第31話「裏技の件」
#第31話「裏技の件」
「そういえば……彼のもう一つの話はどう思う?」
コーヒーカップを机に戻しながら、朝倉明人がふと思い出したように問いかけた。
「もう一つ?」
「同じレベルかそれ以上のモンスターを、連続で1万体倒すと金箱が確定で出るというやつだよ」
「ああ、それね。そう言えば彼にはその話もあったわね」
エリナは軽く鼻を鳴らした。
「ただ……正直なところ、私たちのレベルになると、もう関係のない話なのよね。普通に戦っていれば金箱は自然と出る。わざわざ裏技なんて使わなくてもね。そして武具3種が出たら後はお金に変えるだけだし」
「確かにそうだな。高レベルの人間から見ればどうでもいい話だよな」
「でしょ?レベルが低いハンターにとっては魅力的かもしれないけど、私たちみたいな上位ハンターにとっては、面倒なだけで試す価値すらない話よ」
「1年以内に同じモンスターを1万体?正直、気が狂うレベルの作業よね。そんなこと絶対にやりたくないわ」
「ところが彼は半年足らずでやってのけたそうだよ」
エリナの眉がわずかに跳ね上がる。
「レベル1だったとは言えかなり大変な作業よね……本当に変な子ね。確かに普通じゃない。とは言え、それについては脅威というより“変わったやつ”ってだけね。現時点では特に危険も感じないわ」
「つまり、裏技に関しては今のところ何の脅威でもない?」
「ええ。情報として持っておく価値はあるけど少なくとも脅威ではないわね。誰もが積極的に使える手でもないし、公表もしないほうがいいわ。低レベルのハンターが群がって変に事故るのが目に見えてる。そういった面倒ごとは避けた方がいいでしょ」
「それもそうだな。こんな情報を出したら低レベルハンターの事故が頻発しそうだ。了解した。裏技の件は当面、ハンター協会の公務員側での非公開情報として伏せておこう。理由もあるから何かの時に表に出ても言い訳が可能だ」
エリナは頷き、話を続ける。
「それと、その辺の守秘義務も含めて彼とは何らかの契約を結んでおいた方がいいと思うわ」
「やっぱりそう思うか」
「ええ。彼、お金には困ってるみたいだし契約そのものは通ると思う。ただ、彼はクランに属さず1人でやりたいみたいだから、拘束しすぎない“研究協力”みたいな形がベストね」
「なるほど……縛らないかわりに、重要情報は共有してもらう形か」
「そう。使役モンスター関連の情報をもらったり他には漏らさないと秘密契約をする代わりに資金提供。あまり大きな金額だと協会の方で不自然に思うでしょうから無理のない範囲でね」
朝倉は小さく笑った。
「君はこういう時、妙に現実的だな」
「何を言っているの?私は基本、現実的で合理主義者なのよ。だからこそハンターとして生きていける」
「そうだな。よし、その線で準備してみる。契約案はこっちで練ってみるよ」
エリナは満足そうに頷き、立ち上がった。
「今度こそもう話は終わりよね。じゃ、私はそろそろ戻るわ。次に会うときは彼がどこまで伸びてるか楽しみね」
「ああ、じゃあな、今回はありがとう」
彼女は去っていった。そして朝倉は静かに窓の外の空を見つめながら考え込んだ。
「彼とは契約するとして……今後、化けるのか、それとも? 他にもバックアップすべきか? 何か見落としているところはないのか?」
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