第47話「紗月の憂鬱(紗月視点)」
#第47話「紗月の憂鬱(紗月視点)」
最近の司くんは、やたらといらいらしている。
あれだけいらいらされると隣にいるだけでしんどいし、周りからどう見られているのかと思うと正直ちょっと恥ずかしい。
今日もダンジョンに潜っているが、クラン全体がどこかぎこちない。
3階層でのレベル上げ中、司くんはリーダーとして指示を出していたけれど、その声は怒鳴り声に近い。
「まじめにやれよ!お前らが早くレベル4にならないと上に行けないんだ。俺1人がレベル5でも、お前らがレベル3のままじゃ4階層さえも厳しいんだ!」
……どうしてあんな言い方しかできないのだろう。本当に嫌になっちゃうな。
私も少し勉強したから分かる。
本来なら、誰か1人を決めて集中してレベル4に引き上げ、その人を中心に他のメンバーをレベル4に育てていくのが効率的だろう。レベル5の司くんを先頭にレベル4の人が何人かいれば定期的に4階層の攻略ができる。
現状、司くん1人だけレベル5になって他のメンバーはレベル3。今のクランの状況はいびつだ。
その今の状況を作ったのは自分なのに文句を言うのはおかしいよ。そして文句を言うぐらいならば、司くんが1人で4階層に挑むか他のクランに混ぜてもらって適正の5階層で経験を積めばいいのに。
もしくは私達をレベル4にレベリングしてくれる人に頼めばいい。でも資金がないらしい。すでにクランに1億円以上は使っているとのことだ。司くんのレベリング。そしてメンバーのレベリングなどですでに1億円。更にレベル3の人間をレベル4にするには1人あたり1千万円ぐらいはかかる。すぐにはお金が出ないのも分かると言えば分かる。
でも、そう考えたら司くんがレベリングでレベル5にならずに他のメンバーをレベリングでレベル4にした方が効率が良かったのだろうと思う。自分の見栄で自分だけレベル5にしてクランの成長を止めてしまっているのではないかな?
司くんは計画性がなく、ただがむしゃらに思い付きだけでみんなを動かそうとする。
「もう少し計画的に進めたらどうかな? 例えば、1人をレベル4に上げて、その人を中心に……」1人のメンバーが提案した。
「そんなことは分かってる!だから基本的には紗月をレベル4にするよう動いてるんだろ!」
「それは分かる。でも彼女は先頭に立ってみんなを引っ張るタイプじゃないよ。しかも毎回ダンジョンに潜ってるわけでもないからレベル上げもはかどっていない、それだと効率悪くなるって……もっとやる気のある毎回ダンジョンに来ているメンバーを中心にすべきだよ」
「うるさい!お前は俺のやり方が気に入らないのか?」
また言い合いが始まった。
でも私には何も言えない。巻き込まれれば面倒になるのは目に見えている。
そもそも、メンバーの方が正しいと思う。
私が中心になって引っ張るなんてあり得ないし、司くんだって本当は分かっているはず。
なのに適任でもない私にとどめ役ばかりやらせるから、他のメンバーとの空気もぎくしゃくしてしまう。私までおかしな目で見られているようで最悪だ。私はしばらくダンジョンに来ない方が良いと思うのだけど呼ばれたら仕方がない。しっかりした理由がないと断れない。
後日、司くんの機嫌が良さそうなときに、私は提案してみた。
「他のメンバーとも相談したのだけど、私以外の人を優先してレベル4にしたらどうかな?」
すると司くんの顔色は一瞬で曇った。
「せっかくここまで育ててやったのに、それを無にする気か?お前が早くレベル4になって中心になればいいんだ!」
……はあ。私が中心なんて無理だよ。司くんは頑固すぎる。結局、自分の彼女がレベル4だと誇りたいだけじゃないのかと勘ぐってしまう。
私は毎日ダンジョンに潜るわけじゃないし、そもそもダンジョンの収入だけじゃ生活できないから司くんの会社で仕事をさせてもらって、ようやく成り立っているのに。
他のメンバーも同じ。財閥系企業で働かせてもらって感謝はしているけど、仕事をしながら空いている時間をなんとかダンジョン攻略に使っているのに文句ばかり言われるのはさすがにしんどい。本気で頑張ろうとしている人もこのままでは腐ってしまうよ。
それなのに、司くんは自らは会社で働かずにダンジョンのみ。しかも私たちが会社で働いている時には何をしているかも分からない。遊んでいるだけという声もたまに聞こえる。それなのに文句ばかり。
そりゃ、他のメンバーの不満もたまる。私も含めみんなも財閥系企業で働かせてもらっているから厳しく指摘もできず簡単にはふんぎりも付かないけど……このままでは空中分解してしまうのではないだろうか。
私もそれなりにとは言え仕事にダンジョンにと頑張っている。だから幸せになって当たり前なのにどうしてこうなってしまうのだろう。ほんと嫌になるな。全て捨てて逃げ出したくなることもある。
しかも最近ではお金があまり無いのか、司くんから私へのプレゼントも少なくなってきた。せっかく社長の息子の彼女なっているのに、これではあまり意味がないじゃない。
「……やっぱり、私は付いていく人を間違えたのかな」
ふと考えがよぎる。
今頃、レンはどうしているのだろう。
司くんは社長の息子でそれなりにお金はあるけど人間性がちょっとね……一方でレンはいい人だけど貧乏だったし、私ってやっぱり男運がないのかな。
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