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ツッコム俺の身にもなってくれ!!  作者: 楽椎名
ピチピチの一年生編
4/80

空×大地

 陽子が友達に加わってから二週間が経った。

 四月の下旬。

 この学校に入った生徒たちは段々慣れてきたのかそれなりに関わりの少ない人間とでも当たり障り無く会話できるようになっている。

 桜の花弁もとうとう散ってしまい、夏へと模様を変える準備をしている。

 この二週間、月華は空と大地の様子を見ていた。

 二人は中学の時からの付き合いらしく、それ故に仲の良さが一際浮いている。

 空がボケては、大地がそれをツッコム。 そう、まるでコンビの芸人の様に。

 傍から見れば、それは中の良い二人組に見えるだろうが月華は違った。

 彼女から見た二人はどこか『ただの親友』とは思えなかった。

 なにか目には見えないモノで繋がっている様に見えたのだ。

 空と、大地。

 ボケとツッコミ。

 見えないなにか、繋がっている……。

 責めと、受け……。

 繋がっている……。

 まさかっ!?

 雷に打たれた様な衝撃を覚えた。

 まだ暑くないのに頬からは一滴の汗が伝い、身体が小刻みに震える。

 いや、もしかしたら自分の思い過ごしかもしれない。

 ベッドの上で血に飢えた狼の様な表情を浮かべた空が少し恥ずかしそうに頬を朱に染める大地に如何わしいことをする妄想が脳裏に浮かんだ。

 いいっ!

 ゾクッ! と大地は今までに感じた事の無い悪寒が走ったとか。



 放課後。

 今日は珍しく月華と陽子の二人だけで下校していた。

 空と大地の前では口に出せない内容と言う名目で陽子だけを連れ出したのだ。

「月華ちゃん、私にしか聞けない事って?」

 陽子が聴くと月華はただ前を見ながらゆっくりと口を開いた。

「空と大地……、どう思う?」

 その言葉に「ふぇっ!?」と陽子は頬を赤らめた。

「どっ、どうって……、そのっ……」と陽子が恥ずかしそうに両手を絡ませると「空と大地、何だか怪しい関係に見えないか?」と月華が某名探偵の様な表情で彼女の顔を見て聴いた。

 その瞬間、陽子は「へ?」と間抜けな顔を浮かべた。

「怪しい関係って?」

「あいつら二人は仲が良い、いや、良過ぎる。 いくら中学からの付き合いだからと言って、あそこまでお互いの心を赦せるものなのだろうか?」

「かっ、考えすぎだよ……」

 苦笑する陽子に対し「馬鹿者!」と月華は声を荒げた。

「陽子はあの二人がただの『親友』と言う関係でなかったらどうする!?」

「かっ、考えすぎだよ……」と今度は視線を泳がせ、声を震わせた陽子。

 大地くんと空くんがそう言う関係はちょっと嫌かな、と一抹の不安を覚えた瞬間であった。

「兎に角、明日聴いてみようと思う」と月華は決意したのか、拳を固く握りしめた。

 考えすぎだと思うけどな、と苦い笑みを浮かべる陽子であった。



 翌日の朝。

 教室には珍しく大地だけが一人だけ自分の席に座っていた。

「おはよう、大地」と月華は自然に挨拶した。

「おはよう、大地くん」と陽子はどこか照れた様子で挨拶した。

 彼女らの心情を知らない大地は「おはよう」といつもの調子で軽く返した。

「大地、前から少し気になっていたのだが……」

 早速、要件を聞こうとする月華にどうなってしまうのだろうかと不安に感じながら陽子は見守った。

 月華は拳を強く握りしめ、少し頬を赤らめながら「空と大地は突き合っているのか!?」と少し興奮して聞いた。

「付き合ってねぇよ! 何を言い出すんだ!? ってか『突き合う』って何だ!?」

 彼の叫びに月華はどこか幸福に満ち溢れた表情で「何ってナ」と言い掛けた所に「言わせねぇよ!」と大地が被せた。

「だが中学の付き合いだからって異常なくらいに仲が良過ぎやしないか?」

 月華の言葉に大地は少し言葉を失った。

 ふと自分が中学の頃の事を思い出し、次第に笑みを零した。

「まあ、あんなどうしようもないバカだが感謝している所もあるんだ」

 その瞬間、大地の近くにある教室の扉が開かれ、「やっぱり?」とどこか勝ち誇った表情を浮かべながら空が入ってきた。

「いたのかよ!?」と叫ぶ大地。

 そしてまたいつもの様な感じになる。

 その様子を月華と陽子は「彼らはきっと、一口では言い表せない何かで結ばれているのだな」と思い、どこか羨ましそうな表情を浮かべるのであった。

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