観光名所巡り・最終日
一二月某日。 快晴。 午前九時一五分。
F県、観光名所の一つ、海中道水族館に辿り着いた空一行。
久しぶりに来たな……。
大地は中学校の長期休暇の時に親友と共に訪れた時の事を思い出し、懐かしむ。
「よし、行くか!」と空が先頭を切って水族館の中へと足を運ぶ。
他の仲間も彼の跡に続いて中に入る。
「おい! 何だよアレ!?」
入場料を払い、空一行が最初に向かったのはイルカショーのステージだった。
イルカと飼育員のダイナミックなパフォーマンスに観客席ではしゃぐガルム。
「何ってイルカだヨ!」
見た事ないのか? と思いながらも土御門が説明した。
対してガルムは「俺とジャック先輩の故郷には海が無いからな!」と口にする。
それを聞いた空と菅原、進にジャックを除いた全員が耳を疑った。
しかし、海が無い国なんてそれなりにあると思い、それ以上気にすることはなかった。
それによりジャックはホッと息を吐いたのだった。
それから空一行は色々なショーを見て楽しんだ。
「いや~、楽しかったぜ!」とガルムは水族館を出るなり伸びをして言った。
「良い所に来させてもらったよ」とジャックはどこか満足したかの様な声色で感想を述べた。
どうやら二人ともご満悦のようだ。
「満足してくれたようで良かったぜ!」と空は嬉しそうに笑う。
「良い思い出になった。 ありがとな」
不意に進が改まるように口にした。
それに続く様に九十九と土御門も「最高の学校生活を送れた。 退屈しなかった」と口を横に広げる。
「まだ、卒業式まで時間はある」と菅原が言うと「それまでもっと思い出を作りましょう!」とジャスティスが力強く親指を立てた。
その言葉に三人の先輩は「そうだな」と微笑むのだった。
その様子を見ていた大地は何故か胸の中でモヤモヤとした何かが強まるのを感じた。
『今はその気持ちに目を背けておけ』
進の言葉を思い出し、無理にこの胸のモヤモヤを気にしない様にするのであった。




