第308話「鹿部町での違和感」
#第308話「鹿部町での違和感」
司は裏組織の依頼で北海道へ向かうことになった。ただし一人ではない。
反政府デモで声をかけてきた女の子も同行することになった。彼女の名前はエリ、ただしそれは本名ではなく組織で使っている名前だ。
彼女の同行は司の希望だった。一人で北海道に行くのはさすがに心細い。そこで依頼の話を聞いた時に、駄目もとでエリを同行させてくれとお願いしたのだ。
OKの返事をもらい有頂天になった。
できれば彼女との距離を縮めたいと思っていたからだ。
正直なところ……司は最初に出会った時の腕を組まれた感触が忘れられなかった。
……かなり、でかい。この手で早く触ってみたい。かなり仕事もこなしたし、そろそろ許されてもいいではないか?
よし、この旅行中に落としてやろう。それは無理でもエリとの仲を進展させよう。
そんなゲスな計画を立てていた。
裏組織も知り合いの女の子を同行させて欲しいという司の要望を聞いてすぐにその狙いは分かった。まあ、あからさますぎる。
それでも「まあそれくらいはいいだろう」と許可したのだ。
もちろんスケベな男を勧誘する専門の組織の女だ、そんな簡単に落とせるはずもないという判断が働いていた。そして別に落とされても構わない。
場合によっては責任問題で御影グループに金をふっかけてもいい。もちろん、まだその時ではないので頭の片隅に入れただけであるが。
そして、現実にそのエリを落とすことは簡単ではなかった。
司は会うたびに声を掛けた。しかしエリは付かず離れずうまくあしらった。
近づけば距離を取り、離れれば少しだけ寄ってくる。そんな状況に司はやや苛立っていた。
そしてエリの視点でも司の狙いはバレバレだった。一度でも許せば横暴になる男は何人も見てきた。司もその類だとエリはすでに見抜いていたのだ。別にそういう仲になってもいいが、面倒なのは嫌だという損得勘定で動いていた。その辺りはさすがにプロだ。
そんなことも知らずに、司は仕事の依頼でエリと同行できると知って上機嫌になっている。
しかも飛行機では隣同士。手を出しては弾かれたが今回の旅行中になんとかしてやると内心ほくそ笑んでいた。
そうして現地に到着。
外国人が来るまでは自由な日々になる。そこで司はエリに提案し函館へ向かった。
夜景、食事、観光。
司は「これは……今夜こそはいける」と思っていた。だが夜になると状況はいつも同じ。
今日こそは、とホテルの一室で距離を詰めようと話しかける。しかし気付けば、自分の方が先に眠っている。
なぜか強烈な眠気に襲われるのだ。
もちろん、彼女が仕込んだ薬のせいだ。
だが司は全く気が付かない。
自分が酒に弱くなったのか?ぐらいに思い込んでいる。少しずつ酒の量は減らしてなんとか眠らないようにしたつもりでも寝てしまう。
疲れのせいか?などと能天気に考えていた。
そして数日後。
大国A国から来たという外国人チームが司たちに合流した。司はもう少しと思っていただけに、がっくりきたが仕事なだけに仕方がない。彼らを案内することにした。
最初の調査は駒ヶ岳ダンジョンになる。
スパイたちは英語で会話していた。
「The dungeon looks normal(ダンジョンは普通に見えるな)」
「Yes. There was probably flooding, but you can't tell from inside(ああ。氾濫はあったのだろうが、内部からは何も分からんな)」
司には意味が分からない。
「おお、本当に外国語だ。さすが外国人だぜ」
その程度の感想で流していた。次に向かったのは鹿部町の被害地域。そこで、スパイたちは明らかに表情を変えた。何かがおかしい。
「This is strange.(これはおかしい)」
「Well, recovery is progressing, but the scale of the damage doesn't match the announcement(ああ、復旧は進んでいるが……被害規模が発表と合わない)」
建物は大きく壊れ、地面は抉れている。
すなわち、見る限りそれなりにモンスターがいたはずだ。しかし、それは圧倒的な力で一掃されたのだろう。
その一方で、銃撃戦の跡はほとんどない。どうしたらこんな状況になるのか?想像もできなかった。
「There's no way something of this magnitude could be contained in such a short time.(この規模を、短時間で鎮圧できるはずがない)」
「Heavy weapons… no traces. Something else did this.(重火器の痕跡はないな、何者かがやったはずだが)」
彼らは確信した。
これは小規模ではない。大規模氾濫だっただろう。
そして、その大規模な氾濫は……それ以上の力で圧倒的かつ一方的に制圧された。
だがそれは軍隊の銃撃ではない。何か別の力。理解できない存在による鎮圧。そこに完全な証拠はない。だが十分だった。そして、何枚か写真を撮った。
「Report it.(報告するぞ)」
その状況だけでも十分に価値がある。
数日の調査の後、スパイたちは司たちに礼を言い、帰国した。一方で司は何も分かっていない。
「楽な仕事だったな。同行するだけで金がもらえるラッキーな仕事。こんなのばかりだったらいいのにな」
そう呟くだけだった。
自分が世界規模の疑念の火種を生んだ現場にいたことも気付かずに。
一方でエリの方は外国人の会話を理解していた。圧倒的な力でモンスターが倒されたという話。
しかしダンジョン氾濫関係の専門家でもないので、それ以上のことは分からない。裏組織の上層部には伝えておこうとだけ考えていた。
日本政府としては何とか痕跡を消そうと努力はしていた。しかしさすがにそこまで早くに痕跡を完全に消すことができなかった。
そして多くの町民を避難させたままにしておくことも困難。生活圏に戻したことも復旧に時間をかける要因になってしまっていた。
またあやしい外国人の入国もチェックはしていたがさすがにインパウンドで多くの外国人が入国することもあり全部を把握するのは不可能。
その隙をいくつかの外国人グループにとがめられた形だった。
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