表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競馬2〜『変異する血統(ブラッド・リンク)』〜  作者: 水前寺鯉太郎
第1幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/26

第19話

「北の咆哮、西の女帝」


盛夏の札幌競馬場。芝二千メートル、札幌記念(GII)。

 GIIとはいえ、そこには宝塚記念を終えた一線級が顔を揃えていた。

 麗のレイスターと、亜紀子のルナティック。二頭は秋の「天皇賞・秋」への叩き台として、北の大地を踏み締めていた。

「麗、この洋芝……重いよ。砂とは違うけど、脚を絡め取られるような粘りがある」

 亜紀子の通信に、麗は深く頷いた。

「いいわ。この『重さ』、海老原さんが言っていた『力の逃がし方』を試すには絶好の舞台よ」

 レースは、ルナティックが爆発的な逃げを見せ、それをレイスターが「平熱」で追走するという、これまでとは違うリズムで展開された。

 直線。麗はレイスターの出力を強引に上げるのではなく、洋芝の抵抗を逆手に取り、最小限の姿勢制御で前進する。

 結果は、二頭の叩き合いの末、ハナ差でレイスターが先着。

 重賞勝利。だが、麗に笑顔はなかった。

「……まだ、これじゃミカの背中には届かない」

 同日、新潟競馬場。芝千六百メートル、新潟2歳ステークス(GIII)。

 そこには、村上家の長男、義清と彼の愛機『ノーブル・レジーナ』の姿があった。

「……姉貴は、いつも泥にまみれて戦っている。俺はその足元を汚さないよう、誰よりも気高く走ってみせる」

 義清は、若くして老成した落ち着きを持っていた。

 彼の機体、ノーブル・レジーナ。レイスターのような剥き出しの配線も、ルナティックのような過剰な火花もない。ただ、美しく磨き上げられたパールホワイトの装甲が、新潟の直線で真昼の太陽を弾き返していた。

 ゲートオープン。

 義清の走りは、まさに「教育」だった。

 先行集団の真後ろ、最も風圧を受けず、かついつでも抜け出せる絶好のポジションを、彼は一ミリの狂いもなく維持し続ける。

「村上家の弟か……。姉貴ほどじゃないが、妙に鼻につく優等生だな」

 周囲の若手ジョッキーたちが仕掛ける。だが、義清は動かない。

 彼の視界には、ゴールまでの最短距離と、レジーナの心拍数パルスが完璧に同期して表示されていた。

 第四コーナー。

 進路が塞がった、その瞬間。

「……どいていただけますか。そこは、僕の道です」

 義清が軽くレバーを引くと、ノーブル・レジーナは瞬時に「差し」の体勢へ移行した。

 一歩、一歩が王者の歩み。

 他馬を圧倒する「威圧感オーラ」だけで進路をこじ開け、義清は一度もムチを入れることなく、独走状態でゴール板を駆け抜けた。

 勝利の瞬間も、義清はガッツポーズ一つしなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