第46話「御影の焦り(御影視点)」
#第46話「御影の焦り(御影視点)」
俺の調査では、結城はいつの間にか新宿ダンジョンの2階層にいるらしい。1階層でちまちまと"ゴミ漁り"していたはずだったのでは?
しかも討伐が順調で、救護活動までしているとか……。
「いまいましい……」
救護活動をして人から良く思われようとしているのか?救護活動なんて偽善だ。人の関心を買おうとするやり口が汚い。そんなことして何になる!自分の貴重な時間を潰すだけだろうに。まさか紗月の関心をそれで買おうとしているのか?
ふん、正々堂々とレベルと実力で勝負しろ。俺はすでにレベル5。結城なんざ、せいぜいレベル2だろう。ただ、そう思っていたのだが――。
どうにも腑に落ちない。あいつは使役モンスターを二体も連れていた。銅箱で2回も中身が出るなんて普通に考えてあり得ない。2千万円相当の金箱を2回開いたと考えるのが自然だろう。
となると……もしかして、まさかすでに結城には裏に金持ちのスポンサーでもいるのか? そう考えると背筋が冷える。結城程度の人間でも金さえあれば簡単に追いついてくるだろう。
いや、さすがにそれはない。本当にそうなら、わざわざバイトなんかしていないはずだ。高校時代はバイト漬けだったと聞いている。
……そうだ! 紗月によるとあいつは両親が死んだとか言っていたな。結城は親の遺産を食いつぶしているに違いない。幼い弟や妹がいるって話だった。その2人の養育費だったのでは?それなのにあんな派手に宝箱を使うなんて最低な奴だ。くず確定だな。
そう考えると全てが納得できる。きっとそうに違いない。結城は実力もなければ人間的にも駄目だ。使役モンスターを2回連続も出してツキもない。やっぱり俺の敵ではないな。
――もちろんレンは遺産を食いつぶしてはいない。そもそも遺産がほとんどなかった。しかし御影はそう思い込むことでなんとか精神的に持ちこたえたのだった。
「くそ、本当に嫌な奴だ。実力を金で買おうとしているだけじゃねーか」
とはいえ現実問題として結城は2階層で既に敵なし状態らしい。救護活動までしているとなるとレベル2ではないかも……もしかするともうレベル3に上がっているのか? そうだとすれば俺とのレベル差はわずか2。危険だ……。
俺もいくら財閥系企業社長の息子で金持ちとは言えこれ以上のレベリングは正直きつい。おやじからは1億円を与えられたがすぐに無くなった。追加の金を要求したが少しは考えろと断られた。
レベル6に上げるとなればレベル7やレベル8の人を雇う必要が出てくる。そうなると下手すれば億単位の資金が必要になる。さすがに現状では無理だ。
少しでも減額するためにある程度は俺が5階層で経験値を得る必要もあるだろうがクランの仲間がレベル3ばかりで5階層は無理。あいつらの活動は3階層がせいぜい、それでは金も全く貯まらない。せめて4階層まで来てくれれば多少は金も貯まり始まるのに。
メンバーは使えない奴ばかりだ。俺の足をひっぱりやがって……。
かといって俺1人で5階層で経験を積むのは難しい。4階層なら何とかなるだろうがレベルアップするにはあまりにも遠すぎる……。4階層は多少は金も貯まるが1人でやっていたら雀の涙だ。
「くそっ……もしかしたら結城がレベル3だと?」
それを――紗月に知られたらどうなる?
結城が紗月と同じレベルになっていると思ったら心が動くかもしれんな。紗月は信用ならねぇ。せっかく金を使っているというのに最近は心ここにあらずなことが多い。
しかし紗月は俺のものだ。俺が結城よりもレベルで上、強さで上に立ち続ければいい。そうすれば紗月はずっと俺に付くはずだ。
でも、もし結城が強くなったと知ったら、もしあいつに興味を持ったら……考えるだけで腹が立つ。
再び結城に合わせる選択肢はもうないな。どうやってあいつから引き離す?とりあえず今後は新宿ダンジョンを外すべきか?
頭の中で答えは定まらない。だが一つだけ確かなのは――。
「紗月は俺のものだ……。結城程度の人間なんかに、渡すもんか」
――こうして御影は知らないうちに焦っていたのだった。その焦りが冷静な判断力を失わせていた。
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