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処刑された『闇魔法使い』の姉を救うため、死に戻った『光魔法使い』の妹は運命に抗う ~役立たずと捨てられた義妹ですが、今度は絶対に守り抜きます~  作者: 東明時裕夜
第二章 魔獣事件再び、変えられない運命

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幕間10 魔法兵団団長ナフィリア・アクティート 

 王都の城下町、中央広場近く。

 そこに、王国の治安と国防を担う「魔法兵団」の本部がある。

 威厳ある石造りの二階建ての建物だ。

 その二階、団長執務室。


「あー、退屈。マジで退屈ね」


 執務机に足を投げ出し、行儀悪く椅子を揺らしているのは、一人の女性だった。


 鮮やかな桃色の髪と瞳。白を基調に青と黄のラインが入った洗練された軍服を着崩し、スリットの入ったスカートからは健康的な脚とガーターベルトが覗く。

 彼女こそが、この魔法兵団を束ねる若き天才団長、ナフィリア・アクティートである。


「団長、足。行儀が悪いですよ」


 隣で書類仕事を片付けているのは、オレンジ色の短髪をした細身の男。

 副団長のレオ・アティンだ。彼は呆れたようにため息をついた。


「だってさぁ、レオ。最近平和すぎない? 魔獣の討伐依頼もないし、私の腕が鈍っちまうわよ」

「平和なのは良いことでしょう。それに、書類は山をなしております」

「ちっ、細かい字を見るのは苦手なのよ」


 アクティーが不満げに鼻を鳴らした、その時だった。


 バンッ!

 執務室の扉が勢いよく開かれた。


「失礼します! 緊急の依頼です!」


 息を切らして駆け込んできたのは、一人の男だった。

 しかし、魔法兵団の制服ではない。それどころか、公爵家の正規兵ですらない。


 革鎧に剣を帯びているが、その装備は統一感がなく、どこか薄汚れている。

 ――雇われの護衛(傭兵)だ。

 男の顔面は蒼白で、脂汗を流し、極度の恐怖に震えていた。 


「あ? なんだ、騒がしいわね。……どこのゴロツキ?」


 アクティーが足を下ろし、怪訝そうに眉をひそめた。


「た、助けてくれ……! 魔法兵団に捜索をお願いしたいんだ!」

「リィエル公爵家の……令嬢お二人が……『精霊の森』で行方不明になっちまった!」 

「公爵家の令嬢? お前のような男が護衛を?」


 レオが鋭い視線を向ける。公爵家の令嬢の護衛にしては、あまりにも質が悪い。


「や、雇われたんだよ! 奥方様に! でも……話が違う!」

 男はパニック状態で叫んだ。


「ピクニック中に魔獣が現れて……俺たちが応戦してる間に逸れちまった! 俺たちも仲間がやられて、命からがら逃げてきたんだ!」

「あんな……あんな化け物が出るなんて聞いてねえ!」


 その言葉を聞いた瞬間、アクティーの瞳から退屈の色が消えた。

 ギラリと、猛獣のような光が宿る。


「……おいおい。子供が森で一晩迷子だと?」

「しかも、雇われ護衛が逃げ出すほどの魔獣付きかよ。……面白くねぇ冗談ね」


 アクティーは椅子を蹴って立ち上がった。


「レオ! 魔法兵団、出るわよ! 数隊を率いて森へ向かう!」

「えっ、今からですか? 書類は……それに、この男の話が本当かどうかも……」

「後回しよ! 公爵家の令嬢だろうが、平民の子供だろうが関係ない。子供の命がかかってんのよ!」

「問答無用で準備しなさい!」


 アクティーが一喝する。


「……はぁ。分かりました、アクティー団長。すぐに出します」


 レオは諦めたように、しかし手際よく通信魔道具を取り出し、部下たちに指示を飛ばし始めた。

 男の素性や雇いシャリアの意図はどうあれ、事態が切迫しているのは男の怯えようから明白だった。


「待ってなさいよ、お嬢ちゃんたち。……子供を襲う外道な魔獣は、私が木っ端微塵にしてやるわ」

 アクティーは不敵に笑い、マントを翻して部屋を出た。


 ***


 ――精霊の森。

 アクティーとレオは、部下たちよりも遥かに速い速度で森を疾走していた。

 身体強化魔法をかけた彼らの脚力は、馬すら凌駕する。


「団長、魔力反応あり! 前方です!」

「おうよ、デカいのがいるわね!」


 木々の隙間から、巨大な影が見えた。

 大型のマッドウルフ。


 そして――泥だらけのドレスを着た小さな少女が、気絶したままのもう一人の少女を必死に庇い、盾になろうとしている姿が目に映った。


「――っ!」


 アクティーの脳内で、何かが弾けた。

 魔力も体力も限界のはずなのに、死を覚悟した強い目で、大切な人を守ろうとするその姿。


「……気に入ったわ。その根性!」


 アクティーは地面を爆発的に蹴った。

 音速に近い踏み込みで、巨大な獣の頭上へと跳躍する。 


 ドォォォォォン!!


 凄まじい衝撃音が森に轟き、巨大なマッドウルフがボールのように弾き飛ばされて地面を転がる。 


「……っ!」


 泥と魔獣の返り血で汚れきったライトブルーの髪の少女が、驚愕の表情で目を開け、こちらを見上げた。

 アクティーは背中を向けたまま、親指を立ててニカッと笑いかける。


「間に合ったわね。……怪我はない、お嬢ちゃんたち?」


 ここからは大人の――王国最強の魔法兵団の仕事だ。

 こうして、絶望の森で孤立していたアミアとネフェリアは間一髪で救出され、リィエル公爵家への帰

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