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処刑された『闇魔法使い』の姉を救うため、死に戻った『光魔法使い』の妹は運命に抗う ~役立たずと捨てられた義妹ですが、今度は絶対に守り抜きます~  作者: 東明時裕夜
第三章 闇魔法の理解者と地下図書室の秘密

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第24話 亡き母の面影と幻級魔法の真実

「ミリアナ!」


 ハーヴェー様が、崩れ落ちたミリアナさんを抱き留めた。

 ミリアナさんは青白い顔で、荒い息を吐き、ぐったりとしている。


「……すみません、ハーヴェー様……」

「やはり……一日に二人も……今の私には、荷が重すぎました……」


 彼女はうわ言のように呟くと、そのままガクリと意識を落としかけた。


「ミリアナさん!?」

「急に、どうされたのですか!?」


 私とお姉様は、あまりの急変ぶりに動揺した。

 ついさっきまで冷静に話していたのに、私の手に触れた瞬間、糸が切れたように倒れてしまったのだ。


「無理をさせるなと言っただろう。……少し休みなさい」


 ハーヴェー様は慣れた様子で彼女を近くの椅子に座らせると、ハンカチで額の脂汗を拭った。

 そして、不安そうに見つめる私とお姉様に向き直った。


「驚かせてすまない。彼女は……少し特殊な力を使った『反動』が出たようだ」

「特殊な力……反動……?」


 お姉様が不安そうに尋ねる。

 ハーヴェー様は静かに頷き、私たちを安心させるように穏やかな笑みを向けた。


「命に別状はない。少し休めば戻る。……まずは、落ち着いて話そう。先ほども言ったが、私はあなた方の敵ではない」


 ハーヴェー様は、地下図書室の天井を仰ぎ、独り言のように呟いた。


「我々が見たのは、国を脅かす魔女ではなく、ただの姉妹だ。存在しない脅威を、わざわざ王へ報告する愚か者はいませんよ。……この地下の闇に、今日のことは溶かしておきましょう」

(……王様には……言わない、ということ……?)


 直接的な言葉ではないけれど、その瞳には嘘偽りのない誠実さが宿っていた。

 この人は、信じられる。私はそう直感し、強張っていた肩の力を抜いた。


「……ありがとうございます」


 お姉様と私が深く頭を下げると、ハーヴェー様は優しく頷いた。


「アミア様ですね。先ほど通路の陰で聞いていたかもしれませんが、改めて自己紹介させてください。私はハーヴェー・カーフェーン。この国で大臣を務めております」


 通路の陰で盗み聞きしていた時から、分かっていた。

 けれど――改めて彼と真正面から向き合い、その名と顔を突き合わせた瞬間、私の心臓は痛いほどドクリと跳ねた。


(……カーフェーン大臣。金髪に、水色の瞳。アメリアさんの面影があるわ……。それに、この地下図書室は大臣であるアメリアさんのお父様が管理しているって、一周目の地下牢で聞いた……!)


 大臣がこんな時間にこの場所にいる理由。その全てのピースがピタリとはまり、胸の奥で激しい感情が渦巻く。


 未来で私のたった一人の親友になり、私を庇って透明な冷たい刃に貫かれる少女。

 あの悪魔シャドウに「つまらない女」「国の混乱のための最高の収穫」だと嘲笑われ、ゴミのように命を散らされる気高い少女の、お父様。


 その人が今、目の前で、私たちを「味方だ」と言ってくれている。

 罪悪感と、感謝と、あまりの切なさが込み上げてくる。


(……絶対に……)


 心の中で、新たな誓いが刻まれる。


(……この人の娘さんを……私に「一人じゃない」と言ってくれたアメリアさんを……今度こそ、絶対に死なせない……!)


