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一度殺された義妹令嬢ですが、処刑された闇魔法使いの姉と私の未来を全力で変えたいと思います  作者: 東明時裕夜
第二章 魔獣事件再び、変えられない運命

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第十話 二人だけの秘密

  翌朝――私は、お姉様の部屋で目を覚ました。


  昨夜、ずっとお姉様の隣にいた。いつの間にか、椅子に座ったまま眠ってしまっていたらしい。


「……ん……」


  身体が、少し痛い。椅子で寝たから。首が、少し凝っている。


  でも――そんなことより。


  私は、慌ててお姉様の方を見た。


  ベッドの上――お姉様が、ゆっくりと目を開けていた。


「……っ! お姉様!」


  私は、叫んだ。そして――ベッドに駆け寄って、お姉様に抱きついた。


「お姉様……! お姉様……!」


  涙が、溢れ出す。止まらない。


  一周目では――お姉様は処刑された。でも、今――お姉様は生きている。


  目を覚ました。


「……アミア……?」


  お姉様が、驚いた声を出す。


「どうしたの……? そんなに泣いて……」


「……よかった……! 本当に……よかった……!」


  私は、お姉様を強く抱きしめた。


「……目が覚めて……! 本当に……!」


「アミア……」


  お姉様が、優しく私の背中を撫でてくれる。


「大丈夫よ……私は、ここにいるわ……」


  その声が――温かい。優しい。生きている。


  お姉様は――生きている。


「……お姉様……お姉様……」


  私は、泣き続けた。


  しばらく――お姉様に抱きつきながら、泣いていた。


  そして――少しずつ、涙が止まっていく。


「……ごめんなさい……お姉様……」


  私は、顔を上げた。目が、少し腫れている。


「泣いてばかりで……」


「いいのよ」


  お姉様が、優しく微笑んだ。


「アミアが無事で、本当によかった」


  お姉様の赤い瞳が――優しく私を見つめている。


「……お姉様……」


  私は、深く息を吸った。そして――真剣な顔で、お姉様を見つめた。


「……昨日のこと……覚えていますか……?」


「昨日……?」


  お姉様が、少し考える表情をする。


「……ピクニックに行って……魔獣に襲われて……」


  お姉様の表情が、曇る。


「……そして……私は……」


  お姉様の手が、震える。


「……魔法を……使った……」


「……黒い……魔法を……」


  お姉様の目から、涙が溢れる。


「……私……あんな魔法……どうして……」


「……闇魔法……なの……?」


「……はい」


  私は、小さく頷いた。


「お姉様は……私を守るために……闇魔法を使いました……」


「……っ」


  お姉様が、震える手で顔を覆う。


「……ごめんなさい……アミア……」


「……私……そんな力が……あるなんて……知らなかった……」


「違います!」


  私は、強く言った。


「お姉様は……悪くないです……!」


「……アミア……?」


「お姉様は……私を守ってくれました……」


  私は、お姉様の手を握った。温かい手。生きている手。


「だから……お姉様のせいじゃないです……」


「でも……」


  お姉様は、泣きそうな顔をしている。


「……でも……闇魔法は……災厄の象徴……」


「……バレたら……私は……処刑される……」


「だから!」


  私は、さらに強く言った。


「だから……お姉様……」


  私は、お姉様の目をまっすぐ見つめた。


「……絶対に……あの魔法を使っちゃダメです……」


「……え……?」


「お姉様が……闇魔法を使ったら……」


  私の声が、震える。


「……お姉様は……処刑されてしまいます……」


「……だから……絶対に……使わないでください……」


「……アミア……」


「シャリアお母様にも……誰にも……見せちゃダメです……」


  私は、涙を流しながら言った。心の中では、シャリアと呼んでいる。


  もう、母親だとは思わない。


「……絶対に……秘密にしてください……」


  お姉様は――しばらく、黙っていた。


  そして――小さく頷いた。


「……分かった……」


  お姉様の声は、震えていた。


「……誰にも……言わない……」


「……使わない……」


「……約束……します……」


「……お姉様……」


  私は、再びお姉様に抱きついた。


「……ありがとうございます……」


