に笑った。
「どうせ何も考えていないのだろ?」と大地が煽ると「俺が何も考えてないわけないだろ? 失礼な」と空は少し不貞腐れる様な表情を浮かべて見せた。
「大地くんはどうするの?」という陽子の問いに「音大に行くよ」と大地は答えた。
すると皆は「意外だな」と言いたげな表情を浮かべる。
「無限大日本と言う今では知らない人はいない伝説のロックバンドに影響を受けたんだ。 俺もこんな風に自分の心情を伝えていきたいって」
自分の夢を熱く語る大地に、皆は優しく微笑んだ。
花火が上がる。
その幻想的な炎の華を静かに見つめる大地一向。
もうすぐ、俺たちの夏が終わる。
そう思うと胸が苦しくなる大地であった。




