第361話「努力の先に」
#第361話「努力の先に」
クアンとレイラの四階層討伐を少し手伝ってから、数日が過ぎた。俺たち8人はマンションのリビングで、透子さんから二人のその後の様子を聞いていた。
「クアンもレイラもかなり頑張っているね。精力的に四階層での討伐を続けているよ」
「それは良かった」
透子さんがタブレットを操作しながら言う。
「特にクアンが頑張っているね。レンたちに手伝ってもらってから、気合の入り方が違うよ」
「何かきっかけでもあったのかな? とにかく良かったです」
気合いが入るのは良いことだ。今はレベル5を目指しているらしい。明確な目標があるのは強さにつながる。だから張り切っているのだろうね。
俺たちがレベル6ということで先を進んでいるのが大きいかもしれない。目標となれるように俺たちもさらに頑張らないといけないね。
話題は、例の“秘密の戦力”に移った。
「クアンの戦力を底上げしている、あのレア武具なんだけど……こちらでも色々と解析を試したんだ。でも、やはり再現性は見込めそうにないね」
「やっぱりですか」
そして、透子さんの表情が急に変わった。
「状況としては、I国のジュリアのケースと似ている。彼女の場合はレア宝箱に特殊な使役モンスターが入っていた。そして、そのレア宝箱が出る確率は一億分の一という話だった。クアンのレア武具が入っていたレア宝箱も、それに匹敵する低確率の可能性がありそうだよ」
「まあ……そりゃそうですよね。一気に強くなるレア宝箱。そんなに頻繁に出てきたら大変ですよ。世界中で話題になるはず。そうなってないということは、やはり確率はかなり低いということなのでしょうね」
レア宝箱を出す方法が現時点では特に無い。そして、単純に確率の問題ならどうしようもない。地道に次を待つしか無い。ただ、それはそれで大変だ。世界のどこで出るかも分からない。
だが、一つだけ気になる点もある。レア宝箱が出現した状況に共通点があるのだ。
そこで俺は念のために聞いてみた。
「確か、レア宝箱を出した二人とも……大ピンチの時だったんですよね?」
「そうだね。二人ともに、仲間に見捨てられて死ぬかもしれないという状況だったんだよね」
そう、二人共に死んでもおかしくないような厳しい状況だった。その際にI国のジュリア、そしてQ国のクアンはレア宝箱が出現し、奇跡的に救われた。
それは偶然なのか。それとも必然なのか?
「二度とも比較的近いパターンなので、ダンジョン側が、何らかの“配慮”をしている可能性も否定できませんね」
「その可能性はあるよね」
透子さんは同意してくれた。しかし表情がやや暗くなった。再現性のヒントはあっても簡単ではないのだ。
「とはいえ、再現実験のために死にかけるわけにもいかないのだよね。とんだ条件だよ。全く」
「それは絶対に嫌ですね」
俺は即答した。
命があってこそだ。いくらレア宝箱が出るかもしれないとは言え、そんな賭けはごめんだ。
当たり前のことだけど、他人にさせるわけにもいかない。
「ともかく、クアンにとって励みになったのは間違いなさそうだよ。可能であれば、レンたちにたまに一緒に潜ってほしいってレイラが言っていたよ」
「頻繁には無理だけど、数か月に一回ぐらいなら……調整すれば可能かもしれませんね」
高泉首相や大泉防衛大臣とも、数か月に一回、ダンジョンに行く約束となっている。スケジュール管理が大変だけど絶対に無理というほどでもない。
その時、透子さんがふっと意味ありげな目を向けてきた。
「それはそうと……レンは、クアンの気持ちに気づいているのだろう? その辺りは何か考えているのかい?」
「え? ああ……当面はレイラさんと一緒に頑張るってことですよね? それでいいと思いますよ」
「……いや、そういう意味じゃなくてさ」
透子さんがやや言いにくそうにしている。そこで、ルナが口を挟んできた。
「ああ、レンはそういうの全く駄目なんですよ。ストレートに話しないと分からないですよ」
「本当に鈍感だからね」とひよりも追従してきた。
「……二人して何を失礼な」
ひどい話だと思っていると、使役モンスターたちまでも口を揃えてきた。
「やはり、わざと……ではないですよね」ラムが首を傾げた。
「やっぱりレンさんですです」リンが苦笑する。
「まあ、いつもの通りだよね」とロア。
「私もレンさんのことは、かなり分かった気がします」とルフ。
「レンさんはレンさんだからね。それでいいんだよ」とクー。
……なんだ、この疎外感は。俺一人だけ仲間外れの状況?
どうやらみんな何の話か分かっているようだ。そして、俺だけ知らない雰囲気だ。
前にもこんなことがあった気がする。何の話だったかな?まあ、いいか。そんなことを気にしても仕方ない。
きっと、いつかは教えてくれるだろう。それよりも、クアンとレイラが努力を続けていることの方が大事だ。
彼女たちが努力を続け、信頼を積み重ねれば。いつかきっと拘束具が外れる日が来るだろう。
そうすれば本当の自由だ。そうなってくれるといいと思う。もちろん、簡単な話ではない。まだまだ先の話だとは思うけれどね。
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