第315話「共感」
#第315話「共感」
俺たちは五階層攻略の途中で高泉首相に呼び出され立川駐屯地へ向かった。そしてI国の秘密戦力と対面した。
ジュリアが主人、ステラが使役モンスターということだ。ステラは人化できるので人間とは見分けがつかない。その辺りは俺たちと同じだ。
ただしステラが決定的に俺たちと違うのは、宝箱から出た時点で外界適応済み、人化可能、高い知能を持っていたということだった。
スタート地点がまるで違う。そしてステラがこちらを見て言った。
「(凄いです。五体もの使役モンスターが外界適応済み、人化可能なのですね)」
そこで俺が代表してステラの質問に答えた。
「(はい。二体がレベル6、三体がレベル5です。もうすぐ二体が6になります)」
ジュリアが小さく呟く。
「(凄い……やはり私たちでは全く勝てないです。でもどうやってそこまで強くなれたのでしょうか?)」
褒められて悪い気はしないね。どうやって強くなったのかと質問されたけど、答えは単純だ。
「(武道を取り入れて、毎日ダンジョンで積み重ねました)」
強くなる方法に秘密というほどのものはない。毎日の鍛錬しかないのだ。そしてダンジョン外では何らかの武道を習った方がいい。
そこでステラが頷いた。
「(なるほど……私たちはまだ甘いようです。現状ではダンジョンで目の前のモンスターを倒すのが精一杯なのです)」
そこで俺も気になることについて聞き返した。外界で力を保持できるのが使役モンスターのステラだけなのか?
それとも主人にあたるジュリアはどうなのか気になったからだ。
「(ジュリアさんも外で力を維持できるんですよね?)」
「(はい、私もダンジョン外でおかしな力を使えます。最初は力加減に戸惑いました。レベルが上がるたびに困りました)」
思わず笑った。同じ悩みだ。俺たち以外にも同じ悩みを持つ人がいるというのは初めてなので新鮮だ。なんともおかしくなってつい笑った。
「(俺たちも同じです。最初は本当に怖いですよね)」
「(同じ悩みを持つ人は初めてです。少し安心しました)」
ジュリアも笑った。やはり俺と同じように感じたらしい。ほっとしているように見える。
そしてドキッとした……その笑顔が可愛い。
ただ、そう思っていたのがバレたのか?視線が痛い。
ルナとひより、そしてラムたちのジト目になっているような気がする。なんで分かるんだろう?不思議すぎる。
とにかく危ない危ない。注意しないとな。
そう思っていたらルナが話題を変えてくれたので助かった。非常にありがたい。
「(ステラのFSはいくつですか?)」とルナ。
「(FS7です。これは最初から変わっていません。他の使役モンスターはFS1らしいですね。その点も戸惑っています。私にとってはこれが普通ですから)」
FS7ということはラムとリンと同じだ。
ルナが頷く。
「(こちらのラムとリンもFS7。ただしFS1から一つ一つ積み上げました)」
ステラが目を丸くする。
「(一から育てた……ということですか?)」
「(はい。ただし、それができたのは日本でもレンだけです。彼は本当に特殊、他の人も研究で同じようなことをしようとしていますがまだ<FS2>までです。ほぼ再現できていません)」
「(やはりクレイジーですね。普通ではないと思います)」
俺だけ特殊という言葉に反応したのかジュリアとステラが同時に笑った。うん、まあ、おそらくだけど……褒められてない気がする。でもまあいいか。
その後も話は続いた。
彼女たちの悩みはレベル5へのレベルアップが困難なことだった。レベル4まではレベリング主体で何とか上げたらしい。
だがその次のレベル5が遠い。
実戦力が足りないのだ。
武術を取り入れては?と話すと、
「(その方法は聞いてはいます。ただ相手になる人間がいなくて)」とジュリア。
なるほど。
俺たちは弱い時からルナに叩き込まれた。
しかしレベル4で外界でも同じ強さを保持するとなると人間では太刀打ちできない。当然のことながら実戦で武道を教えることができる人間はいないだろう。
もちろん型を教えることぐらいはできるが、それだけで強くなるのは厳しいと思う。強くなるには実戦も必要なのだ。
俺たちは一歩一歩の積み重ねで強くなった。少しずつ実力を上げた。一方で彼女たちは“完成状態からスタート”したようなものだ。そこからの上澄みは厳しいだろうと思う。だから伸び悩む。
その解決方法はかなり難しいと思う。俺たちのような存在が指導できればいいのだけど日本とI国ということで普段は違う国にいるので、それは難しい。
まあ無理にやるとすれば、レベル5以上の人とダンジョン内で模擬戦をして鍛えてもらうしかないかな。
そこで、その後は軽く模擬戦をした。やはりジュリアもステラも外界適応済みと言うことでそこそこ強い。
だが——
まだレベル4だ。差は歴然だ。実力差もあるかもしれないが、それ以前にどうにも埋められないレベル差がある。さすがに戦いにならない。
ロマーニ首相が驚いた。
「(ここまで差があるとは……)」
誇る場ではない。でもこれが現実でもある。レベル差による実力差は基本的には絶対だ。これはどうにも仕方ないことだ。
その後、話は思わぬ方向へ進んだ。
ジュリアとステラが俺たちのマンションで一泊することになったのだ。いろいろと話もあるだろうということで配慮してもらった。
使役モンスター側の部屋を使ってもらう。そして、明日は半日、俺たちのダンジョン活動を見学してもらう。
一日だけの共同生活だけど、面白い一日になりそうな気がするよ。
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