第87話「他の使役モンスターとFS解明のヒント」
#第87話「他の使役モンスターとFS解明のヒント」
俺とひよりは透子さんの後について、千代田ダンジョンのゲートをくぐった。
内部の雰囲気は他のダンジョンと大差ない。違うのは――あちこちで研究らしい計測や観察が同時進行していることだ。測量関係の計測ポール、携行端末、ドローンと思われる飛行物などがいたるところに見受けられる。
ダンジョンの中なのにちょっと新鮮だな、と思いながら、きょろきょろしつつ透子さんに続く。
少し歩くと、使役モンスター連れの研究員が実地テスト中のようだった。
「どうだい、調子は?」と透子さん。
「相変わらずです。言うことを聞きませんよ」男の研究員は苦笑い。
足元でスライムがぴょんぴょん跳ねている。うーん。ラムと同じスライム型の使役モンスターだけどラムとは挙動が全然違うな。本当に落ち着きがない。
透子さんが俺の方を向いて言ってきた
「レン、比較のために君もスライム系の使役モンスターを出してみることはできるかな?」
「了解です。――ラム」
スロットからラムが現れる。いつも通り落ち着いているが、周囲に人が多いのに気づくと、すっと俺の後ろに隠れた。
その様子に男性研究員が目を丸くする。
「噂には聞いてたけど……まるで別物だ。なんでそんなに落ち着いているんだ?」
ラムはじっとしていたが、近くにいる使役モンスターのスライムを一瞥してすぐ興味を失ったように俺の方を見る。
一方のそのスライムはラムを仲間だと思ったのか、にじり寄ってくる。ラムは少し嫌そうに無視。なんとも妙な絵面だ。
そこへ敵モンスターが近づいてきた。
「マイク、あれをやっつけろ!」研究員が指差しで指示。どうやらあの使役モンスターはマイクという名前をもらったらしい。
スライムはしばし意味が取れずに跳ね続け、やがて敵へ向かって体当たり、どうにか撃破。
(……野性的だ。何を考えてるのか全く読めないし、動きも見た目も敵と区別がつきにくい。命令を一応理解はしているらしいが、本当に理解して動いているのかさえもぱっと見は分からない)
俺は念話でラムに訊いた。
<<どう思う、ラム。あれが<FS1>の使役モンスターらしいぞ>>
<<正直、私にもわかりません。本能で動いているだけに見えます。敵モンスターと同じように見えます>>
(やっぱり俺と同じか……特に何も分からないな)
しばらく観察した。とりあえず同じスライム系の使役モンスターなのに、ラムとは全く違うことだけは分かる。逆に敵モンスターと対して変わらない。他にも違和感があるのだが俺は何がどう違うのか言語化できなかった。ひよりも首をかしげている。俺と同じような感じなのかもしれない。
するとラムが念話で話かけてきた。
<<使役モンスターを見ても違いは分かりません。でも――>>
<<でも?何か分かったか?>>
<<人のほうが、ご主人様とまったく違います>>
<<うん? どういうことだ?そりゃ違う人だから見た目に違うのは当たり前だぞ。そこは見た目が似ている使役モンスターとは違うのは当然だ>>
<<いや、そうではありません。ご主人様からはいつも信頼の気持ちを感じます。温かい感じです。でも、あの人からはそれを感じません>>
<<……なるほど。俺は間違いなく、ラムもリンもロアも信頼している。仲間だと思ってる>>
<<それが必要なのかもしれません>>
<<さすがラム。発想が柔軟だな>>
<<ありがとうございます。あと――接触もないですよね>>
<<接触?>>
<<はい。ご主人様は頭を撫でてくれたり、肩を叩いてくれたり。接触が多いです。そのときも、信頼されていると温かく感じます>>
<<……信頼と接触か>>
「レン、今の、念話で話してた?」
「はい。後ほど内容を共有します」
「了解。――いったん戻ろう」と透子さんが言いそのままダンジョンを後にした。
研究施設の小部屋で、俺はさっきの念話内容を逐語で伝えた。
「ふむ……信頼の気持ちと接触ね。そこはもちろん注目はしていたが、定性的にも定量的にも扱いが難しくてな。触れれば良いのか、気持ちがこもっていないと駄目なのか、頻度はどのくらいか……パラメータが多いのでどうしようか迷っていたところだ」
「でも、ラムが言っていることなので実験軸として置く価値はあると思います」
「あと、それに関連してもう一つ提案を思いつきました。使役モンスター持ちにステータスを任意提出してもらうのはどうでしょう。例えば千円ぐらいの謝礼を付けてアンケート化し、それを千人規模ぐらいで集めて<FS2>以上の個体がいないかスクリーニングするというのはどうでしょう?」
「アンケートか。しまった、一般には<FS1>しかいないと思い込んでいたからそれは盲点だった。簡単な話だしすぐ動かそう。謝礼なしでも受付経由で申請してもらうようにすればすぐにデータは集まるだろう」
「でも使役モンスターを隠す人もいると聞きます。謝礼ありにした方がいいと思いますよ。<FS2>の使役モンスター持ちとはその後も協力した方がいいでしょうし」
「それもそうだな。1人1000円だとして1000人でも100万か。そんなちょっとのお金をけちることもないな」
「もし<FS2>の持ち主が見つかったら、秘密厳守で使役モンスターとの関係性として接触頻度、呼称、立会い有無、召喚直後の対応などを教えてもらってデータ化するといいと思います。もちろんそちらは更なる謝礼を乗せるといいですね」
「同意だ。そこで共通因子が見つかれば<FS>の遷移条件に近づける」
透子さんは満足げに頷いた。
「うむ、レン、君は頭がいいな。ハンター辞めて研究課に来ないか?」
「遠慮します。俺はハンターが向いてるので」
「はは、冗談だ。分かったよ。じゃあ共同研究者として頼らせてもらう。また分かったことがあれば連絡する」
「はい。こちらも何か気づいたら情報を共有します」
部屋を出てモニターを見るとさっきの使役モンスターのスライムがまだぴょんぴょんしていた。
(当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃない――か)
俺はやはり使役モンスターに恵まれているな。そう思うだけで温かいものが自分にも流れているような気がした。ラム、リン、ロアもこんな気持ちなのだろうか。
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