第207話「国家レベルの依頼」
#第207話「国家レベルの依頼」
俺、ひより、ルナ、そして使役モンスターのラム、リン、ロア、ルフの7人が朝倉さんのオフィスへ集まっている。
そこにエリナさんと透子さんも加わって総勢10人。かつてひよりと2人でここに来ていた頃を思うと、なんとも感慨深い人数だ。
そして最初はいつもの現状報告だったが、話題はとうとう陣馬高原ダンジョンの氾濫の件へと移った。朝倉さんがやや緊張した面持ちで質問してきた。
「陣馬高原ダンジョンから反乱したモンスターを倒したのは君たちで間違いないね」
「はい。その理解で間違いありません。今回の戦闘では主にリンが倒しました。緊急だと思ったので特に連絡もせず俺の判断で対応しています」
朝倉さんの質問の言葉に一瞬だけ緊張した。でも俺は素直に頷き、できるだけ落ち着いて答えた。モンスターを討伐したのは間違いなく俺たちだ。多くの人を救ったはずだ。間違ったことではない。
しかし何か問題があると言われるのだろうか?身構えていたのだが、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「ありがとう。君たちのおかげで多くの人が助かった。本当に感謝している」
と朝倉さんは告げてきた。そして更になんと頭を下げてきたのだ。
もしかしたら何か問題視される可能性もあるかなと考えていたので、逆に拍子抜けしてしまった。それどこか、まさか頭を下げてくるとは思いもよらなかった。
「いえ、当然のことをしただけです。当たり前のことですから」
そう返すと、朝倉さんは静かに首を振った。
「いや、そうでもないんだ。力のある者ほど勘違いする。力を持つと権力を欲するものも多い。見返りを求める。そして時には、その力を間違った方向へ使ってしまうこともあるんだ」
「だが君たちは違う。何ら見返りも求めず、その力を正しい方向に使っている。誇るべきことだよ。間違いなく君たちは多くの人を救った。本当に素晴らしいことだ。私は感謝しても仕切れないと思っている」
胸が少し熱くなった。俺たちが現場判断で勝手に動いたが全く間違っていなかったのだ。正しいことをしたとはっきり言ってもらったのはありがたい。
続いて、朝倉さんは重大な事実を告げてきた。
「この件は、すでに高泉総理と大泉防衛大臣に直接、報告させてもらった。君たちに確認せずに伝えたのは緊急性が高かったからだ。そこは許してほしい」
えっ?
首相と防衛大臣に直接伝えただって?
俺の思考が一瞬止まる。そんなレベルの話だったのか……。というか朝倉さんは偉い人だと思っていたけど、首相と大臣と直で話できるほどに凄い人だったの?最近は結構フランクに話していたけど大丈夫?
「いえ、当然でしょう。緊急なら仕方ないですよ」と緊張しながらもなんとか返した。
「だから、この秘密を知っているのはここにいるメンバーと、総理、大臣だけだ。他に知っている人はいないはず。なので絶対にそれ以外に漏らさないでほしい」
「それはもちろんです。私達から情報を漏らすことはあり得ません」
その言葉に朝倉さんは安心したように頷いた。でも、それはもちろんのことだ。これだけの大きな話が世間に漏れればパニックになるだろう。そして俺たちは確実に日本中から注目されることになる。これまでのように平穏な生活を送ることはできなくなるだろう。だからこそ変装までして対応しているのだ。
情報が漏れたら最悪は悪い人間に狙われる可能性もあるかもしれない。俺たちから外に情報を漏らすことはあり得ない。そこは安心して欲しいところだ。
そう考えていたら更に朝倉さんからは衝撃的な言葉が続いた。
「総理と大臣は、君たちを“日本の切り札”と考えている」
「切り札ですか?」
まさか日本の切り札とまできたか。本気で総理と大臣はそこまで考えてくれているのだろうか?
でも、今の日本の状況ではそう思われても仕方がないのかもしれない。モンスターが地上に出てくると自衛隊でも厳しい相手だ。それを難なく討伐できる使役モンスターの存在は大きい。
そして、もし今後、仮に複数のダンジョンが同時に氾濫したら自衛隊だけではとても対応しきれないだろうと思う。そうなると俺たちに要請が来るのは自然なことだろう。自衛隊よりも実力も機動力があるという意味では頼られるのも当然かもしれない。
「だから、今後は総理もしくは大臣から直接依頼が来る可能性がある。それも覚えておいてほしい。何らからの形で直接の連絡網が作られるかもしれない」
「分かりました。心にとめておきます」
なんとも重い話になってきた。でもここまで日本のトップから期待されているのであれば逃げるわけにはいかない。要請を受けたら基本的にはやるしかないだろう。
もちろんその内容や条件にもよる。一方的な都合で簡単に身勝手に利用されてはたまったものではない。やはり基本的には自衛隊で対処してもらいたいところだ。
俺が対応する際の条件などについて何らかの返事をしようとした時、朝倉さんは更に続けた。
それは俺を更に驚かせる内容だった。
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