第311話「両国の秘密戦力」
#第311話「両国の秘密戦力」
日本の高泉首相と、I国のロマーニ首相。二人は、ほぼ同じ結論に辿り着いていた。
——相手国と情報を共有すべきだ。
それは、来るべき“更なる大規模氾濫”への備えになり得る。
高泉は考えていた。仮にレンたちでもどうにもならない敵が現れたら——?
それはI国も同じ考えだった。
自国の秘密戦力でも対抗できない存在が現れたら——?
利害は一致している。
だが、それだけで話が進むほど甘くはない。お互いにどうしても腹の探り合いがある。そこに見えない壁があるかのようだった。
しかし、二人の女性首相が直接会ってからの話は早かった。次々と会談の概要が決まっていく。完全非公開で記録なし、そして護衛も退席。完全な一対一のトップ会談が始まった。
先に切り出したのはロマーニ首相だった。共に理解できる言語にて話は進んだ。
「(我が国には、ダンジョン氾濫に対抗する“秘密の戦力”があります)」
高泉首相は眉をわずかに動かした。いきなりの宣言でびっくりしたということもある。
「(それを私に告げる意図は?)」
ロマーニ首相は笑顔で高泉に答えた。
「(あなたならすでに我が国に秘密の戦力があることは分かっていたでしょ? 腹の探り合いはやめて情報を共有しましょう。日本にも特殊な戦力があるはずです)」
I国のロマーニ首相はいきなり最上のカードを切ってきた。信頼の表れでもある。もちろんそれは危機感の表れでもあるが。
そこまで覚悟しているならと高泉は静かに息を吐いた。
「(……分かりました。日本にも特殊な”秘密の戦力”があります。ただし完全なトップシークレットです。国内で知る者は二十名に満たない。当然、国外で知るものはいません)」
「(それは我が国も同じです。我が国におけるトップシークレットです。我が国で知るものは私と防衛大臣、軍のトップ、そして研究者と本人のみです)」
そうして情報共有が進んだ。まず最初に最低限の条件が交わされた。
この情報は両国トップのみで共有するということだ。
お互いに、現状よりも秘密の公開は進めない。仮に進める場合は必ず相手国の許可を取るということになる。
基本的に文書化もしない。ここで話することは合意の発表もしない、最上級の機密扱いで他国にも伝達しない。
そうして、一呼吸して高泉首相は語った。
それはレンという少年についてだった。特殊な方法で使役モンスターを育成。その数は五体。そのうち二体はレベル6、三体はレベル5だ。
そして、その使役モンスターは主人と共にダンジョン外でも同等の力を発揮できる。だからこそレベル3のモンスターが氾濫しても即座に対応できる。
ロマーニは視線を上げた。
「(……私たちの”秘密の戦力”に内容は近い、ただし、我が国より確実に日本の方が上の戦力ですね)」
そして、ロマーニ首相はI国の切り札について語り始めた。それは今はレベル4になる使役モンスターについてだった。
レンたちと近いと言えば近い。ただしその生まれ方や育て方は全く違った。
I国の秘密の戦力である使役モンスターは、宝箱から出現した時点で外界適応済み、すなわちダンジョンの外に出れる存在だったのだ。
更には人化可能、高い知能も有していた。
それは極めてレアなパターンになる。
その使役モンスターによれば、中身のある宝箱一億個に一つレベルのケースとのことらしい。
そして、それ以外にその宝箱の出現条件は全く分からない。あくまでも稀に出てくる超レアケースということしか分かっていないとのこと。
次に、いつ出てくるかどうかも分からないレベルの気の遠くなるような話だった。当然、再現性の確立も無理な話だ。
そして、使役モンスターを出した主人のハンターと共に鍛錬を積み、現在はようやく共にレベル4に達したとのことだ。
ただ、現時点でも頑張ってはいるがそこからのレベル上げに苦労しているとのことだった。
それはそうだろう。レベル4ともなれば日本でもトップ、プロレベルの人材になる。普通の人間ならばそこに達しただけでも凄いことだ。
とは言えダンジョンの氾濫に備えようと思ったら心許ないのも事実だ。現状のレベル3の氾濫ならば何とかなるが、それ以上の氾濫になると厳しい。
「(現状では、レベル3のモンスター氾濫までならば対応可能です。ですが仮にレベル4のモンスターの氾濫になると厳しい。その点では日本の現状がうらやましいですね。まだ余裕があるように見えます)」
最初にロマーニ首相の話を聞いた時に、高泉首相は驚きを隠せなかった。レアな宝箱の存在など聞いたことがなかったからだ。
日本の場合、すなわちレンのケースは宝箱出現条件については裏技を使ってはいるものの、普通の金箱だ。
レンは使役モンスターを特殊な条件で育てた。一方でI国のケースは使役モンスター自体が最初から特殊だった。
「(そのような事例は日本にはありません。初めて聞きました。日本の場合、全てはレンという個人の頑張りによるものです)」
高泉首相は、そこでレンの手法や現状を、更に詳細に説明し始めた。
それは逆にロマーニ首相にとっても初めての話であり驚愕するものであった。
いつも読んで頂いてありがとうございます。毎日12時ごろ、20時頃の2話投稿を限界まで続けていく予定です。
ブックマーク、評価ポイント、レビュー、いいね、感想などもしていただけると励みになるかもよ?
その他、何らかの頑張れパワーをいただけると更に頑張れるかもです!
べ、べつに何も無くても頑張るけどね、、、 (^O^)/




