楽しい楽しいクリスマス会
一二月二四日。
子ども達が待ちに待ったクリスマス・イヴ。
楽しさの余り、羽目を外す子どももきっといるだろう。
現在、大地の目の前にはそれに当て嵌まる人物が二人いた。
「クリスマス・イヴだぜ! 野郎共!」とコーラ片手に騒ぐは大地の親友、東野院空。
「時間ギリギリまで責めるぜ! この野郎!」とナニを責めるのか問い質したい私立橘高等学校が生徒会長、神藤進。
そんな二人を見た九十九が「二人とも、はしゃぐのは良いが、ここは西野の家だと言うことを忘れるなよ?」と最もな注意をした。
その様子に菅原とジャスティスは苦い笑みを浮かべる。
大地はやれやれ、とその光景を眺めていると、ふと中学の頃を思い出した。
そう言えば、空と出会わなければ、今日みたいな一日を送れなかった気がする。
騒いでいる親友を見つめ、大地はふとそんな事を思い出す。
「大地!」
自分を呼ぶ空の声でハッと我に返る大地。
「なに一人で気取ってんだよ? テメェも騒げ!」
空のその一言に大きく目を開いて唖然とするが、すぐに口元を緩め、まあ良いかと先程考えていた事を忘れて大地はこの状況を楽しむ事にした。
あれから暫く経って、窓の外の景色はもう暗くなっていた。
「そろそろ時間だな」と進が言うと、他の人間も「そうだな」と言って帰り支度を始めた。
何事も無く楽しい時間を過ごせた一日だった、と大地は満足げに笑みを浮かべた。
皆で使った食器などを直していく。 飲み干せなかったペットボトルのジュースは大地の家に寄付する形で置いて行く事に。
空と大地以外の人間が次々と母に挨拶して家を出る。
「皆、今日はありがとう」
大地は玄関の近くでそう言った。
「またやろうな!」と進は笑いながら親指をビッと立てて言った。
「また、皆で集まろう」と九十九は口元を緩めてそう言った。
「来年も良ければ是非、呼んでくれ」と菅原は照れているのか、頬を少し朱に染めながらそう言った。
「僕も是非呼んでくれ!」とジャスティスは笑みを浮かべて言った。
「じゃあ、また」とそれぞれ皆は自分の帰るべき場所に歩を進めるのであった。
残った空と大地は、部屋に戻り、近くにあるベランダに出て肩を並べた。
「終わったな」とどこか寂しそうに言う空に「ああ」と大地も淋しそうに答える。
「空」
「何だ?」
「ありがとう……」と言う大地の言葉に空は「どうしたんだよ、改まって」と少し焦る。
「空がいなければ、こんな楽しい一日を過ごせなかったと思う。 本当に……、本……、当に……」
空は驚愕した。
親友が頬から涙を流していたからだ。
大地は本当に嬉しかったのだ。 この親友がいなければ、自分は今頃もっとつまらない日々を送っていたのだから。
その気持ちを察した空は、ポケットにあるハンカチを大地に差し出し、
「来年もまたやろうな?」
と優しく微笑んだ。
対して大地はそれに首を小さく縦に振るのだった。




