第74話「FSの謎と迷走」
#第74話「FSの謎と迷走」
会話が一段落したところで、立ち去ろうとしていたエリナがふと思い出したように振り向いた。
「そうそう、私からも聞きたいことがあったのよ」
「なんだ?」
「例の使役モンスターの件。<FS>の研究、あれはどこまで進んでるの?」
「……ああ、あのことか。『使役モンスターに名前を付けると<FS1>から<FS2>へ遷移する』って仮説だな」
「そう、その話」
現状、レンの使役モンスターだけは<FS2>以降になっている。そして<FS4>まで遷移しその使役モンスターと会話まで可能となっている。
これが他の<FS1>にとどまっている使役モンスターでも可能ならば画期的なことだった。大きな戦力になる可能性がある。そのために再現性の実験を開始していた。
朝倉は上を向いて、短く息をついた。
「正直なところ、現状は行き詰まっている。 研究課で実際に何体かの使役モンスターをスロットから出して“命名”したが、どれも<FS1>のままだったんだ。<FS2>に変わらなかった。そしてその理由は分からない」
「やっぱり。私も気になって、久しぶりに自分の使役モンスターをスロットから出して名前を付けたけど、<FS1>から変化なしだったわ」
「となると――他の条件があるのか、あるいは方法自体が全く違うのかのいずれかだな」
「そうね、今のところ駄目だったという事実だけ。それ以外はさっぱり分からないわね」
しばし沈黙。エリナが指先で机をとんとんと叩いた。
「考えられるとしたら……宝箱から出した直後に即座に命名しないと駄目って線は?」
「あり得るな。レンの三体目も確かすぐに名前を付けて<FS2>になっていたんだよな」
「そうよ。だったら“時間遅延”もパラメータにして試してみるといいわね。他にも主従の接触や第三者立会いの有無、名前の反復。その辺りの条件を分解してプロトコル化すれば、因子が見えるかも」
「その意見は分かる。うちでも様々な意見が出ている。しかしな、そこまでやろうと思うとかなり大変なんだ。宝箱1個2000万。しかもそれで使役モンスターが出るとも限らん。そんなパラメータを組んでやっていたら、いくら金があっても足りん。さすがにうちでも無理だ。簡単なところから詰めようと思っている」
「そうね。そこまでの実験は困難か……成功するかどうかわからない実験にそこまでのお金を出すのも困難。私もそこまでの実験できないから判断は任せるわ。でも結果は共有してね」
「もちろんだ。何か分かったら報告する。たださっきも言ったように簡単な話ではなさそうだ。気長にまってくれ」
「分かったわ」
エリナは席を立ちかけて、ふと振り向く。
「そうそう、それと――レンにも伝えておいて。“単に名前を付けるだけでは遷移しなかった”って。あの子が他にもヒントを持っているかもしれない」
「それは同感だな。彼に投げればまた他に新たな仮説の種を持ってくるかもしれん。それが簡単に実験できるようだったら優先することも考えられる」
二人はうなずき合い、そのまま打ち合わせは終了した。
<FS>の謎が解ければ使役モンスターが大きな戦力になる。そうなればダンジョン攻略が変わるかもしれない。
大きな期待はあるが、しかしその謎を解くのも一筋縄ではいかないことも分かった。もっと簡単に実験する方法はないか?大きな見落としはないか?考え込む二人だった。
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