「アミア様? どうされましたか?」

「……いえ、なんでも……ありません」


 私は顔を上げた。先ほどまでの警戒心とは違う、強い決意の光が宿っていた。


「……初めまして、ハーヴェー様」


 私は深く頭を下げた。未来の恩人へ、そしてこれから共に戦う盟友への敬意を込めて。

 ハーヴェー様は私の顔をまじまじと見つめ、そして――ハッとしたように大きく目を見開いた。


「……っ!」


 驚愕。信じられないものを見るような目。


「まさか……ライトブルーの髪……透き通った緑の瞳……間違いない……あなたは……アミィエル・レフィーナの娘ですね」

「……え?」


 私の実母、アミィエル。私が一歳の時に亡くなり、顔も覚えていない母のことを、この人は知っている。

 目を丸くする私を見て、ハーヴェー様は懐かしむように、優しく目を細めた。


「驚くのも無理はありません。彼女はかつて……私が学園で教鞭をとっていた頃の、教え子だったのです」

「教え子……」

「ええ。当時の学園において、彼女は異例とも言える特別な経緯で入学を認められた、稀有な才能の持ち主でした。そして……教師と生徒という立場を超えて、私にとっては心から信頼できる『大切な友人』でもあったのです」


 ハーヴェー様は懐かしむように目を細め、そして、深く悲しげに瞳を伏せた。


「……彼女がファミル伯爵と結婚し、そして……わずか数年後、若くして亡くなったという報せを聞いた時は、目の前が真っ暗になりました。……君は、アミィエルが命懸けで産み落とした、忘れ形見なのですね」


 (……っ! ハーヴェー様は、お母様が結婚したことも、亡くなったことも知っていたんだ……)


 私は驚きながらも、静かに頷いた。

 お姉様も、隣で悲しげに瞳を伏せた。


「……ええ。お義父様から聞きましたわ。アミアがまだ物心つく前に、流行り病で、あっけなくってしまったのだと……」

(流行り病……。そう、お父様はずっとそう言っていた)


 お姉様の言葉を、ハーヴェー様は唇を噛み締めながら聞いていた。その拳が、白くなるほど強く握られている。


「……そうか。流行り病、か。……やっぱり……」


 ハーヴェー様が、悲痛な声でポツリと呟いた。

 その横顔には、『流行り病なんて表向きの嘘だ。本当は、あの魔法の代償で命が尽きたのだろう』と、残酷な真実を全て悟っているような響きが含まれていた。


「……やっぱり?」

「……いや。なんでもない。……すまない、取り乱してしまった」


 私が聞き返すと、ハーヴェー様はハッとして首を振り、慌てて言葉を濁した。

 そして、何か重い十字架を一人で背負い直すように深く息を吐き出すと、ゆっくりと顔を上げた。


「……今度、君のお母様のお墓に……花を手向けに行かせてもらえないだろうか。彼女は誰よりも得難い、大切な友人だったから」

「……ありがとうございます……」


 私は深く頭を下げた。


(……こんなにも、私のお母様のことを深く想ってくれているなんて)

(本棚に手をついて震える背中。亡くなったお母様を想って静かに悲しんでいた、お父様の横顔と……同じだわ)


 まるで、生涯でたった一人、愛した人を永遠に失ってしまったような、深くて重い絶望。

 それほどまでに深く想っていたのなら、どうして二人は結ばれなかったのだろう。

 詳しい事情は分からない。けれど、結ばれなかった悲しい縁が、今こうして娘である私とハーヴェー様の出会いに繋がっている。

 そして何より――そんな彼の娘であるアメリアさんが、私にとって命を懸けて守りたい『たった一人の親友』なのだ。


(……運命って、不思議だわ……)


 親たちの世代で結ばれなかった悲しい縁。それが時を超えて、娘である私たちに引き継がれ、今度こそ悲劇を断ち切るための強い「絆」に変わろうとしている。


(……お母様。私、絶対にアメリアさんを守り抜くからね。お母様をこんなにも想ってくれた、この人の大切な娘さんだもの)


 私は心の中で亡き母に語りかけ、ハーヴェー様への感謝と決意を新たに刻み込んだ。


 ハーヴェー様は、静かに息を吐き出した。

 その脳裏には、自分にできなかった『身分の壁を越える』ということを成し遂げた見知らぬ男(お父様)の姿が浮かんでいるようだった。


 (……アレト殿は、きっとアミィエルから『すべて』を聞いた上で、それでも彼女の最期を看取る覚悟で妻に迎えたのだろう。私にはできなかったことを、彼は……)


