16話 占い
俺が案内しようとしていたお店が休業日だったのは痛恨のミスだったけど、内海さんは気にしていないようで、しかもなぜか嬉しそうにしていた。
入ったファミレスでも、目の前で楽しそうに話してくれ、美味しそうにパフェを頬張る内海さんが可愛くて、見ていてほっこりしてしまう。
「うーん、美味しいー」
向かいに座っている内海さんが可愛らしい唇を開けて、次々とパフェを口に放り込んでいく。
「先輩も一口食べます?」
「ううん、大丈夫だよ」
今日はなにも食べて来なかったみたいで、相当お腹が減っていたのか、パフェの前はハンバーグを完食していた。
「えー、食べてくださいよ。あたしばっかり食べてるの恥ずかしいです」
内海さんはパフェをスプーンで掬い、俺の口元に運んできた。
「ほら、あーん」
あんまりこういうのは恥ずかしいけど、差し出してくれたスプーンをぱくっと口に咥える。
甘さと冷たさが口一杯に広がった気がする。なんせ華以外の女性とこういうことは初めてしたので、緊張で味なんてわかなかった。
「美味しいですか?」
「うん、美味しいよ。ありがとう」
お礼を言うと、内海さんの桜色に染まった頬がにっこりと緩んだ。
「そういえば、このファミレスには星座占いとか置いてないんだね」
テーブルの上を見渡しても、どこにもそれらしいものが置いていない。
「星座占い? そんなのあるんですか?」
スプーンを咥えながら、内海さんが小首を傾げた。
「うん、地元のファミレスに置いてあったりするんだけどね」
「それって昭和の話じゃないんですか? あたし見たことないですよ」
え、そうなんだ。俺がよく行ってた地元のファミレスにはあるから、どこにもでもあるのかと思ってた。
「地元ってことは、先輩は大学でこっちに来た感じですか?」
「うん、そうだよ。今は一人暮らししてるんだ」
「今度先輩の家にお邪魔しちゃっかなー」
内海さんが口の端をつり上げて、小悪魔的な笑みを浮かべる。
「あはは、機会があればね」
付き合っていない男女が密室に二人っきりは危ないので、そんな機会はそうそうありそうもないけど。
「なんか占いの話を聞くと、無性に気になっちゃいました。先輩、相性占いしましょうよ」
内海さんはスマホを取り出し、なにかを打ち込み始める。
「先輩って誕生日いつなんですか?」
「四月だよ」
そう教えてあげると、内海さんは背もたれに身体を倒し驚いた。
「ええ、今月なんですか!? もう過ぎちゃいました?」
「まだ、もう少し先かな」
「よかったー。先輩の誕生日が来たら祝っちゃいますね。なにか欲しい物ありますか?」
「お祝いなんて申し訳ないよ。その気持ちだけで十分嬉しいから」
ただ年を一つ重ねるだけ。俺なんかのために、祝ってもらうなんて申し訳ない。
実家にいるときなんて、親父は俺の誕生日を覚えていないのか、祝ってもらった記憶があんまりない。
華と付き合いだして祝ってもらったことが、初めての誕生日パーティーかもしれない。
あまり馴染みもないことなので断ろうとする俺の目前に、またもやパフェが乗ったスプーンを突き出される。
「駄目ですよ。先輩が生まれた大事な日なんですから、ちゃんとお祝いしないと」
「あ、はい」
そのスプーンを咥えると、内海さんは満足気に頷いた。
俺の誕生日を相性占いに入力しているのか、内海さんはスマホを触り始め、その内容に歓喜の声を上げる。
「あ、見てください! あたし七月が誕生日なんですけど、相性最高らしいですよ!」
「内海さんは七月が誕生日なんだ」
「唯夏って名前ですからね。夏に生まれたからって、それを名前に付けるなんて安直だと思いません?」
「あはは、俺は唯夏って名前、可愛いと思うし好きだよ」
素直な感想を言っただけのつもりだったのに、内海さんは耳まで真っ赤にして照れてしまった。
そんな反応されると、こっちまで恥ずかしくなってしまう。
気まずい空気を破るために、俺は別の人の誕生日を言ってみた。
「あのさ、五月と四月の相性も占ってみてくれないかな?」
「……五月ですか?」
さきほどの真っ赤に照れていた表情はどこへやら、内海さんは怪訝そうに眉をひそめる。
「うん、五月と四月の相性も気になって」
……五月は、華の誕生日だ。
「いいですけど……」
少し不思議そうにしながらも、内海さんはスマホで相性占いをしてくれた。
「……あー、最悪ですね」
「え」
内海さんは抑揚のない声で占いの結果を告げてきた。
「これはもう今世紀始まって以来の最悪の相性ですね。この二人が付き合うと、天変地異が起こるそうです」
「ええ!?」
「あまりにも最悪なので、世界中から恨まれるそうですよ」
「えええええっ!?」
そんなはっきり書く占いってあるの!?
普通占いって、もっとボカした言いかたしたり、誰にでも当てはまるようなことを言ってお茶を濁したりするもんじゃないの!?
いや、でもまだ諦めるな。
朝の占いとかだと、運勢が最悪だったりしても、ラッキーアイテムとか紹介してくれたりするもんだ。
「な、なにか……運気を変えるラッキーアイテムとか、紹介してない?」
恐る恐るそう尋ねてみると、内海さんは神妙な面持ちで首を横に振った。
「残念ながら。この二人は前世から相性が悪く、もうどうにもならないそうです」
「ガーンッ!!」




