やっぱ親しくなった友達にはあだ名をつけるよな!
「なあ、あだ名で呼び合わないか?」
昼休み、いつものメンツで昼食を摂っている最中、空がそんな事を口にした。
「何故?」と呆れる様に大地が聴くと「いや、俺たち友達になってからもう一年経とうとしてるし、もうそれ位の中になっても良いんじゃないか?」と空が答えた。
お前、俺と中学の頃からの中なのにあだ名なんてつけなかっただろう、と言いたくなる様な衝動を大地は抑えた。
「良いんじゃないか? そう言うのは嫌いじゃない」と月華はその案に賛成した。
「私も良いよ」と陽子もそれに賛同する。
「よしっ! 決まりだな!」と空が手を一回叩くと「待て。 俺は賛成していないぞ?」と大地が口を挟む。
「何、お前? この学校生活、一生『大地』で良いのか?」という空の質問に「別に良いよ! 何、その舐め腐った顔!? ムカつくんですけど!」と大地は声を荒げた。
そんな彼の様子に「まあ、良いじゃないか。 別に減るもんじゃないし」と月華が宥める。
「ほら、あだ名で呼び合うって距離が近い友達みたいで良いじゃない」と陽子も彼女の跡に続く。
大地は頭を悩ませた。
正直な所、あだ名で呼ばれるのは悪くないと思っている。
しかし、あの親友の事だ。 とてつもなく不本意なあだ名をつけられるに違いないと大地は考える。
だが、普通に名前を呼ばれるのもそれはそれで哀しいと大地は感じた。
まあ、あの空が親しみを込めてあだ名で呼び合うと言っているんだ。
そんなヤツの気持ちを踏みにじる訳にはいかないな。
大地は首を小さく縦に振り、「じゃ、あだ名で呼び合うか」と言った。
「よしっ! 決まり! それじゃ早速言っていくぞ!」と空は皆のあだ名を発表した。
「月華ちゃんは月ちゃんだな」
「意外と捻りが無いな!?」と大地は困惑する。
「そして陽子ちゃんは陽ちゃん」
彼の意外と捻りの無いあだ名に若干苦い笑みを浮かびつつも、これなら自分に変なあだ名をつけられる事は無いなと大地は安堵する。
「大地はクッコロな!」
「ちょっと待て」と大地はこめかみに青筋を立ててそれを静止した。
「何だ?」と言う空に「何故、俺はクッコロなんだ!?」と大地が抗議する。
「だって、誰がどう見たって大地はクッコロだろ?」
なあ? と月華に理解を求めると「確かに、大地はクッコロだ」と彼女は言い切った。
「マジかよ!? 嫌だよソレ!」と大地は悲痛な声を上げる。
「クッコロって何? ピッ○ロの兄弟か何か?」とクッコロの意味を何一つ理解していない穢れなき陽子の問いに対して「陽子には知らなくて良い事なのだよ?」と月華が優しくそう言い聞かせた。
クッコロ。 それは、バトルモノのアニメや漫画、小説と言った作品の中で、腕っぷしのあるキャラクターが敵に捕まり「クッ! 殺せ!」と懇願するもその身体を弄ばれてしまう人物の事を指す。
「俺がクッコロなら空は何なんだよ!?」
大地の問いに「俺か?」と空は顎に手を添え考え始める。
暫くして思いついたのか彼はゆっくりと口を開いた。
「やっぱりロクサ……」
「それは止めておけ!」と空が言い切る前に大地が止めた。
その後、やはり名前で呼び合おうと言う結果に終わった昼休みであった。




