水滴とノイズ
どうして、こうなった?
た た たた
た たた たん
水滴が、落ちる音。
た た た
たた たん た
水道の蛇口、ちゃんと閉まってなかったか?
たん たん たん
ぽた ぴちょ ぽた
徐々に、大きくなる水音。
ぽた ぴちょ ぴちょ
雫が落ちて、水が溜まり、溜まった水にまた雫が落ちる。
うるせえなあ。
せっかく気持ちよく寝てたのに。
起こされちまったよ。
『※※※※!?』
ふいに、ノイズがはしる。
水音よりも、不快なノイズ。
『※※※※※※※!?』
ノイズとともに、体が揺れる。
眠いのに、無理やり起こそうとしているみたいに。
ぴちょん ぴちょん ぱたた
気に障る水音。
『※※※※※※!』
気に障るノイズ。
うるせえなあ。
寝かせてくれよ。
せっかく…………。
「死なないでよバカっ!!」
せっかく、人の役に立って、善行を成して、人生に幕を引けるところだったのに。
「なんで……。私をかばって……」
知るかよバーカ。
こっちが聞きてえよ。
「……バカぁ……。死なないでよ……」
死なせてくれよ。
恥ばかりのクソみたいな人生だったんだ。
死にたかったんだよ。
「おいてかないで……。一人にしないでよぉ……」
泣くなよ。
俺みたいなクソのことは忘れちまえ。
「やだ……。忘れるわけ……」
「……元気で……幸せに……」
「ダメっ! ダメぇっ!!」
娘「こうして生まれたのが私ってわけ」
彼「……今からは想像できない姿だけど、暴漢からかばって刺されてよく生きてたね?」
娘「愛の力で奇跡が起きたんだよ?」
彼「奇跡なんて、そんな都合よく起こるもんじゃないから、奇跡っていうんだよ」
娘「じゃあ、証明してあげるね?」
彼「……なんて?」
娘「愛の力で、奇跡を起こしてあげる!」
彼「……俺、余命半年。もう奇跡なんて起きないよ……」
娘「起きるもん! 起こしてみせるんだから!!」
この二人、のちの夫婦である。
……なお、曽孫を抱き上げてからの大往生だったと記す。




