第66話「かつての恋人への連絡」
#第66話「かつての恋人への連絡」
紗月はスマホを握りしめ深呼吸を繰り返していた。さすがに自分が振った相手に連絡をするのは気まずい。
「落ち着いて…ただの確認だけ。レンに伝えるだけ」
そう自分に言い聞かせながら、登録してあった番号に発信した。コール音が続き、やがて聞き覚えのある声が出た。
「……レン、久しぶりね。最近の調子はどう?」
「何の用だ。俺たちは別れたはずだろ」
いきなりの冷たい声だった。紗月は胸がちくりと痛んだがまあ仕方ないとも感じていた。一方的に別れたのは紗月の方だったからだ。それよりも要件を伝えなければいけない。
「ゴメン。でもさ、たまに連絡したっていいでしょ?かつては付き合ってたし…それに幼馴染なんだから」
「勝手だな。一方的に振っておいて」
レンの吐き捨てるような一言に少し苛立ちながらも紗月は本題を切り出した。
「それはそうと…レン、ルナって女の人知ってる?」
「ルナ?どこかで聞いた気はするな。誰だっけか……」
「向こうはあなたのことを知ってるみたいよ。だから私、あなたの連絡先を教えたわ。だから、そのルナから連絡が入ると思うから宜しくね」
「また勝手なことを……まあ分かった。それだけか?」
淡白な返答に思わず唇を尖らせた。
「もう、冷たいのね。久しぶりだっていうのに。それにルナという女性からコンタクトがあったことをレンに教えてあげているのだから感謝してくれたっていいじゃない」
「まあ、そう言えばそうか。ありがとう。でも俺は用があって忙しいんだ。切るぞ――ああそうだ。俺からも言っておくことがあったんだ」
紗月は少しときめいた。レンからも何か連絡事項があるらしい。でもその内容は紗月の想像とは全く異なるものだった。
「俺はひよりと付き合うことになった。だからあまり気軽に連絡してこないでくれ。他の女と連絡を取り合っていると知られたら面倒だからな」
「……えっ、ひよりと?どうして?」
「どうしても何もない。ひよりは俺がしんどい時にずっと支えてくれてたからな。凄く感謝していて……そして俺はひよりのことを好きになった。だから俺の方から告白して今は付き合ってる」
「……そうなの。あなたたちは付き合っているのね。知らなかったわ」
「ああ、そういう状況だからもう気軽に連絡はしないでくれよ。じゃあな」
通話が切れると、紗月はしばらくスマホを見つめたまま動けなかった。
レンとひよりが付き合っている……心の奥に重たいもの、黒いものが広がっていった。
私だけこんなに苦労していて大変なのに、レンとひよりだけは幸せになっている?やるせない気持ちになった。しかもレンはあの有名人のルナからコンタクトがある状況。今は貧乏でも大きく変わるかもしれない。
(レンがひよりと……? 私、もしかして選択を間違えた? でもそんなはずない。レンはあの時に“ずっと1階層でレベル1のまま“、“ゴミ漁り”って呼ばれてた。ハンターとしては底辺で私にはふさわしくないはず)
(もしかして私がひよりに嘘を付いてレンと付き合ったこともばれたかも。でも、さすがにもう時効よね。そんなことで今更怒ったりはしないはず)
紗月は必死にいろいろと今までの選択が間違っていないと自分に言い聞かせたが、胸の奥にぽっかりとした空洞が残ったままだった。
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紗月のひよりに対する嘘って何だっけ?と思った人は第36話「紗月の回想と迷い(紗月視点)」を読み返していただければ幸いです。厳密にはひよりに対しては嘘ではないかもしれませんが。
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