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エルカシア創世記

作者: 矢島 香羽
掲載日:2026/02/06

 むかしむかし、ある王国には二人の姉弟天使がいました。

 姉の名前はエリシア、弟の名前をルカといい、王国では知らない者がいないほどのとても優秀な魔法の使い手でした。


 ある日、国の王様が二人の元を訪ね「お前たち姉弟の魔法の腕を見込んで、頼みたいことがある」と言い、一つの小さな宝石を姉弟天使にみせました。

 それは子供の手の平よりも小さく、米粒ほどの大きさのものでしたが、キラキラと輝いていてとてもキレイな宝石でした。

「この宝石を、お前たちの魔法で大きくしてほしい」

 王様のお願いをエリシアは快く引き受け、宝石に魔法をかけました。

 すると小さかった宝石はどんどん大きくなっていき、大人の手の平よりも、エリシアたちが住んでいる家よりも大きくなりました。

 しかし、さっきまでキラキラと輝いていた宝石は黒く穢れてしまっています。

「ごめんなさい王様」

 エリシアが落ち込んでいると、ルカが「大丈夫だよ」と優しく声を掛けました。

 ルカが黒くなってしまった宝石に魔法をかけました。

 すると宝石は輝きを取り戻し、それどころか前より強い輝きを放つようになりました。

「ありがとう二人とも。お礼に、この宝石をお前たちにあげよう。思っていたよりずっと大きくなってしまったからね」

 宝石はエリシアとルカの魔力を吸って、もはや石と呼ぶこともできないほどに大きくなってしまっていました。

 二人は、王様からもらった宝石に「エルカシア」という名前を付けました。

 



 ある日、エリシアが言いました。

「エルカシアの中に私たちの世界を作りましょう!」

「僕たちの世界?」

「いろんなものをエルカシアの中にたくさん作るの。私たちが暮らしているこの世界のように!」

 とても楽しそうなエリシアの言葉にルカが反対する理由はありません。

 そうしてエリシアとルカ、二人の姉弟天使による世界創造が始まったのです。

 

 姉弟はまず、エルカシアの中に大地を創ることにしました。

 大地がなければ生き物が歩くことも、建物を建てることもできません。

 そのためには地の精霊が作るという「地の石」が必要になります。

 二人は、とある渓谷に住むという地の精霊の元を訪ねました。

 渓谷に着くとそこには岩のように固く大きな体をした地の精霊がいて、何やら困ったような表情を浮かべていました。

「どうしたの?」とルカが尋ねると、地の精霊は言いました。

「オレはこの渓谷に何百年と住んでいるんだが、渓谷のあちこちに大きなヒビが入ってしまっていてな。今にも壊れそうなんだ。早く引っ越さないといけないんだが、なかなか良い場所がなくてな」

 このままでは地の精霊の住む場所がなくなってしまいます。

「それは可哀想だ」と思ったルカは地の精霊に言いました。

「じゃあ、僕たちが作る世界に住めば良いよ」

「良いのか?」

「うん! その代わり、地の石をちょうだい?」

 笑顔を浮かべるルカに、地の精霊は喜んで地の石をくれました。

 そしてエルカシアに大地ができました。

 しかしそこにはただ広々と地が続くだけで、草木一本ありません。

 水がなければ植物は育ちません。

 姉弟は水の精霊が作るという「水の石」を貰いに行くことにしました。

 水の精霊はとあるキレイな湖に住んでいました。

 涙を湖に落とし、しくしくと泣いています。

「どうして泣いているの?」

 エリシアが尋ねました。

「湖のお魚がみんな死んでしまって、一人ぼっちになってしまったの。とても寂しいわ」

 どれほどの時間を泣いていたのでしょう。

 水の精霊が流した涙で、湖の水が今にも溢れ出しそうです。

「それなら、私たちの世界で暮らせば良いわ。貴女が寂しくないように、友達もたくさん作りましょう!」

 エリシアの言葉に水の精霊は涙をピタリと止め、「良いの?」と聞き返しました。

「その代わり、水の石をちょうだい?」

 水の精霊は嬉しそうに水の石をくれました。

 エルカシアの大地に雨が降り注ぐようになりました。

 雨水はやがて溜まり、海や川を作っていくでしょう。

 姉弟は水の精霊と約束したとおり、たくさんの友達を作ることにしました。

 しかしエルカシアの世界は寒すぎるようで、生まれた生き物たちはみんな凍えています。

 このままでは生き物たちは長く生きることができません。

 姉弟天使はエルカシアを暖かくするために、火の精霊が作る「火の石」を貰いに行くことにしました。

 火の精霊は、とある火山に住んでいます。

「世界を暖かく? 火の石をやるのは良いが、オレの火の石では少し熱すぎると思うぞ?  そうだな、風の精霊のところへ行って『風の石』を貰って来なさい。風の石の力なら、火の石の力を調整することができるだろう」