 ハーヴェー様は過去の幻影を振り払うように、かつて愛した人の面影を探すように、慈しむような目で私を見つめた。


「アミア様。あなたのお父上は……亡くなった後も、アミィエルの事を愛していましたか?」


 その問いに、私は「はい」と即答しそうになって、ハッと息を呑んだ。


 (……一周目のあの暗い地下牢で、お姉様が教えてくれた。『お義父様は、アミアや亡き妻アミィエル以外は愛さないと、シャリアお母様を真っ向から拒絶したのよ』って)


 だが、お父様のその真っ直ぐな誓いは、私が本来知るはずのない事実だ。二周目の今、お姉様は私がその大人の事情を知っていることなど全く知らない。もしここで私がポロリと言ってしまえば、「どうしてあなたがその言葉を知っているの?」と怪しまれ、最悪の場合『死に戻り』がバレてしまう。


 だから私は、込み上げる様々な感情をぐっと喉の奥に押し込み、ただの『何も知らない娘』として、言葉を選んだ。


「はい……。お父様はいつも悲しそうに母の事を語っていました。不器用でしたけれど、私を宝物のように大切にしてくれていたんです」


 その答えを聞いて、ハーヴェー様はどこか安堵したように、けれど少しだけ腑に落ちないというように眉をひそめた。


「じゃあ、今のお母様であるシャリア公爵夫人は?」


 その問いに、私の胸の奥が再びズキリと痛んだ。

 お父様はシャリアに惚れたのではない。シャリアが違法な薬を使ってお父様の心を壊し、操り人形にして公爵家に取り込んだのだ。


 それもまた、一周目で聞いて知っている事実。しかし、それをそのまま話すことは絶対にできない。


 お姉様から見れば、私は五歳の時に突然公爵家へ連れられてきただけの、大人の事情なんて何も知らない子供だ。お父様が変わってしまった本当の理由も、知るはずがないのだから。


 私は、膝の上でギュッと拳を握りしめ、知らぬふりをして答えるしかなかった。


「……分かりません。ただ……私が五歳の時、お父様は突然、別人のように冷たくなってしまって……。それから公爵家へ連れてこられたんです」


 私がうつむいてそう答えると、隣にいたお姉様がハッとして息を呑んだ。


「……アミア。あなた、私と出会って間もない頃に、そんな事言っていたわね。『お父様も、私のことなんて見なくなっちゃった』って……」


 お姉様は、私が五歳の時に、誰もいない客室の隅で膝を抱えて泣いていた時のことを思い出したようだった。


「……はい」

「……そうだったのね」


 お姉様は痛ましそうに顔をゆがめ、「アミア……」と私の肩を優しく抱き寄せてくれた。


「あなたのお義父様は、本当はとても優しい方だったのね。決して、あなたに冷たい人なんかじゃなくて……」

「お姉様……」


 何もわからず父親の温もりを奪われ、公爵家で孤独に震えていた五歳の私。その寂しさの『本当の理由』を知ったからこそ、お姉様は深く胸を痛め、私を慰めるように強く抱きしめてくれたのだ。


 そして、お姉様は眉をひそめ、不思議そうに呟いた。


「……でも、おかしいわね。亡き奥様とアミアをそこまで愛していた人が、いくら政略結婚だからといって、突然人が変わったように冷酷になるなんて……」


 私の言葉と、当時の異常な状況。

 聡明なお姉様は、まだ『薬』のことまでは分からずとも、その裏にある不気味な違和感に自力で勘付き始めていた。


「……」


 二人のやり取りを聞き、ハーヴェー様は静かに目を伏せた。

 長年、国の中枢で数々の陰謀を見てきた彼には、それだけで十分だった。

 『亡き妻を愛し抜いた男が、突然別人のように心変わりした』という不自然さ。その裏にある、底知れない悪意の気配に、彼もまた確実に勘付いたのだ。


(……言えないよね。証拠がないもの)


