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まだ彼は平穏を謳歌している
「暇だな」
「なに贅沢言ってんの」
「痛い、地味に痛い」
自宅でゴロゴロしていた俺は襲撃を受けた。引っ張られた頬が痛い。
家賃1万2千円のワンルームアパート。俺の住処だ。
親元から離れてまだ4ヶ月、ようやく一人暮らしに慣れてきたと言ったところか。
「休みの日ぐらいゆっくりさせろよな」
その言葉に俺の学友、原田優奈は口を尖らせた。
「あんたはいつも休みの日でしょ」
「失礼だぞ。学校には所属してる」
「一応ね!」
わざわざ強調してくる。本当に失礼なやつだな。俺じゃなかったら怒ってるんじゃないか。いや、これくらいじゃ怒んないか。
「てか、いつ部屋に入った?不法侵入者さん?」
優奈が眉を吊り上げる。
「インターホンは押した。返事がなくて鍵あいてたから倒れてるのかと。
心配して損したわ」
「はあ、お疲れ」
俺が疲れたように言うと彼女は睨みつけてきた。
「もう、早く買い出しに行くわよ」
「何の買い出しだっけ」
無言の彼女が怖い。
「嘘だ。ごめん。学祭だろ」
「わかってるなら早くして」
「まあ、そんなに焦るな。彼氏できなくなるぞ」
殴られた。