冬休みの計画
「今日、皆に集まって貰ったのは他でもない」
空はそう口にして、目前にいる五人の仲間に視線を送る。 その中の一人、彼の親友、西野大地が口を開いた。
「だから何で俺の部屋なんだ!?」
その言葉と同時に、辺りは静寂に包まれる。
「冬休みの計画なんだが……」と話を進めようとする彼に「シカト決めてんじゃねぇよ!」と大地は床を勢いよく叩いた。
「何だよ? 別に良いだろ? いつもの事だし」
空は片耳に小指を突っ込んで面倒臭そうな表情を浮かべた。
「いや、よくねぇよ! だいたい何でいつも俺の家なんだ!?」
そして! と大地は他に来ている四人の内の一人を指差して言葉を続ける。
「なんか一人増えてるし!」
彼が指さした人物、私立橘高等学校が生徒会長、神藤進。
「何だ? 俺はいちゃいかんのか?」
進は「何か文句でも?」と言う様な表情を浮かべてそう言った。
対して大地は「いや、別にいても良いですけど……」とどこか不満げな表情を浮かべながら今日、自分の部屋に訪れた人間を見た。
元凶を精製する親友、東野院空。 常日ごろに痛いオーラを発している菅原葵。 最弱の正義の味方、ジャスティス・正義。 掴み所の無い不思議な一つ上の先輩、九十九悟。 そして、親友と同じ匂いがする変態生徒会長、神藤進。
あ、これ夏休みの二の舞になりそうな気がする……、と大地は感じた。
そんな彼の心情など毛ほどにも知らない空は「冬休み、スキーや温泉に行くぞ」と思わず聞き捨てならない発言をした。
「スキー? まさか、県外に出るのかい?」と言うジャスティスの問いに「いや、流石に県外に出てスキーをするのは無理があるだろうから県内にある草スキー場でする事になるな」と空が答えた。
「県内で草スキーするのは構わないがそれなりにお金もかかるのではないのか?」と言う菅原の最もな疑問に空は「そこの所は問題ない。 俺と進先輩に任せな」と不敵な笑みを浮かべた。
いや、お前と生徒会長に任せると問題しか起きない気がするが、と大地は天地が引っ繰り返ってでも言えなかった。
「なら、問題ないな」と菅原は安堵の笑みを浮かべる。
「なら、問題ないね」とジャスティスは安心した様に笑った。
「なら、大丈夫だな」と九十九は少し口元を横に広げた。
あれ? もしかして疑っているの俺だけ……?
三人の意外な答えに大地は驚きを隠せないでいた。
それから大地たちはお互いの予定を告げて、その日は解散となった。
どうか波乱な冬休みにならないで欲しいと大地は切に神にお祈りするのだった。




