第147話「ルナ流実戦稽古」
#第147話「ルナ流実戦稽古」
ルナが俺たちのダンジョン討伐に本格的に参加することになった。
それに伴い、しばらくのあいだ道場での稽古はお休みとなった。ダンジョンでレベルアップに集中するためだ。
それが良いのかどうかは分からないなと思っていたら、ルナ曰く「ダンジョンそのものを稽古の場にする」とのこと。そっか、やっぱり稽古は続くのね。
俺とルナがそれぞれリーダーとなり、レベル4のラムとリンを1人ずつ、そしてレベル3のひより、ロア、ルフ、クーを2人ずつ振り分けた。
これで4人ずつ、2組に分かれて活動する体制だ。
目的はシンプル。――レベル3の4人を、全員レベル4まで、できるだけ早く引き上げること。
「ダンジョンでも稽古で行ってきたことを意識するように」
そうルナに言われた。
「それは当たり前だろ? 稽古でやっていることを実践でも使っているぞ」と返した。
俺はいつもの稽古で学んだことを実践でも生かしている。真向斬り、足運び、袈裟斬り、連撃など全て稽古で学んだことだ。それでかなり良くなった。
でも、どうやら彼女の言う“稽古”の意味はもう少し深いらしい。
「他にやるべきこともある。まずは敵の動きをなるべく細かく読むこと。こちらの動きに対して相手がどう動くのか? 敵は直感で動くことが多いから毎回同じとは限らないが、ある程度はそれぞれのモンスターで傾向がある。それが分かってきたら討伐が早くなる」
「なるほどな……数はこなしているからおよそのパターンは理解しているつもりだけど、もう少し注意して見てみるよ」
確かに、4階層までに出てくるモンスターの動きは感覚的に読めるようになったけど細かい分析まではしていない。きちんとパターンに落とし込めれば討伐は早くなり効率が良くなる。
4階層以上は混成部隊だからな。雑魚を早く討伐することが鍵になる。ルナの言う通り、動きを読めればより深層での戦闘にも応用できそうだ。
「モンスターは直感的に動くがそれでもフェイントにひっかかる場合もある。やはり急所に近い攻撃、視線を奪われる攻撃などを嫌うケースもある。そのパターンはモンスターの種類によって違うから覚えた方がいいだろう」
「なるほど、その辺りも意識するといいな。それも何となくはわかっているつもりだったけど分析することでより明確になるかもしれない」
さらにルナはもうひとつ付け加えた。
「あとは攻撃の正確性を上げること。よく言われるところの"寸分違わない攻撃"もできるようになった方がいい。敵の急所を、動きながらでも正確に狙えるようになるのが理想だ」
「……急所?」
「そう。相手によって違う。肘、膝、首、背の関節、もしくは頭、目、口、心臓など。ただ私達にとって3階層は稽古のようなものだから急所狙いじゃなくてもいい。たとえば腕の一点、肘を寸分違わず打てるように意識するといい。1cmもずらさないようなつもりで」
俺は思わず笑った。
「いや、それはさすがに難しいだろ」
「だから稽古なんだ。あと分かりやすすぎてもいけないからな。1点を狙っているのがバレバレだと反撃を受けやすい」
……まさに“スパルタ”だ。モンスターの特徴をしっかりと理解、1cmも違わない攻撃、その攻撃を相手に悟られないようにすることなど意識すべきことが多くなった。1つでもやることが増えると混乱する俺に3つも要求するとかちょっとひどい。
そうして軽いミーティングが終わり3階層での討伐が始まった。
今日の俺のチームは、俺・ラム・ルフ・クー。もう一組は、ルナ・リン・ひより・ロア。
もちろん固定ではなく、数日ごとにローテーションを組む予定だ。
俺はレベル4で4階層で討伐を進めてきた。3階層のボア相手ならば4階層のウルフに比べて動きも遅く余裕がある。
ルナの言葉を思い出しながら、敵の動きを観察して、肘の一点を狙って打ち込む。
だが、やってみると難しい。数cmどころか10cmぐらいは普通にぶれる。自分も動いているし相手も動いている。そこで寸分違わずとかさすがに無理では?
狙い過ぎると自分の動き自体もぎこちなくなるし威力も落ちる。自然にできるようになるまでは遠そうだ。なるほど、確かにこれも稽古みたいなものだ。
そう思いながら、俺は何度も繰り返した。
ラムも俺と同じように意識しているのだろう。肘などを正確に攻撃し相手を弱らせて、ルフとクーがトドメを刺していく。俺とラムにとっては楽な敵。かなり効率が良い。
ルフもクーも、一日でおよそ200体近くの討伐をこなした。
<<やるじゃないか、2人とも>>
<<私はもっと頑張れるわよ! まだまだいけるわよ!>>
<<俺だってもっといけるぜ!>>
元気いっぱいの2体に自然と笑みがこぼれてきた。
――かなり順調だ。
このペースなら、2か月もしないうちにルフもクーもレベル4に到達するだろう。全員がレベル4になれば、ついに4階層でのレベリングが本格的に始まる。
その日が来るのが、今から楽しみで仕方がない。
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