第2話「隕石の夜と、現実がゲームになった日」
#第2話「隕石の夜と、現実がゲームになった日」
最初は、ただの火球か、流れ星の一種かと思っていた。だけどそれは明らかに違った。どれだけ遠くにあるのか分からないがとんでもない轟音を出していた。その音と光が次第に大きくなり、多くの人がパニックになっていた。他国からのミサイル攻撃では?という声も聞かれた。
その後、光は夜空を引き裂くように走り、燃えるような尾を残しながら枝分かれし、地平線の彼方へと落ちていった。その数刻後には大気が大きく揺れた。そしてわずかに遅れて耳に届いた衝撃音の連続が俺の心臓を握り潰すように鳴った。
どこかにとんでもない何かが落ちた。あれは隕石だろうか?恐ろしいことが起こった。その時に分かったのはそれだけだった。
翌朝。テレビもネットもその話題で持ちきりだった。
「世界各地で隕石が確認されました。映像を見て分かる通り落ちてきた隕石が途中で崩壊し枝分かれして落下。各地の被害は軽微とのことですが、エネルギー観測史上最大級の放出があったとみられています。今のところ津波は観測されていませんが、念のため海岸沿いの人は高台に避難してください」
専門家たちは頭を抱えていた。およそ6600万年前にも、直径10キロの小惑星が地球に落下した。その時は恐竜が滅亡するほどの惨劇だったのだ。
今回はそれよりも明らかにエネルギーの放出が大きい。ならば確実に世界は崩壊する方向に向かうはずだ。これまでになかったほどの規模の地震や大津波、天候変動も起きるはず。しかしその兆しは全く見られない。地球の科学では説明できない何かが起こっているのではないか?そう説明する専門家も出てきた。
どう考えても今回の落石はおかしい。被害が少なすぎる。そして、誰もが口をそろえて言っていた。
「“あれから何かが変わった”気がする」と。
その“変化”は、すぐには目に見えなかった。専門家も全く分からなかった。けれど、静かに、確実に、俺たちの日常を侵食していった。
最初、いくつかの地点で地面に穴が開いているのが観測された。入り口は数人が入れる程度と小さいのに、中は広く測量しても中の構造が分からない。超音波などで調べても分からないのだ。どこまで広く、そして深く続いているのかもはっきりしなかった。
隕石が落ちた影響ではないかと言われた、その不思議な“異空間”を専門家はそれを「ダンジョン」と呼んだ。まるでゲームの世界だ。
更にゲームと共通していたのが――その中に入った調査隊たちが「モンスター」と遭遇したという証言だった。
それからは軍や警察、専門の調査機関が動き出した。その頃には、すでに世界中に似たような「ダンジョン」が多数、発生していたことも判明した。
次にどのような変化が起こるのか全くの未知数。ダンジョンからモンスターがあふれ出てくるかもしれない。人々は恐怖した。
だが、ここで世界は一度“変化を終え踏みとどまった”ように見えた。そのダンジョンの中にいるモンスターが外に溢れ出すことはなかったのだ。どうやらモンスターがダンジョンが安息地のようだ。人々はそれを聞いて安堵した。
しかし、次のニュースに再び驚愕することになった。内部に入った調査隊の何人かが命を落としたのだ。モンスターに残忍にも殺されたのだ。
聞くところによるとダンジョン内部では物理法則がおかしくなっており火器類の使用ができないとのことだ。機械類もスマホや通信機程度が使える程度で武器になるものは使えなかった。
そのためモンスターに対抗するにはナイフ、鈍器など原始的なものだけ。単純な殴り合いとなってしまったのだ。
パワーのあるモンスターには人間は太刀打ちできず殺されたという。その一方で倒したモンスターからは稀に“宝箱”と呼ばれる謎の物体が出てくることも分かった。
しかしながらその“宝箱”の中身はほとんどが空だった。そして時たま“武具”、“モンスター”、“財宝カプセル”の3種類が出てきた。
それは一部の人間にとっては既視感のある内容だった。
そう、それはかつて俺が夢中になった『ダークファンタズム・オンライン』などのゲームと類似していたのだ。
それと、近いシステムだったのだ。『ダークファンタズム・オンライン』と違うのは“財宝カプセル”という財宝が入ったカプセルが出るということのみ。
「まさかな……」
思わず、俺は口にしていた。
まさか、ゲームと同じような世界が、現実に起きるなんて。
現実のニュース番組が、宝箱のランクやドロップ率を解説している。
それに加えて政治家は「宝箱購入制度の規制を」とか言い出している。どうやら一部の金持ちがすでに宝箱を買い占めていて政治的にも勢力を拡大しており危惧しているようだ。
とどめを刺した者に経験値が入るという仕様も、最初は都市伝説扱いだったが、次第に「本当のことだろう」と言われるようになっていった。
経験値の有無自体は証明できなかったがレベルアップは体感で分かったのだ。一定数のモンスターを倒すと急に力が湧いてくる、そんな証言が数多く見られた。
そして現実にレベルアップした人の身体能力が飛躍的に上がっていたことも確認された。
更に、ダンジョンに入ると自分のステータスだけは見れることが分かった。経験値も数値として確認され現実のものと判断された。
強いモンスターを倒しレベルアップした人達は更に強くなりより上位のモンスターを倒していく。その人達はハンターと言われ英雄視された。
ハンターが人類がモンスターに対抗する、世界を守る唯一の存在となっていった。
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