裸で語れ!! 魂!!
木材で隔離された空間で、十人の戦士が大量の汗を黙々と流しながらベンチに座っていた。
内四名を除いた戦士たちは蒸し上がる様な熱気にそろそろ体力の限界を感じている。
そして互いに顔を見合わせてはただ一つの言葉が脳裏に浮かんだ。
お前ら誰か先に出ろ、と。
何故この様な事になってしまったのかを遡ること約三十分前。
銭湯に辿り着いた空一行はそれぞれ入浴料を払い、脱衣場で衣服を脱ぎ、下腹部にタオルを巻いて浴場へと足を踏み入れ、シャワーで身体の汚れを洗い流し湯に浸かった。
「あ~、効くわ~」本当に気持ち良さそうに寛ぐガルム。
「こんなだだっ広いお風呂に入るのは初めてだ」と隣に浸かっているジャックは表情が読めないそのカボチャ頭を未だ被ったままどこか歓喜に満ちた声音を発した。
「こりゃ五臓六腑に染みわたるゼ」と言う土御門の発言に右隣にいる九十九が「何歳だ、お前」と苦い笑みを浮かべる。
「こうして皆と肩を並べて湯に浸かれるとは拙者、感激でゴザル」
「そんな大袈裟な」と大地は小さく笑った。
そうして湯船で寛いでいく内に、不意に空が口を開いた。
「なあ、ゲームをしないか?」
その言葉に大地、菅原、ジャスティスの三人がビクッと身体を震わせる。
昨年の出来事を知らないガルムは「どんなことをするんだ?」と興味津々に聞くと空は「あれだよ」とサウナルームを指差し言葉を続けた。
「あの中に入って、我慢比べをする。 一番に外に出て行った人間が負けだ。 因みに罰ゲームは勝者全員に飲み物を奢るというものだ」
ルールの説明に「それは面白そうだね」とジャックが言った。 それに続く様に「やってやろうじゃねぇか!」とガルムと土御門が口にする。
「今こそ、侍の力を魅せる時!」と一騎は訳の解らない事を言った。
この(闇の)ゲームの怖さを知っている大地、菅原、ジャスティスの三人は反対したくてたまらない。 しかし、このゲームにめっぽう強い言い出しっぺの空、九十九、進は勝つ自信があるので当然参加。 そして初参加の一騎、土御門、ガルムとジャックを加えると賛成意見が七人。
どんなに思考を巡らせても参加せざるを得ない状況にある三人は、「こうなったらままよ」とゲームに参加するのであった。
そして現在に至る。
大量の汗が頬を滴り床へと落ちていく。
まさかこんなことになるとは誰も思ってはいなかっただろう。
初参加の土御門は両膝に肘をつけながら前に屈む様にサウナの暑さに耐えていた。
ガルムと一騎に至っては限界が来ているのか、どこか顔色が良くない。
このままではいかないと感じた大地は「皆、良い案がある」と皆の視線を集めた。
「ご覧の通り、あの四人はまだまだサウナルームに残れる自信があるだろう。 しかし、俺たち六人はもう限界に近付いている」
そこでだ、と大地は拳を上げて言葉を続けた。
「俺たち六人でじゃんけんをしよう。 負けた奴が外に出る。 オーケー?」
彼の説明に他五名はオッケィッ! と親指を立ててそれを承諾した。
「いくぞ! ジャンケン!」
ポンッ! と大地はチョキを出した。
他五名は全員グーを出していた。
予想外の結果に六人の中で気まずい沈黙が走る。
その後の事は、心中をお察し願いたい。