 私は、彼の沈黙の理由を痛いほど理解していた。

 一周目のアメリアさんが言っていた通り、ジェック様の失踪事件について、魔法兵団は未だに決定的な『証拠』を掴めていない。


 そして、アレトお父様の心変わりについても――屋敷に隠されているはずの『薬』の物証。それすら、あのマリアベルの厳しい監視のせいで、私自身も未だに掴めていない状態だ。ましてや外部の人間からすれば、ただの不確かな憶測で踏み込めるはずがないのだ。


 そんな状態で、まだ子供である私たちに「君たちの母親が、父親たちを消したり洗脳したりしているかもしれない」などと告げるのは、あまりにも残酷だ。


 特に――シャリアを血の繋がった実の母とするお姉様には、心優しいこの人が到底言えるはずがない。


「ネフェリア様。……先ほど、ミリアナが異変を感じて割り込んできたため、言いそびれてしまいましたが」

「え……?」

「私は君の実のお父上であるジェック・リィエル殿と直接の親交があったわけではありません。ですが……十一年前に彼が森で不自然な失踪を遂げた事件について、ずっと気にかけていたのです」

「ハーヴェー様が……お父様の事件を……?」


 お姉様が驚きに目を丸くする。私も息を呑んだ。


「ええ。実は私の部下であるミリアナの……身内がね。当時の魔法兵団にいて、あの事件はただの事故ではないと、今も独自に真相を追っているのですよ」


 ハーヴェー様は、深く、悔恨を滲ませるように目を伏せた。


 (……そうだったんだ。ハーヴェー様は、ミリアナさんのお姉さんが事件を調べているから、お姉様のお父様のことにも詳しかったんだ……!)


 私は、先ほどミリアナさんを見て確信した「元・魔法兵団の副団長である姉が、シャリアの関与を疑って調べている」という事実と合わせ、この二人が私たちにとって絶対に信頼できる味方なのだと強く確信した。


「アミィエルを引き止めることもできず……大臣でありながら、ジェック殿の不可解な事件の真相も未だに掴めずにいる」


 ハーヴェー様は、悲痛な声で呟いた後、静かに顔を上げて私たちを真っ直ぐに見据えた。


「だからこそ……かつて私が救えなかった大切な友人の娘と、不遇な事件に巻き込まれた男の娘である君たちが、強大すぎる力と過酷な運命に翻弄されているのを、このまま見過ごすわけにはいかない」

「……では、本題に入りましょうか」


 ハーヴェー様は居住まいを正し、まだ顔色の悪いミリアナさんを見た。 


「ミリアナ。……彼女たちに、説明してあげなさい。君が何をしたのかを」

「……はい」


 ミリアナさんは呼吸を整え、私とお姉様を見つめた。


「私のこの力は……『鑑定アプレイザル』と呼ばれる魔法です。人の魔力や能力を、本質レベルで見抜く力です」

「本来であれば、他人の魔力に私の身体が勝手に反応して、魔法が暴発することなどありません。……ですが、お二人の持つ『光』と『闇』という、あまりにも異質で異常な力に私の本能が当てられ……無意識のうちに、つい『鑑定』を使ってしまったのです」

「無意識に……」

「ええ。そうして……ネフェリア様の底知れない『闇』……そして、アミア様。貴女の中にある、微弱な炎属性の殻に包まれた……清冽な『光』の魔力を、私は視てしまいました」

「……!」 

「しかし……それだけで、なぜあんなに急に具合が悪くなったのですか?」


 お姉様が疑問を口にした。


「……それが、この魔法の『制約』なのです」


 ミリアナさんは、自嘲気味に微笑んだ。


「この力は、術者の精神を極限まで削ります。今の私の限界は……一日に二人まで。それ以上視ようとしたり、あるいは貴女方のように強大すぎる魔力を持つ者を連続で視れば……私の魂のうつわを超え、先ほどのように強制的に意識が断たれてしまうのです。この『鑑定』の力もまた――伝説上の魔法、『幻級魔法ファントム・クラスマジック』の一つに数えられているのです」

「……幻級……魔法……!?」


 私とお姉様の声が重なった。


(……幻級魔法って、光魔法使いだけが極められる『治癒魔法』のことだけじゃなかったの……!?)


