表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競馬2〜『変異する血統(ブラッド・リンク)』〜  作者: 水前寺鯉太郎
第1幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/27

第25話

「有馬記念:暴君と天才の共鳴」


中山競馬場、芝二千五百メートル。

 年の瀬の冷気が、パドックに集まった怪物たちの排熱と混ざり合い、白く濃い霧を生んでいた。

 

 ファンの視線は、二頭の「王」に二分されている。

 菊花賞を狂気で制した黄金の暴君、亜紀子の『ゴールデンルナティック』。

 そして、現代の「最適解」を体現する天城優作の『チャールストン』。

 無駄を削ぎ落としたカーボンフレームが、冬の月光のように鈍く光っていた。

「池谷さん。あなたの競馬は熱すぎる。……これからの時代に必要なのは、世界を冷却するような、完璧な『理』だよ」

 天城の声は、ノイズ一つないクリアな通信。

「理? そんなもん、アタシの火花で溶かしてやるよ、天才くん!」

 亜紀子のルナティックが、威嚇するように黄金の火花を撒き散らす。

 ゲートオープン。

 先頭を固めるのは、財前のバハムートとジャミルのエクリプス。ジャパンカップの屈辱を晴らすべく、世紀末の覇王軍団が再び「鉄の壁」を築く。

 岡部孝雄のラストエンペラーは、軽やかなテイオーステップを刻み、中団で「奇跡」のタイミングを伺う。

 海老原のダークランサーは、中山のトリッキーなコーナーを影のようにすり抜け、虎視眈々と「深淵」を広げていた。

 そして、麗のレイスター。

 ジャパンカップの激闘で歪んだフレームを強引に矯正し、今、再び戦場に立っている。

「……見てなさい。あんたたちがどんな『理』を並べようと、全部ぶっ壊してやるから」

 二周目の坂を越え、レースが動く。

 天城のチャールストンが、外から一気に加速した。

 それは加速というより、「空間の移動」。イクイノックスが見せた、他馬が止まって見えるほどの絶対的なスピードの差。

 

「――演算終了。ここが、僕の独走域だ」

 チャールストンが先頭に並びかける、その刹那。

 

 ガガガガガッ!!

 

 大外から、物理法則を無視した「黄金の咆哮」が襲いかかった。

 亜紀子のルナティックだ。オルフェーヴルの狂気を宿したその機体は、コースを斜めに横切るほどの荒々しさで、天城の「理」に体当たりするように迫る。

 

「あはははは! 天才くん、地獄へ付き合いなよッ!!」

 暴君と、天才。

 中山の短い直線で、黄金の火花と、青白い静寂の閃光が激突した。

 

 二頭が競り合い、わずかにスピードを殺し合ったその瞬間――。

 内から、泥にまみれた「漆黒の弾丸」が、覇王の壁を、帝王の奇跡を、老将の影を、まとめて突き破った。

「――そこを退きなさいッ!!」

 麗のレイスター。

 芝の適性? 距離の限界? そんなものは、すでに彼女の魂が焼き切っている。

 残り百メートル。

 黄金のゴールデンルナティック、青銀のチャールストン、漆黒のレイスター。

 三つの時代、三つの信念が、中山の急坂を「絶叫」と共に駆け上がる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