 火の精霊の助言を受けて、姉弟は風の精霊が住んでいるという大きな木の元へやって来ました。

「風の石を取りに来たのでしょう?」

 風の精霊は、すっと風の石を差し出しました。

「すごい! どうしてわかるの?」

 ルカがキラキラと目を輝かせます。

「私は占いが得意なの。でも、風の石をあげる代わりにお願いがあるの」

「お願い?」

「私を、貴方たちの作る世界に住まわせてくれないかしら。この大きな木はもう少しで枯れてしまうの。だから、新しく住むところを探そうと思っていたところだったのよ」

「もちろん良いわ。風の石をくれてありがとう!」

 姉弟天使は風の石を受け取り、火の精霊の元へ戻りました。

「よかった。風の石を貰えたみたいだな。これで火の石の熱を調節できるだろう」

「火の精霊さん、ありがとう!」

 ルカはお礼を言い、火の石を受け取りました。

「だが、少し心配だな。そうだ! オレをお前たちの世界で一緒に住まわせてくれ。そうすれば、もしものことが起きたとしてもすぐに助けることができるだろう」

 火の石と風の石のおかげで、エルカシアの世界に暖かな空気が流れだします。

 時に冷たく、時に暖かい風が流れ、生き物が暮らしやすくなりました。


 とても小さな宝石から生まれた大きな世界「エルカシア」。

 空っぽだった世界には地の石で作った大地が広々と広がり、水の石が降らせた雨は大地に潤いを与え、寒さで凍えていた生き物たちは火の石の熱と風の石がおこす風によって快適な空気が流れだしました。。

 姉弟は石をくれたお礼として、それぞれ四人の精霊たちの住む場所を作りました。

 南に渓谷を作り、地の精霊の家を。

 固く丈夫に作った渓谷は、何千年経っても壊れることはないでしょう。

 北にできた湖には水の精霊の家を作りました。

 寂しくならないようにたくさんの友達も一緒です。

 西の森には風の精霊の家を。

 森に魔法をかけて木々は枯れにくくなり、もう住処を探す必要はなくなるでしょう。

 東の火山には火の精霊の家を作りました。

 高い火山の上なら、もし何かが起こったとしてもすぐに気づくことができます。

 



 あるところに、エリシアという天使の少女に恋をする一人の男がいました。

 男は、エリシアが弟のルカと一緒に世界を作ったという話を耳にしました。

 このままでは、エリシアが違う世界に行ってしまう。

 もしかしたら、もう会えなくなるかもしれない。

 そう思った男は、友達の悪魔に相談しました。

「バカだなぁ。そんなの、その世界を壊せば良いじゃないか。そうすれば、エリシアが他の世界に行くこともなくなるだろ?」

 悪魔は男に、呪いの魔法がかかった石を手渡しました。

「その石をアイツらの世界に投げ込むんだ。そうすれば、世界は少しずつ壊れていく」

 男は悪魔に言われた通りに呪いの石をエルカシアに投げ込みました。

 石を投げ込む直前「言い忘れていた」と悪魔が言いました。

「世界が完全に壊れ切った時、お前の大切なものが消えるよ」

 絶望の言葉とともに、呪いの石はエルカシアに落とされました。


 エルカシアの中のとある森の中で、エリシアとルカは「次は何を作ろうか」と楽しげに話し合っていました。

 そんなとき、エリシアが妖しく光るキレイな石を拾いました。

「何かしらこれ。ルカ、知ってる?」

「ううん。こんな石、作ってないよ?」

 二人が話していると、どこからか四精霊たちが慌てた様子でやって来ました。

「それを早く捨てるんだ!」

 火の精霊が叫び声が聞こえた瞬間のことでした。

 エリシアの持つ石から強い光が放たれ、エリシアの胸に打ち込まれます。

 エリシアは胸をおさえ、苦しそうにうずくまります。

「エリシア!」

 ルカが慌ててエリシアに駆け寄ると、エリシアが更に苦しそうな呻き声をあげました。

「エリシアが拾ったのは、呪いの石だ」

 火の精霊の話では、呪いの石は拾った者の心を利用して世界を壊すことができるそうです。

 生き物が少しは必ず持っているという悪い心。それを支配して世界を壊すものでした。

「このままじゃ、エルカシアどころかエリシアも壊れちゃうよ!」

 エルカシアの世界よりもエリシアを助けたいと願うルカに、精霊たちは一つの方法を教えてくれました。

 それは、天使が作ることができるという光の石と闇の石、それを作ってエリシアを封印するというものでした。

 そうすればエリシアは壊れることもなく、呪いの石の力も抑えることができる。

 しかしエリシアもルカもエルカシアのために多くの魔力を使ってしまっていて、石を作るほどの力は残っていません。

 そこでルカは、王様に力を貸してもらおうと考えました。

「お願いします王様、助けて下さい!」

「良いよ。お前たちは良い子だからね」

 王様が快く引き受けてくれたことにルカはホッとしました。

「ありがとう王様!」

 ルカは「これでエリシアを助けられる」と大喜び。

 二つの石を作り終えたルカと王様がエルカシアに戻ると、エリシアがさっきよりも苦しそうにしていました。

「やはり、とても強い呪いのようだね。ルカ、早くエリシアを封印してあげなさい」

 ルカは四精霊たちの力も借りて、エリシアを闇の石に封印しました。

 しかしエリシアを封印した闇の石からは、呪いの石に穢されたエリシアの魔力が漏れ出しています。

 そして、苦しくて悲しい声も。

「さて、次はお前だよルカ」

 王様が光の石をルカに差し出しました。

「この光の石にお前自身を封印するんだ。そうすれば、エリシアの魔力を抑えることができる」

 ルカは王様の言葉に驚きましたが、封印されてもなお苦しんでいるエリシアの声や漏れ出す魔力を見て「わかりました」と答えました。

 ルカは闇の石に触れ「また会おうね」と言葉を残し、光の石に自身を封印しました。

 果たしてこの哀れな二人の天使の封印が解かれ、再会する時はやってくるのでしょうか。

 それは未だ誰も知らない未来のお話です。


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