 一周目、シャドウはあざ笑うように言っていた。

 『それは常識を超えた幻級魔法の一つ。光魔法使いだけが稀に使える最強魔法だ』と。


 あの時の口ぶりでは、幻級魔法=光の治癒魔法だと思っていた。

 常識を超えた伝説の魔法は、治癒魔法以外にも存在していたのだ。


(……じゃあ、シャドウの相手の魔力や才能の色を見抜くあの『左の魔眼』……あれも、ミリアナさんと同じ『鑑定』のような幻級の力だったの……?)


「……あの、ミリアナさん」


 私は、抑えきれない疑問を口にした。

「幻級魔法って……他には、どんなものがあるんですか?」

 ミリアナさんは少し困ったように首を横に振った。

「詳しいことは、私にも分かりません。幻級魔法に関する文献は、王城のさらに奥にある『王立図書館』に、禁書指定されて厳重に保管されているはずですから。ちなみに、ここにいらっしゃるハーヴェー様が実在をご存知なのも、『治癒』と私の『鑑定』のみです」


(王立図書館……! そんな場所があったなんて。私は今まで、学園の生徒や貴族も使えるこの地下図書室しか知らなかったわ)

(幻級魔法の秘密がそこにあるなら……いつかチャンスがあれば、私も行って調べてみたい……)


「禁書……ですか」

「ええ。ただ、伝え聞くところによれば……人々に幻を見せたり、本物そっくりの幻影を作り出したりする魔法などが、過去の幻級魔法として記されていましたね。……いずれにせよ、どれも人智を超えた力ばかりです」


 ミリアナさんは、真剣な眼差しで私とお姉様を見つめた。


「そして、幻級魔法の多くは、発動に『詠唱』すら必要としません。……ですが、その強大さゆえに、ほとんどの幻級魔法には私のように重い制約(反動)が伴うそうです」


(……人々に幻を見せたり、本物そっくりの幻影を作り出す魔法……それに、無詠唱で重い制約……)


 私はその言葉を、深く脳裏に刻み込んだ。


 ミリアナさんは少し声を潜め、私たちに念を押すように言った。


「アミア様、ネフェリア様。私からのお願いです。私のこの鑑定のことも……どうか内緒にしてくださいね」

「えっ、どうしてですか?」

「私の魔法も、治癒魔法と同じく非常に希少で、悪用されやすい力なのです。制約があるとはいえ、他人の隠し持つ魔力や真実を暴ける力ですから……国や権力者に知られれば、間違いなく道具として利用されます」


 ミリアナさんは眼鏡のブリッジを押し上げた。


「ちなみに、私のこの力を知っているのは、ここにいるハーヴェー様と……私の姉である『レイフェ』だけです」


 (レイフェ……! それが、一周目でアメリアさんが言っていた、ジェックお父様の事件を追っている『元・魔法兵団の副団長』のお姉さん!)


 私はハッとした。


 (……そういえば、一周目のアメリアさんは、シャドウの魔法を推測する時に『無魔法』の知識は持っていたけれど、『幻級魔法』という言葉は一度も口にしていなかった……)

 (……きっと、ハーヴェー様は愛する娘を危険な真実から遠ざけるために、アメリアさんには幻級魔法の存在なんて教えていなかったんだわ。……お父様が、娘を守るために……)


 親が子を想う、切なくも温かい嘘。それが痛いほど分かって、胸が締め付けられた。

 お父様の愛情。お姉様を救うための鍵となる人物の存在。そして、伝説の『幻級魔法』という未知の領域。

 次々と明かされる真実に、私とお姉様はただ圧倒され、言葉を失うしかなかった。

 しかし――この地下図書室で語られる『真実』は、まだ終わってはいなかった。私自身の、そして亡き母アミィエルに関する最大の秘密が、すぐそこまで迫っていたのだ。

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