さあ、闇のゲームを始めよう……!
「今からゲーセン行くぞ!」
ジャスティスを連れて大地の部屋へとやってきた空がそんな事を言ってきた。
ゲーセン、ゲームセンターの略であり、大地にとっては余り良い思い出の無い響きであった。
「ゲーセンに行くのは構わないが、どう考えても正義はそう言った場所に縁が無いだろ?」
そんな大地の言葉にジャスティスは「少し位ならその様な遊戯を心得ている」と心配するなと言わんばかりに眼鏡を上げながら親指を立てた。
「なら良いが……」と言う大地の言葉と同時に「よしっ! それじゃ、レッツラゴー!」と空が先頭を切って家を出た。
また、酷い目に遭わなければいいが……。 と切に願いながら大地はジャスティスと肩を並べて空の跡をついて行くのであった。
三十分の時間をかけてゲーセンの前へと辿り着いた空一行。
久々だな、と次々に苦い思い出が蘇る大地。
あまりこの様な場所には来慣れていないのか、どこか緊張した面持ちをするジャスティス。
そんな彼らの様子など毛ほどにも気にすることもなく空は「行くぞ!」とまるでこれから敵に連れ去られた仲間を奪還しに行くような勇者の雰囲気を纏って中へと足を運んだ。
大地とジャスティスも黙ってそれについて行く。
「よしっ! このゲームやろうぜ?」
ゲーセンに入って空が最初に手にしたのは戦争モノのシューティングゲームだった。
大地とジャスティスは特に断る理由も無かったのでそれをすることにした。
「どうだ? ゲームをするごとに一つ賭けでもしないか?」
空のその言葉に「お金なら賭けないよ?」とジャスティスが釘を刺した。
対して空は「安心しろ。 負けなければ良い話だ」と全く答えになってない返答をした。
「なるほど!」と感心するジャスティスに「なるほど! じゃねぇよ!」とツッコミを入れる大地。
「ルールは簡単。 このゲームでスコアが一番低い奴が負けだ。 敗者は勝者二人に○―ゲン・○ッツを奢る」
オーケィ? と空が聴くと「オッケィッ!」とジャスティスが勢いよく親指を立て、大地もそのルールを承諾し、ゲームが始まった。
空が一番に始めた。
一回もミスせずにゲームをクリアしたと言う雲の上の実力を見せつけたので、大地の隣で見ていたジャスティスは勿論、唖然としている。
空は涼しい顔をしながらそっと銃の形をしたコントロールを元に戻した。
次に大地がそのゲームを始めた。
流石に空の様にノーミスでクリアは出来なかったがそれなりにスコアは高かった。
これだとゲームをあまりやらないジャスティスが可哀想ではと思うが『奢る』と言う形でお金がかかっている。 大地も無駄な出費は避けたい為、鬼となった。
しかし、ジャスティスは特に焦る様子も無く静かにホルダーからコントロールを抜き取って構えた。
ゲーム始まったと同時に敵が一斉に出てくる。 それをジャスティスは至って冷静に、且つ一兵士の様に次々と的を撃ち落としていった。
その巧みな技に、大地は思わず息を呑む。 そして、ゲームをクリアしたジャスティスのスコアは空を下回るも大地のスコアを一回り抜いていた。
「何でだよ!?」と大地は膝から崩れ落ちる。
そんな彼に空は悪人さながらの笑みでただ一言、「○―ゲン・ダッ○な」と大地の肩を叩いた。
ゲームはあまりやらないのではないのか? と言う大地の問いにジャスティスは「正義の味方と名乗っている以上、敵に敗れる訳にはいかないからね」と全く答えになっていない返答をされた。
「意味解らねぇよ!」と叫びながらも敗者となった大地は勝者である空とジャスティスに律儀に高級アイスを奢るのであった。
それから色んなゲームを試したが大地は全て二人に惨敗。 そして負けるごとに食べ物を奢ると言う繰り返しにより、見事に財布の中が寒くなり、そこでゲームが終了したのでこれにより彼の記憶にまた新たに『苦い思い出』が追加されたとか。




