水着回だと思った? 残念!! 俺たちだよ!!
七月某日。 快晴。
目前に広がる青い空に青い海。
今年も大地たちは新メンバーを連れてやってきた。
「嗚呼、良いねぇ……。 青い空、青い海」と空は目前のビーチを見て一人黄昏る。
「新しい伝説が生まれそうな予感がする」と訳の解らない発言をしながら空と同じように黄昏る私立橘高等学校が生徒会長、神藤進。
「いったいどんな伝説が始まるのか聴いて良いか?」とあえて横から首を突っ込む九十九悟。
「悟、進ちゃんのいつものことダ。 放っておケ」と進の事を誰よりも理解している土御門良平。
「今年もやってきたな」といつよりも痛いオーラが増している菅原葵。
「今年も遊び尽くそう!」とこの面子ではまともな部類に含まれている最弱の正義の味方、ジャスティス・正義。
「新参者ですが皆と楽しい思い出が出来るように全力を尽くすで候」といつも以上に気合を入れる大地の下臣兼自称侍、宮本一騎。
「結局今年もまた男だけで来たな……」といつもの様に苦い笑みを浮かべる西野大地。
「さて! 毎年お馴染みのビーチフラッグをやろうぜ!」と空はどこからか一本の旗を取り出してそう言った。
それにより去年ここでビーチフラッグをやった事を思い出し、大地は思わず深い息を吐く。
念の為、罰ゲームの内容を聞いてみると「敗者は去年同様、皆に昼食を奢る」との事らしい。
本当、毎度毎度罰ゲームを受ける身にもなって欲しいものである、と大地は両の肩をガックリと落とし顔を俯かせた。
勿論、他の人間たちはやる気なので大地も強制的に参加する形になる。
ルールは簡単。 トーナメント形式で負けた人間が上へと上がっていくシステムである。
大地の一回戦の相手は私立橘高等学校が風紀委員長の土御門。
「宜しくナ。 大地ちゃン」
ニッ! と歯を見せつける土御門に対して「お手柔らかに」と大地は苦い笑みを浮かべる。
二人は砂浜でうつ伏せになり、ビーチフラッグをやる態勢に入った。
審判となった空が開始の合図をとる。
「位置について……」
いつでも飛び出せる様に神経を研ぎ澄ませる二人。
「よーい、ドンッ!」
スタートはほぼ同じ。 しかし、五メートルを過ぎた所から土御門に距離を離されフラッグを取られ大地は敗北した。
「悪いな、大地ちゃン!」と笑う土御門に「クソッ!」と大地は砂を叩く。
次の大地の対戦相手は一騎だった。
彼は先程、九十九と競い、僅差で敗けてしまった。
そうだ、一騎は仮にも俺の下臣だ。
忠誠を誓っている彼ならきっと自分の為にあえて敗けてくれるであろう、と大地は淡い期待を持って、ビーチフラッグを行う。
その結果、見事に裏切られた。
下臣に敗北を味合わされたのだ。
余りの事実に呆然とする大地に「大地殿、御免!」と一騎は謝罪する。
「クソッ! 次だ!」
次の対戦相手は私立橘高等学校が生徒会長の進。
彼は葵との勝負に負けた。 それもまるで大地と戦う為に負けた様に見えた。
勿論、そんな進の心情など知らない大地は彼と共に三度目のビーチフラッグの態勢をとる。
開始の合図が鳴ったと同時に目にも留まらぬ速さで進がフラッグを手に取った。
嘘……、だろ……?
これにより、大地は最後に残った空と競う事になったのだが、その勝負の結果はどうか察して頂きたい。
その日、海水浴場で少年の悲痛の叫びが響いたとか。