  お姉様が、私を抱きしめてくれる。二人で――しばらく、そうしていた。


  温もりが、伝わってくる。お姉様は、生きている。


  そして――その時。


  コンコン。


  扉をノックする音が聞こえた。


「ネフェリア? 起きているの?」


  シャリアの声。


  私とお姉様は――慌てて離れた。


「……はい、お母様」


  お姉様が、答える。


  扉が開いて――シャリアが入ってきた。その後ろには、メイドもいる。


「ネフェリア! 目が覚めたのね!」


  シャリアが、嬉しそうに駆け寄ってくる。


「よかった……本当によかった……」


  シャリアが、お姉様を抱きしめる。


「……お母様……」


  お姉様が、小さく呟く。


  私は――シャリアを見つめた。


(……この人が……)


  心の中で、警戒する。一周目で――お姉様を利用した人。


  私の記憶を奪った人。でも――今は、優しい母親を演じている。


「昨日は本当に心配したわ」


  シャリアが、お姉様から離れる。


「魔獣に襲われたなんて……」


「でも、よく無事だったわね」


  シャリアの青い瞳が――私とお姉様を見つめる。まるで、何かを探るように。


「……はい」


  お姉様が、小さく頷く。


「……アミアと……一緒に戦いました……」


「そう……」


  シャリアが、私の方を見た。


「アミアも、よく頑張ったわね」


「……はい……」


  私は、小さく答えた。でも――心の中では、警戒していた。


(……何か……探っている……?)


  シャリアの目が――私とお姉様を、じっと見つめている。


  まるで――何かを確認しているかのように。


「魔獣を倒したのは、どうやって?」


  シャリアが、尋ねた。


「……っ」


  お姉様の身体が、わずかに震える。


  私は――咄嗟に答えた。


「私の火魔法と、お姉様の水魔法で倒しました」


「火魔法……?」


  シャリアが、驚いた顔をする。


「アミア、あなた……火魔法が使えるの?」


「……はい……でも……」


  私は、少し戸惑った表情を見せた。


「……私も……よく分からないんです……」


「どういうこと?」


  シャリアが、眉をひそめる。


「……昨日……魔獣に襲われて……」


  私は、震える声で説明した。


「……お姉様が……水魔法で戦っていましたけど……」


「……レッドウルフが……強くて……」


「……お姉様の魔力も……限界で……」


「……それで……私……必死に……『お姉様を守りたい』って……思って……」


  私は、手のひらを見つめた。


「……そうしたら……手のひらが……熱くなって……」


「……炎が……出たんです……」


「……っ」


  シャリアの目が、鋭くなる。


「見せてみなさい」


「……はい……」


  私は、手のひらを前に出した。そして――集中する。


(……光よ……)


  魔力を練る。手のひらに――小さな炎が揺れる。


  昨日よりは強い。でも――まだ弱々しい炎。


「……これです……」


「……まあ……」


  シャリアが、驚いた表情を見せる。


「本当に……火魔法……」


「……でも……昨日まで……使えなかったんです……」


  私は、不安そうな顔をした。


「……今朝、試してみたら……少しだけ出せるようになりましたけど……」


「……これが……火魔法なんでしょうか……?」


「……ええ、間違いないわ」


  シャリアが、私を見つめる。


「火魔法よ、アミア」


「……でも……普通は15歳の魔法試験まで……使えないはずでは……」


  私は、首を傾げた。


「……私……まだ11歳なのに……」


「……そうね……」


  シャリアが、少し考え込む表情をする。


「通常、魔法が使えるようになるのは15歳前後……」


「でも――稀に、極限状態で早期発現することがあるわ」


「……極限状態……?」


「ええ。命の危機に瀕した時、生存本能が魔力を引き出すことがある」


  シャリアが、説明する。


「あなたの場合――ネフェリアを守りたいという強い想いが、魔力を目覚めさせたのでしょう」


「……そう……なんですか……」


  私は、納得したような、不安そうな表情を見せた。


「……でも……これから……どうすれば……」


「まだ不安定な状態ね」


  シャリアが、言う。


「15歳になるまでは、無理に使わない方がいいわ」


「身体に負担がかかるから」


「……はい……」


  私は、小さく頷いた。


(……よかった……)


  心の中で、安堵する。


(……これで……シャリアは納得した……)


