第288話「帰還と反省会」
#第288話「帰還と反省会」
北海道鹿部町にある駒ヶ岳ダンジョンで氾濫が起き俺たちは討伐に向かった。結果だけを言えば――あっさりと完了した。想定していた以上の結果とも言える。
もちろん街に多少の被害は出た。だが函館方面に展開した迎撃線にモンスターが到達する前に全て掃討できたのはかなり大きいと言えるだろう。
もしかしたら現地の自衛隊員にとっては肩透かしのような感じになったかもしれないけど、それは許して欲しいところだ。
俺たちはモンスター討伐の任務を終え、そのままヘリに乗り帰還することになった。そして機内は不思議と明るかった。行く時の緊張感のある空気とは全く違う。
緊張が解けたせいだろうか。実行部隊の岩崎さんが軽く笑いながら言ってきた。
「レン、ありがとう。完璧だったぞ」
実行部隊の神谷さん(女性)も褒めてくれた。
「本当に強かったよ。あの戦闘は凄かった」
実行部隊の森さんも思い出すように話しかけてきた。
「俺たちも打ち漏らしがあれば倒すつもりだったが……心配は無用だった。あの強さは本当に頼もしいよ」
俺は少し苦笑した。
「ありがとうございます。でも……」
「正直、無我夢中でした。本当はもっと落ち着いて動けるようにならないといけませんよね。まだまだ未熟だと思います」
岩崎さんは首を振る。
「いや」
「今回の討伐は最上の出来だ。何の問題もない。その状況で反省点が出てくる方がむしろ頼もしい。たいしたものだ」
そして岩崎さんは少し間を置いて、続けた。
「さすが短期間でレベル6に到達したハンターだな。ハンター業界でもトップレベルなだけある」
俺は肩をすくめた。褒められ慣れていないからね。
「ダンジョンの方も、毎日反省ですよ」
「それにうちはルナが凄いし、みんながしっかりしています。俺がリーダーではありますけど……実質的にはルナや他のメンバーがリーダーみたいなものです。俺はいつも助けられているだけで」
その言葉に横からルナがすぐに反論してきた。
「何を言っているんだ、レンは相変わらず馬鹿だな」
「うちはレンがリーダーだからこそ回っているんだ。みんなレンに全幅の信頼を置いている。仮に私がリーダーだったらそうはいかない」
「リーダーは強いだけでは駄目なんだ。何よりも信頼が大切だ」
真剣な目でそう言われると、少し照れくさい。
そして周りを見ると、ひよりは当然のように頷いている。使役モンスターのラムもリンも、ロアも、ルフも、クーも――全員が同じ反応だ。
……そうなのか?
実行部隊の神谷さんが笑う。
「大したものだね。すごい信頼がある。チームとしても完成度が高いよ」
高槻さん(女性)も同意するように言ってきた。
「私もそう思うよ。リーダーは信頼されるのが一番大事。うちの実行部隊のリーダーは岩崎さんでしょ。あれがまた大変で」
その一言で、機内がどっと笑いに包まれた。
岩崎さんも苦笑しながら苦情を言い出した。
「お前ら、そんな風に思っていたのか!」
そうすると更に爆笑が起こった。いつもは怖そうな岩崎さんだけど、岩崎さんのキャラが分かったような気がする。
でも――
こうやって冗談を言い合える空気があるということは、きっといいチームなのだろう。そして風通しの良いチームなのだろう。リーダーの岩崎さんが抑えつけるだけだとこうはいかない。
ふと思い立って、俺は聞いてみた。
「逆に、自衛隊の特殊部隊から見て、俺たちに何か要望はありますか?」
少し考えたあと、情報分析班リーダーの白石さんから答えが返ってきた。
「変装パターンは増やした方がいいだろうね。毎回同じだとばれやすいと思うよ」
「おそらく当面は大丈夫。でも同じ変装パターンを繰り返すのはやはり危険かな。撮影され、SNSに上がる可能性は常にあるわけだからね。それが同一人物とみなされたらどうしても特定されやすくなる」
確かにそうだ。
今回は人口の少ない町で、しかも住民の多くは避難済み。だから大きな問題にはならない可能性が高い。とは言え、それでもどこかの建物内に人がいて、そこから撮影された可能性も否定はできない。
その点を伝えると、安心させるように答えが返ってきた。
「SNS監視部隊が常時チェックしている。それらしき動画が上がれば、すぐに対応する。一応は二重三重の対応はしているから基本的には安心して欲しい」
すでに対策は取られているらしい。
「とはいえ、こちらでも工夫は必要か……」
変装パターンを増やす、露出を減らすなどの工夫は常に考える必要があるだろうね。
戦闘だけが課題ではない。
ヘリの振動の中で俺は他にもいろいろと考えた。今回はたまたまうまくいったけど今後は1分1秒を争う可能性があるだろう。
そう考えるともっと細かく考える必要があるかもしれない。ダンジョンから外に出るまでの時間、そこから緊急車両に行くまでの時間、それぞれ短縮できる可能性がある。
俺たちにできることは山ほどあるだろう。考えれば考えるほどに反省点、改善点は出てくる。
それでも――
今回の討伐は成功だ。達成感が、機内に満ちている。
とりあえずは喜ぼう、そしてこの空気を忘れずに次につなげていきたいと思う。
強くなるだけでは足りない。信頼も、工夫も積み上げていこう、そう強く思った。
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