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ツッコム俺の身にもなってくれ!!  作者: 楽椎名
ピチピチの一年生編
2/80

入学式

 入学式が始まってから三〇分が過ぎた。

 現在、本校の校長先生が壇上で新入生歓迎の話をしている。

 他の新入生たちは退屈なのか、明後日の方向を見て聞き流したり、中には眠っている者もいた。

 勿論、大地の隣に座っている空は堂々といびきをかきながら眠っている。

 本当、馬鹿なヤツである。

「以上、話を終了します」

 話が終わり、校長は一礼して壇上から降りた。

『生徒会長の言葉』

 すると、ガラリと空気が変わった。

 後方に座っている在校生たちは「待ってました」と言わんばかりの雰囲気を醸し出している。

 隣で眠っていた空もまるで計算でもしてたのか、パチリと瞼を開き、柄にもなく姿勢を正した。

 あの自由極まりない空が姿勢を正すくらいだ。 きっとこの学校の生徒会長は凄い人なのかもしれない。

 そう思うと大地も自然と姿勢を正した。

 ペタッ……、ペタッ……。

 何やら変な足音が後方から聞こえてくる。

 心なしか、笑いを堪えている声が耳に入る。

 ペタッ……、ペタッ……。

 その足音は次第に近づいてくる。

 それにより更に笑いを堪える声が大きくなる。

 何だ……? 何が起こっているんだ!?

 気になって仕方がなくなった大地はその足音の方へと振り向いた。

 そこには百戦錬磨の戦士の様なオーラを発した裸エプロン姿の生徒会長がいた。

 大地は吹き出した。

 色々と思う事があり過ぎて、吹き出した。

 全校生徒の視線を気にする事無く生徒会長は壇上に上がり、一礼してマイクに顔を近づける。

「新入生の諸君。 入学おめでとう。 これから始まる新しい学校生活を思う存分満喫してくれ」

 以上だ、と生徒会長は一礼して壇上から降りた。

 ワッ! と盛大な拍手と歓声が沸き上がる。

 大丈夫か? この学校……。

 この学校に入学したことに些か間違いだったかもしれないと思う大地であった。



 教室に移動し、生徒たちは中学からの付き合いの友達と談笑したりする者もいれば、初対面の人と交流を深める者もいた。

「さっきの生徒会長。 持っているな」

 隣の席で座っている空が入学式での生徒会長について口を開いてきた。

 何を持っていると言うのだ? と大地は小さく溜息を零した。

「確かに、さっきの生徒会長は持っているな」

 そう声を掛けて来るは大地の右隣の席に座っている女の子だった。

 なかなかグラマーな身体つきをしていて、黒く長い髪を一つ結びにしており、その凛々しくも美しい顔立ちはどこか見た者を魅了する力を感じた。

「そうか。 お前も感じたか。 奴の波動を」

「いや、波動って何だ?」と問う大地。

「ああ。 あの波動……、ただならぬモノを感じた」と大地を無視して真剣に答える女の子。

「お前も律儀に返してんじゃねぇよ! ってか無視してんじゃねぇ!」

「お前には感じなかったのか……!? ヤツのただならぬ笑いの波動を!?」と大地に信じられない者を見る様な視線を送る空。

「お前には感じなかったのか……!? ヤツのただならぬ笑いの波動を!?」と驚愕する女の子。

「感じねぇよ! 何お前ら!? 何その信じられない者を見るような眼は!? 馬鹿にしているのか!? ってか何でそんなに息ピッタリなんだよ!?」

 大地の問いに、二人はお互いの顔を合わせ、不適に笑った。

「それは俺たちがバカだからだ!」と空は恥ずかしげもなく言い切った。

「それは私たちがバカだからだ!」と女の子は自慢の胸を張って言い切った。

「良い意味でと言いたいのか!? でも、お前らがバカそうなのは理解した!」

 二人のバカ(良い意味で)に大地が翻弄されている途中、教室の扉が開かれ中に怠そうな表情を浮かべた教師が入ってきた。

 それにより、生徒は皆、自分の席に戻る。

「今からSHR(ショートホームルーム)を始める。 まずは俺の自己紹介からだ。 今日からお前たちを扱き使うもとい指導する清水(しみず)(よし)(たか)だ」

「今、扱き使うって言いました!?」と大地が横槍入れると「うるせぇ、単位落とすぞ?」と脅した。

「酷い!? 職権濫用だ!」

 喚く大地に「あー、解った解った。 面倒臭いから次行くぞ」と面倒臭そうに話を進める。

「今日は特に伝える事はない。 明日から授業が始まるから教材を忘れない様に。 以上だ」

 解散、と手を叩くと生徒たちは新しく出来た友達と今日は何をするかと相談しながら次々と教室から出て行った。

 大地たち三人も通学鞄を手に取ると、そうだと女の子が思い出したかのように口を開いた。

「私の名は南波(なんば)(げっ)()。 宜しくな」

「俺は空。 東野院空だ。 そしてこいつは相棒の西野大地」

 俺はいつからお前の相棒になったんだ? そして、何故お前がさも当然の様に俺の名前を教えているんだ!? と大地はツッコムが無視された。

「宜しくな。 空、西野」

「ちょっと待て!」

 納得がいかないと言った大地にの叫びに首を傾げる空と月華。

「どうした?」と聴くと、

「どうした? じゃねぇよ! 何故空だけ名前呼びなんだよ!?」

「だって呼びにくくないか? 『東野院』って。 長いし」

「いや、そうだけど! そうだけどさ!」

 そんな大地に勝ち誇った顔を向ける空。

「何その勝ち誇った顔!? 煽ってるの!? 煽っていくスタイルなの!?」

「あー、解った解った。 宜しくな、大地」と月華は適当に言った。

「何この敗北感!?」

 お前らいい加減にしろ! と大地の声が街全体に響いたとか響かなかったとか。


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