(……光魔法の早期発現……極限状態……)


(……それで、ごまかせた……)


「それで、魔獣を倒したのね」


  シャリアが、納得したように頷く。


「ネフェリアの水魔法と、アミアの火魔法で」


「……はい」


  お姉様が、小さく答える。


「そう……よかったわ」


  シャリアが、安心したように微笑む。


「二人とも、本当によく頑張ったわね」


  でも――その目は――完全には信じていないような、何かを探るような――そんな光を宿していた。


「さあ、ネフェリア。朝食の準備ができているわ」


「起きられる?」


「……はい」


  お姉様が、ゆっくりとベッドから起き上がる。メイドが、お姉様を支える。


「では、一階へ行きましょう」


  シャリアが、部屋を出る。メイドも、お姉様を支えながらついていく。


  私も――後をついていった。


  でも――心の中では、強く誓っていた。


(……絶対に……お姉様の秘密は守る……)


(……シャリアには……絶対にバレないようにする……)


  そして――私たちは、階段を降りて一階へ向かった。


  朝食の部屋へ。木のテーブルに、料理が並んでいる。


  私たちは、席に着いた。シャリアは――優しく微笑んでいる。


  でも――その目は――何かを探っているように見えた。


  私は――警戒しながら、朝食を始めた。


(……これから……どうなる……?)


(……未来は……変えられるの……?)


  不安が、胸をよぎる。でも――私は、決意していた。


  絶対に――お姉様を守る。未来を変える。


  そして――シャドウを倒す。


  長い戦いが――続いていく。


  * * *


  朝食が終わり――シャリアは用事があると言って、屋敷の別の場所へ向かった。


  私とお姉様は、再びお姉様の部屋へ戻った。


  扉を閉めると――静寂が訪れる。


  お姉様は、ベッドに腰を下ろし――私を見つめた。


「……アミア」


「……はい」


  私は、お姉様の隣に座った。


「あなた……光魔法が使えるのね」


  お姉様の声は――複雑な響きを帯びていた。


「……はい……」


  私は、小さく頷く。


「……私も……驚いています……」


「光魔法は……100年に1人しか現れない、希少な魔法よ」



「そして……闇魔法も、光魔法と同じく100年に1人しか現れない。光と闇は、表裏一体の特殊な魔法なの」

  お姉様が、静かに言う。


「私も……本で読んだことがあるわ」


「……そう……なんですか……」


  私は、驚いたふりをする。でも――心の中では、知っていた。


  一周目で、シャドウが言っていた。


『光魔法使いは100年に1人。治癒魔法の素質を持つ者は、さらに稀だ』


  そして――私は、治癒魔法まで使えてしまった。


  もし、シャリアに知られたら――私は、利用される。


  一周目では、教授から「平凡な魔力、これ以上伸びることはない」と評価されていた。


  だから、王族にも利用されなかった。


  でも――二周目では、私は光魔法を極めようと決意している。


  シャドウを捕まえ、地下牢へ入れるために。


  だから――絶対に、光魔法の本当の力を、シャリアに見せてはいけない。


「アミア……」


  お姉様が、私の手を握る。


「……あなたは……すごい力を持っているのね……」


「……お姉様……」


「でも……その力は……危険でもあるわ」


  お姉様の赤い瞳が、私を見つめる。


「光魔法使いは――王族や貴族に、利用されることがあるの」


「……っ」


  私の身体が、震える。


  お姉様は――知っている。


「だから……アミア……」


  お姉様が、私を抱きしめる。


「……あまり……人前で使わないようにね……」


「……お姉様……」


「私の闇魔法も……あなたの光魔法も……」


  お姉様の声が、震える。


「……二人だけの……秘密にしましょう……」


「……はい……」


  私は、お姉様に抱きつく。


  温かい。優しい。


  お姉様は――私を守ろうとしてくれている。


  私も――お姉様を守る。


  二人の秘密を――絶対に、守り抜く。


「ありがとう……お姉様……」


「こちらこそ……アミア……」


  私たちは――しばらく、抱き合っていた。


  窓の外では、鳥が鳴いている。


  穏やかな朝。


  でも――心の中では、嵐が吹き荒れている。


  未来を変えるための――長い戦いが、始まっている。

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