皆でお泊り会・二回目
三月某日。 快晴。
遂にこの日がやってきた。
大地は一抹の不安を抱えながら今か今かとどこか落ち着かない様子で友の訪問を待っていた。
そして午前九時四五分、呼び鈴が鳴った。
一つ深い溜息を零しながら大地は重い足取りで玄関へと向かった。
「押忍! オラ空。 泊まりに来たぜ!」とテンション高めで胸が踊らない発言をする空。
「今回も邪魔するぞ」と菅原は痛いオーラを発しながらそう言った。
「お邪魔します」と律儀に頭を下げるジャスティス。
「お邪魔するで候」とジャスティス動揺、律儀に頭を下げる自称侍兼大地の家臣の一騎。
「邪魔するぜ!」と空よりも高いテンションでやってきたガルム。
「そう言えばジャックは?」と大地は一人足りない事に気付くと不意にどこからか「はぁーいっ! 名前が出て来てジャジャジャーンッ!」と言って勢いよく現れた。
空と菅原、ガルムを除いた三人は驚きの余りにその場で尻餅をつく。
「おい! ジャック! そう言った行動は控えろとあれほど言っているだろ!」と指摘する菅原に対しジャックは「これが僕のアイデンティティなんだから別に良いだろう?」とどこかつまらなさそうな声音で言った。
「よし! 皆集まった事だし、入りますか!」と大地の許可なく家内に入り込む空。
それに続く様に他の仲間たちも上がっていく。
「お、こんな所にエロ本隠しているんだな?」
大地の部屋に入ってすぐにエロ本を探し当てるガルム。
「何故解ったし!?」と驚愕する大地に「彼は鼻が利くからねー」とジャックが理解出来ない説明をした。
それから大地たちはTVゲームで盛り上がったり、風呂を嫌がるガルムをジャックが連行していくのを黙って見たりと騒がしい一日を満喫した。
そして夜、皆は大地の部屋にそれぞれ敷かれた布団の中に潜り込み、談笑する。
「いや~! 今年は凄ぇ楽しい一年だったぜ!」
ガルムはそう言いながら笑みを浮かべ両腕を高等部に回す。
「本当、充実した一年だった」とジャックはカボチャ頭を外さずにそのまま寝転がったまま言葉を続ける。
「大地。 君には本当に感謝しているよ」
「どうしてだ?」と大地が聴くとジャックは小さく笑って「君がいなかったらこんな日常は送れなかったからね」と言った。
それに呼応する様に「確かにな。 大地、俺からも感謝する」と菅原が口にした。
「別に俺は何もしてないよ」と大地は微かに笑った。
「また来年度もこうしたいね」とジャスティスが言った。
「そうですな。 拙者もまたやりたいでゴザル」と一騎はジャスティスに続いて口を開く。
「勿論、来年もやるぞ!」と既に来年の予定も決めている空。
そんな彼に大地はやれやれとまんざらでもない様な笑みを浮かべてそのまま瞼を閉じた。
来年度から三年生。 俺たちも進学や就職活動をする時が訪れるのだろう。
そして、来る日が訪れた時、月華や陽子ちゃん、コイツらとは……。
そこで大地は考える事を止めた。
これ以上踏み込んではいけないと、そう自分に言い聞かせるのであった……。
レベルアップ! 二年生編・完




