第201話「首相と大臣の本音」
#第201話「首相と大臣の本音」
朝倉と首相の高泉、大臣の大泉の3人の会合が終わった。
重い扉が閉まり、朝倉が部屋を去る。
静まり返った会議室には、2人だけが残された。
「……順二、どう思う?」
「どう思うと言われてもな。早智子こそ、どうなんだ?」
首相と防衛大臣という立場にありながら2人は昔からのハンター仲間だ。肩書の壁を越えた旧友であり戦場を共にくぐり抜けた戦友。
恋愛感情などは一切なく互いを信頼する関係にあった。2人きりの時はこうやって名前で呼び合う仲だ。
「正直、理解が追いついていないわ」
「ああ、その気持ちはよく分かる。俺も全く同じだ」
それは2人共に本音だった。
使役モンスターが多くの人を救った。とんでもない話にまだ現実感がない。
そもそも“使役モンスターを実戦投入する”――そんな発想自体、今までの常識にはなかった。2人にとっても完全に常識外の話。
そもそもハンターは自分のレベル上げでも精一杯なのだ。
経験値を他者に渡すのは信用している仲間だけ。仲間であっても相手の態度によってはわだかまりが残ることもあるぐらい。
――ましてやモンスターに経験値を譲り育てるなど、ありえない。ハンターとしてそれなりに頑張ってきた2人でも思考の外にあった概念だった。
「まずはFS遷移で知能が上がる……だから共闘が可能になった、ということか」
「そうね。一緒に戦って、共にレベルアップした結果、更に信頼関係が生まれたのでしょうね」
高泉は腕を組み、ゆっくりと天井を見上げた。彼女自身も宝箱から使役モンスターを出した時もあった。その時は正直「外れ」と思った。何も考えずに自由に動き回る使役モンスターの様子を見て呆れた。ペット動物よりも知性がないようにも見えた。すぐにスロットに入れてそのまま封印したのだ。
そんな使役モンスターと一緒に戦う姿を想像しようとするが、どうにもしっくりこない。どうやったらあんな使役モンスターと共闘できるというのか?更にはどうすれば1万体も討伐させてレベルアップさせることなどできるのか、全く想像も理解が追い付かない。
でも現実には上手に育てれば画面に映っていた女性のようになるらしい。それまでレンという青年は何を考えて使役モンスターを育てたのか?あまりにも不思議だ。
他人の思考を読むことについてはそれなりの能力があると自負していた高泉であったがさっぱり理解できなかった。
しかし、そうして育った使役モンスターのレベル5、そしてFS6――ダンジョンの中での強さのままで外の世界に出られる存在。
その言葉の意味を思うと背筋が冷える。
「彼は善人そうだからいいけれど……悪人が同じ力を得たら日本は終わりね」
「ああ。国家どころか、世界の秩序が崩壊するかもしれないな」
2人の間に沈黙が落ちた。
やがて大泉が低く言った。
「俺は『何故黙っていた』とつい声を荒げたが、朝倉が情報を伏せていたのは正解だったな。もし漏れていたら――大混乱だったろう」
「そうね。凄いファインプレーよ、褒めるべきね。これが一般の会議で出た話だったらとんでもないことになっていたでしょうね。収集が付かなくなるわ。よくぞ私達だけに情報を上げたと賞賛したい気持ちよ」
高泉は少しだけ笑みを浮かべ続けた。
「でも……希望も見えてきた気がするわね」
「確かに。彼らがいれば日本の防衛力は間違いなく上がる。今のレベル5の段階でも氾濫したモンスターをあっさりと討伐するあの実力だ。それがレベル6、仮にレベル7にもなれば日本の防衛力は世界のトップになるだろうな。どのような氾濫でも対応することができそうだ」
大泉はタブレットに映るレンのデータを見つめた。
年齢も若くまだ成長途中で彼もレベル5将来有望、そして同等の戦力の5体の使役モンスター。しかも使役モンスターはその戦力のままに外に出て戦える。
この戦力――恐ろしくもあり、頼もしくもある。
「ダンジョンの研究予算は増やしておくべきだな。そう朝倉に伝えてもいいか?」
「ええ、同感よ。FS遷移の謎が解ければ信頼できるメンバーで秘密部隊を作ることができる。そうなればモンスターの氾濫も恐れることはないわ」
高泉が続けた。
「ただ、彼自身への監視はどうするつもり?」
「……彼自身への監視はやめておこう。ほぼ常時、使役モンスターと一緒にいるらしい。レベル5の能力を持つとなれば感知能力も高い。監視すればすぐに気づかれるだろう。逆効果だ」
「そうね。なら彼の親族は? そのデータを見る限り弟と妹がいるのでしょ」
「ああ、そこは監視と護衛が必要だな。彼の弟と妹にはそれとなく護衛を付ける。情報が洩れ、何らかの形で人質に取られたら大変だ」
2人は小さく息を吐いた。
誰もが未知の事態に手探りで挑んでいる。
それでも――最後に高泉が静かに言った。
「……結城蓮、通称レン。彼が日本を守る鍵になるかもしれないわね」
「ああ、今後ダンジョンンが更に活発化するとなると彼に頼るしかないだろうな」
重苦しい会議室の中で、2人の声だけが静かに響いた。
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