第77話「コラボのあとで(紗月視点)」
#第77話「コラボのあとで(紗月視点)」
あの日のルナとクラン「エクリプス」のコラボ企画は私がどうにか手繰り寄せた。
ルナとのコラボ、クラン「エクリプス」の二人――私と司くん――との合同討伐の形にした。準備はできる限り整えたつもりだ。
できるだけのことはやったと思う。これ、本来ならば高く評価されてもいいよね?
これでダメならもう私の責任ではない――そう思えるくらいにはやったつもりだ。あとは司くんが「エクリプス」の浮上に繋げて欲しい。
そしてコラボ当日、実戦のルナは想像のさらに上をいった。とにかくルナは強い。
私では到底太刀打ちできない相手を、一人で息を乱さずさらりと次々と流れるように切っていく。まさに達人。まばたきの間にあっという間にモンスターが倒れていく。
ルナの戦いを見てると、自分の実力のなさを痛感する。レベルは1つしか差はないがそれ以上の差が確実にあるだろう。これは埋めようのない差だ。
そこで司くんが言った。
「おい、少し残してくれ。俺たちも倒さないと画にならん」
「了解。適度に残す」ルナは短く頷いた。
……どういうこと? それで“コラボ”って言えるの? おこぼれをもらう映像になるだけじゃない。それではまるでレベリングだ。司くん、何を考えているの?まさか何も考えてないとかはないよね?
そしてルナは律儀に二体だけ残してくれた。ここで司くんが華麗に討伐を決めれば、映像としてはまだ形になっただろう。
けれど、司くんは一体にかかりきりになり、もう一体が私の方へ流れてきた。
やばい、と思った時にはもう遅い。視界が狭まる。足がすくむ。逃げようとしたが中途半端だった。
しかし、その瞬間――ルナが入って、私の前から相手モンスターが倒れた。頼りになる、という言葉が軽く思えるくらい、頼りになった。本当に強い。そして自分だけでなく周りも見えている。こんな人がメンバーにいたら心強いことだろう。さすがにそこまでのお願いは無理だろうが……。
それに比べると、司くんは……私を足手まといみたいに扱うだけ。否定はしないけどもう少し言い方があると思う。私はレベル3で四階層は背伸びだ。もともと無理なんだよ。
そして司くんはレベル5で四階層のモンスターなら相手ではないはず。ルナが2体残してくれた“お膳立て”くらいはなんとかしてほしかった。自分の実力の無さを私のせいにするなんてひどいよ。
そして視聴者の反応は、悪い予感通りだった。
配信中のコメント欄が荒れている。そりゃそうだよね。これではとてもコラボ動画とは言えない。そして私も叩かれている。これはかなりまずい。
私は、すぐに悲しそうな表情を作った。少しだけ目線を落とし、カメラに向かって言った。
「コメント見ました。私のような低レベルの人間がうろちょろしたら邪魔ですよね。ごめんなさい」
――これは防御だ。炎上の火の粉を、せめて自分の手で方向を変えるための。
結果、私へのコメントは同情に切り替わり、庇う声となった。よし、狙いどおりだ。
けれど、ここまできたら司くんの分まで庇いきるのは無理だ。行き当たりばったりで現場に来たのは彼の判断だし私の責任ではない。もうどうにもならない。こればっかりは本人がなんとかして欲しい。
討伐が終わった。司くんの顔は少し暗い。何とか次につなげようと口では言うけれど、あまりにも考えるのが遅い。コラボの前に考えないとね。まさか本当に全く考え無しでコラボに参加するとは思わなかったよ。がっくりだ。
今回のコラボだって、私は事前に「コラボする際の作戦は考えた方がいい」と伝えていた。それなのに何もなし。自分の実力を過信しているだけ――そう見える。
コラボ企画は「エクリプス」としては完全な失敗だろう。私が想定していた最低以下の状況でどうにもしようがない。ルナの強さが改めて伝わっただけだ。
でも――私個人としてはなんとか成功に繋げないと。
私はあらかじめ立ち上げておいた「さつきチャンネル」に許諾範囲内で再編集版をアップした。
続けて短い動画をもう一本。「ルナのこと、知りたいことがあれば質問してね!」――そう呼びかける内容。
あとはルナから答えをもらい動画で回答する形に持っていければ(ダイレクトじゃなくても、私が聞いて私が伝えるでもいい)、再生数はある程度は伸びるはずだ。
案の定、新しい動画にも一定のアクセスが来た。
――でも、コンテンツとしては弱い。このままでは、すぐに息切れするのは目に見えている。次を考えないと駄目だ。
私でも3階層での活動状況説明ぐらいはできるが誰もそんなこと興味ないだろうし……
さすがにルナとの2回目のコラボは無理だろう。
私に残るのはルナへの連絡先のみ。しかも何度も連絡するわけにもいかない。お礼の連絡とそこに質問を混ぜることぐらいはできそうだがそれ以降に繋げる自信はない。
どうしたものか?悩んでもすぐには良い答えが浮かばなかった。
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