男共×大地
まだ冷たい風が吹く日が続く中、月華は密かに大地の事を観察していた。
「大地、今日は暇か?」
昼休みに大地に声を掛けるは一本の赤いラインが入った黒い髪をした男子生徒。 大地と同じ背丈をしており、華奢な身体つき、腰には二本のベルトが巻かれており、根暗とはまた違った暗い雰囲気を纏っている。
「何だ? 菅原」と大地は若干引き攣った顔を浮かべながらそれに対応する。
声を掛けてきた彼は菅原と言うらしい。
彼は「ここでは言えない事だ」と目で回りを見渡し、そう口にした。
大地は「またか……」と言う様な表情を浮かべながら頭を抱え、「手短に済ませろよ?」と言って席から立ち上がり、菅原と言う男と共に教室から出て行った。
怪しい……。
翌日の昼休み。
今度は別の男子生徒が大地に声を掛けた。
「大地くん。 今、良いかい?」
昨日やってきた菅原とは違い、彼は七三分けで髪をセットしており、黒縁眼鏡をかけている。 制服を綺麗に着ているところからして真面目な雰囲気が伝わってくる。
「お、ジャスティスか。 どうかしたのか?」
菅原と違ってフレンドリーな受け答えをする大地。
「今週の土日は暇かい? 少し教えて欲しい所があるんだ」と言う彼に対して「良いぞ。 土曜日は私情で空いていないから日曜日に俺の家に来てくれ」と大地が言った。
「解った。 じゃあ、日曜日。 大地くんの家で」と言ってジャスティスは眼鏡をクイッと上げて教室から立ち去った。
その彼の後ろ姿を大地は寂しそうに見送っている様に月華は見えた。
そしてその翌日の昼休み。
「大地殿ぉ~……」と情けない声でやって来るは自称侍兼大地の下臣の宮本一騎であった。
彼はやって来ると同時に大地の片足にしがみつく。
対して大地はそれを「何だ!? 鬱陶しい! 離れろ!」と冷たくしがみつかれた足で払い除ける。
しかし、一騎は離れずそのまま「大地殿ぉ~……!」と飼い犬が飼い主に甘える様な声で自分の頬を当てる。
その行為により、大地の背中に悪寒が走る。
身の危険を感じた大地は「だから何だ!? 鬱陶しい! 離れろ!」と一騎に縋りつかれている足で振り払う。
振り解かれぬよう一騎は両腕でしっかりとホールドし「たまには拙者とも絡んで欲しいで候……」と侍を名乗っている割には弱々しい声音でそう言った。
その言動が月華の妄想をより一層、激しいモノへと変える。
大地はハアッと溜息を吐いて「解った。 今度暇な時相手してやるから」と口にした。
それを聞いた一騎は勢いよく顔を上げ、「それは誠で御座いますか!?」と確認を取る。
「男に二言は無い」
彼のその一言で一騎は新しい玩具を買って貰った子どもの様に嬉々とした表情を浮かべ、「ありがとうございます!」と頭を下げその場から立ち去って行った。
一部始終、そのやり取りを隣で見ていた月華は居ても立っても居られなくなったのか、遂にその重たい腰を上げて大地に問いかけた。
「大地、やはりお前、男好きだろ?」
彼女のその問いに大地は「何故そうなるんだ……?」と些か疑問を感じながらただ何とも言えない苦い笑みを浮かべるのだった。




