第188話「要請に対する方針」
#第188話「要請に対する方針」
俺たちは朝倉さんから横須賀ダンジョンのモンスターの反乱は世界各地で起きている問題だと聞いた。
そして今後は同じような問題が他のダンジョンでも起きる可能性がある。その対策として俺たちにも様々な要請が入る可能性があるらしい。そこで俺たちは今後の方針を決めるべく話し合いをすることにした。
マンションに集まったのは、俺、ひより、ルナ、ラム、リンの五人(3人+2体)。
定期報告の直後ということもありみんなの表情にはまだ緊張の余韻が残っていた。
ニュースでは隠されているが、世界中でダンジョンの異常が起きている――そう知らされた後では無理もない。
俺はため息をつきながら語り始めた。
「……大変なことになっている。俺は全く考えていなかったけどルナは薄々感付いていたんだな」
ルナが腕を組んでうなずいた。
「ああ、薄々感じてはいた。でもまあ、正直なところはやっぱりという感じだな。当然と言えば当然だろう。今まで1~3階層の討伐だけでなんとかなっていた方が不思議なんだ」
「私は全く気づかなかったよ……」とひよりが小さく言う。その肩がわずかに震えていた。ひよりにだけは知らせないようにした方が良かったのかもしれないな。なんだか申し訳ない。
少し間を置いて、俺は本題に入った。
「まず、もし要請があれば3階層の監視には協力しようと思う。みんなはどうだ?」
ルナは即答した。
「当然だ。これはハンターとしての使命、義務でもあると思う。やるべきだろう」
ひよりも頷く。
「うん、私もやるべきだと思う」
良かった。これは俺はやるべきだと思っていたが反対意見がでたらどうしようかと思っていた。みんな正義感が強い。ありがたいことだ。
しかしルナが続けた。
「問題はもうひとつの方だ。――ダンジョンの外に出たモンスターの討伐、だな。これをどうするか?当然、現状の私達では無理な話だ。ラムとリンにお願いするという話になるが」
俺は視線をラムとリンに向けた。
「……受けるかどうか、俺は正直なところ迷っている。というか、俺はできれば受けたくはない」
その時リンがまっすぐな目で言った。
「私は受けたいと思うですです」
「なんでだ? そこまでする必要はないぞ。危険な話なんだぞ」
「今のこの世界を守りたいです。せっかく外に出られるようになったので」
リンの言葉に、ラムも静かに頷いた。
「私も同じ気持ちです。この世界を守りたいです」
「……二人とも偉いな。この世界、人類のためにそこまで考えてくれるなんて」
そう言うと、ラムは首を横に振った。
「違います。全てはレンさんのためです」
「えっ、俺のため?」
「モンスターが外に出れば世界が混乱し、レンさんも危険になります。だから、守りたいのです。正直なところ他の人はどうでもいいです。もちろんひよりさん、ルナさん、透子さん、樹、葵は守りたい対象ですけどね」とラムは答えた。
ありがたい言葉だった。だが同時に胸が痛んだ。
「……でも、危険だ。お前たちに無理はさせたくない」
「大丈夫です。映像を見ましたがあれぐらいなら軽く倒せますです。全く問題はありませんです」とリン。
隣のラムも自信ありげにうなずく。
どうやら、あの自衛隊でも手を焼いた3階層のモンスターでさえ今の二人にとっては全く相手にならないらしい。
さすがはレベル5、5階層相当の実力者といったところか。
そこにルナが口を挟んだ。
「でも、外に出て戦うなら身バレが問題になるな。私も経験していることだがやはり面倒だぞ。仮に外に出たモンスターを倒せる人間がいるとの話になれば私どころの騒ぎではない。世界中から注目を浴びて引っ張りだこになる。もう普通の生活は送れない。自由は全く無くなるぞ」
そうだよな。ラムとリンが人化した姿とは言えそのままで戦うのは問題だろう。そのままの姿だとすぐにばれる。そしてここに住んでいることまですぐにばれるだろう。
「たしかに……ゴーグルを着けて、髪を染めるとかでごまかすか?サングラスぐらいではばれそうだよな?ゴーグルとかは視界が悪くなりそうではあるけど」
「ああ、最低限、それぐらいはやらないと駄目だろう。あとは服装とか身につけるものとかも気を付ける必要があるだろうな」とルナは軽く笑った。
ルナは有名人だから外出する時にはそれなりに気を配っているらしい。ラムやリンが外に出てモンスターと戦うとなると凄い注目を浴びる。なるべく見られないように戦うとしても限界はあるだろう。その対策はしっかりとやらないとまずい。
もちろん戦うと決まったわけではないが、そうせざるを得ない状況も出てくるかもしれない。予め考えておく必要があるだろう。
ひとまず方針は決まった。要請があれば3階層の監視には参加する。
討伐依頼については――まずは保留とした。一応は前向きには考えてはいるが。
ラムとリンは“楽勝”と言うが、俺の中ではまだ整理がついていなかった。
ダンジョンの反乱が現実に起こりつつある今、俺は何を守るべきなのか。
力があるものが守るのは当然という理屈があるのは分かる。でもそのために自分の大切な使役モンスターを犠牲にする可能性があるならばそんなことはやりたくない。
迷っている。でも、その答えを出す猶予はもうそれほど残っていないのかもしれない。
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