雨の日って凄く暇だよね?
月日は六月へと変わり、梅雨の時期に入り始めた。
春の爽やかな空気から夏に入り始める特有のジメジメとした蒸し暑いものへと変わり、場所によっては蝉が鳴いている所もあった。
今日は日曜日。 外は生憎の雨であった。
この様な場合は年頃の少年少女たちであれば友達の家に遊びに出掛けるか、一日中部屋の中でゴロゴロするか、勉強するかに別れる。
勿論、大地は後者である。
学校で出た宿題は昨日の内に済ませているので今日は特にやることが無い。
なので今日は一日中、部屋で趣味に没頭しようと行動を開始した直後であった。
ピンポーンと家の呼び鈴が鳴った。
嫌な予感がする。
玄関の方で母の声が微かに耳に入る。
そして階段を上る足跡が次第に大地の部屋へと近づいて、
「オッス! 大地! 遊びに来たぞ!」
と勢いよく扉が開かれ、空が勝手に大地の聖域へと踏み込んできたのだった。
「帰れ」と大地は冷たく言った。
「まあまあ、そう言うなって。 今日は他に二人程連れてきたしさ」
「他に二人……、だと……?」
嫌な予感がした。
「オッス、大地。 遊びに来てやったぞ」
「おっ、お邪魔しますっ!」
月華、陽子の順番で大地の部屋へと入ってきた。
「なに勝手に女子まで連れて来てんだ!?」
驚きを隠せないで叫ぶ大地に「良いじゃん、別に。 友達なんだしさ」と空は何食わぬ顔で返した。
「よくねぇよ! 女子だぞ、女・子! 空だけならまだしも月華と陽子が来たら着替えなくちゃいけねぇじゃねぇか!」
それに! と大地は空を指差し言葉を続けた。
「何だ、そのお洒落な格好は!? お前、普段俺の家に遊びに来る時だいたいラフな格好で来るじゃねぇか!?」
「何言っているんだ? 女子と遊ぶんだぞ? お洒落して当然だろ?」とさも当たり前の様に答える空に大地は「だよね! そうだよね! だからそんなテメェが気に食わないんだ!」と声を荒げた。
「別に私たちは気にしないぞ?」と言う月華に「俺がするんだよ!」と大地は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ご、ごめんね。 空くんが大地くんの家に遊びに行くけどどう? って誘われて最初は断ったのだけど月華ちゃんも来るからと言ったからつい……」
陽子は今にも泣きだしそうな顔でそう言った。
大地は慌てて「あ、いやっ……! 良いんだ。 陽子たちは別に悪くないよ。 悪いのはあの馬鹿だから」と空を指差して言った。
それにムッとした空は「何だと!? 馬鹿って言ったヤツが馬鹿なんだからな! この馬鹿!」と言い返した。
対して大地は「あー、あー、もうこれ以上ややこしくしたくないから兎に角お前ら全員廊下で待っていてくれ」と部屋から追い出そうとすると「別に目の前で着替えて良いのだが」と月華が問題発言したので「よくねぇよ!」と力づくで部屋から出て行かせ、扉に鍵を閉めた。
それから数分後。 着替え終わったので三人を部屋の中へと入れた。
大地の格好を見た月華は「普通だな」と言ってきたので大地は「まあ、お前らを待たせる訳にはいかないからな。 無難な格好に着替えさせてもらったよ」と返した。
「でも色の組み合わせは良いね」と陽子が褒めた。
「ありがとう、陽子」と大地が微笑むと彼女は少し照れ臭そうに少し頬を朱に染めた。
「そのTシャツのプリントから見てかなり拘っているだろ? センスが良い」と次は月華が褒めた。
大地は「まあな」と少し胸を張った。
「よしっ! 大地も着替えた事だし」と手を軽く叩いて皆の視線を集め、空は言葉を続けた。
「今から何する?」
そんな彼に大地たちは「考えてないのかよ!?」と言う気持ちに襲われたのだった。