第142話「再始動(御影司視点)」
#第142話「再始動(御影司視点)」
くそ……。
俺の極秘情報網によると、レンとルナが接触しているらしい。
あの二人、どちらもレベル4なのにすでにレベル5以上相当の実力とまで言われている。
まさか、本当にレンがレベル5になるのも近いというのか?
――レンの野郎、とうとう俺に追いついてきやがったな。
いや、違う。あいつは卑怯な手を使っているに決まっている。確かオレオレ詐欺の元締めとかだったはずだ。貧乏だったあいつが金を持っているはずがない。犯罪に手を染めているはずだ。
おそらく今に捕まるだろう。ルナもエリナと同じように、あんなやつと一緒に転落するとも知らずに……ほんと見る目がないな。
今からでも俺と組みたいと言えば仲間に入れてやるというのに。動くなら今のうちなんだがな。
まあ、そんなことはどうでもいい。今は自分のことの方が大事だ。クランの立て直しが先だ。リーダーに戻る必要がある。佐藤なんかに任せておけるものか!
しかし良い案が全く浮かばない。今はコロナで休んでいるから状況もよく分からない。俺は再び、御影グループの執行役――鷹見に相談した。
「司さん、コロナで休んですでに一か月近くですか。体調は大丈夫ですか?」
「ああ、多少はよくなってきたがまだいまいちだな。社会人になって今まで精力的に働き過ぎたということも原因の1つだろう。しっかり療養しておくよ」
鷹見は苦笑していたが俺にとってはどうでもいい。
診断書なんて書かせるだけの話だ。世の中の仕組みを知っていれば簡単なこと。
“コロナの後で体調を崩す”なんてのは一般的な話であり珍しくもない。さすが俺、情報通だ。何でも知っている。
まあ実際に体調が悪いような気もするからな。完全に嘘でもない。ここが重要なポイントだ。ちょっと熱っぽいし関節が痛いような気もするし、だるいような気もする。これで完璧だ、それを診断書にそれっぽく書かせればいい。これで誰も困らない。みんなが幸せならば多少のずるは問題ない、それでOKだ。
鷹見は俺の相談に少し考えて今後の動きについて提案してきた。
「とりあえず……さすがにクランの放置はまずいでしょう。そのまま離脱したとして追放される可能性もあります。代理を派遣してはどうでしょうか」
「どういうことだ? 人を雇うなんて金がかかるだろうが。俺は数百万円とか出せないぞ」
と返すと、鷹見は静かに笑った。
「そうですね。月15万円程度あれば十分かと。今のクランの状況なら、レベル4相当でくすぶっている者を一人当てがっても問題ありません。3階層での活動なら十分こなせるでしょう」
意味が分からなかった。レベル4の人間でも雇えばそれなりに金がかかるだろう。15万円程度でやる人間がいるのか?でも、話を聞けば納得した。
要はレベル3で3階層をギリギリこなしている今のクラン連中を支援する役としてレベル4の人間を雇うという話らしい。
4階層でレベリングするならばレベル5以上相当の実力が必要だが、3階層ならレベル4でも全く問題ない。
しかも1日数時間の拘束で5000円程度――そんな条件ならやる奴は山ほどいるという。
「レベル4の人達にとっては3階層は危険も少ない。そこそこ楽して稼げるから人気だとか。一般的なレベル4は4階層で1日中頑張ってもリスク込みで2万円ですからね。安全に数時間で5000円、楽な方を選ぶ人間も多いですよ」
……なるほど、なんとも向上心のない連中だ。それではクズとも言えるのでは?
やはり今のハンターどもはその程度。俺の足元にも及ばない。
とはいえ、問題は金だ。月に15万円、1か月だけならともかく毎月となるとかなり痛い――俺にはその金がない。いや、貯金を崩せばなんとかなるか。
鷹見は続けた。
「まずは1か月だけでも構いません。その間に状況を整えればいいでしょう。おそらく、今のクランの状況だとその人材がいないと困る状態になります。となると2か月目以降はお金は会社が出してくれる可能性があります。もちろん出してくれない可能性もあるので次の手も考えておく必要はあるでしょうが……」
なるほど、うまくいけば2か月目からは会社から金が降りる。そうなれば、自然と案を出した俺がクランを掌握できるというわけだ。
その後は俺がそいつとでクランを仕切ればいいだろう。もちろんうまくいかない可能性もあるが少なくとも1か月の時間を稼げるのは大きい。
――さすが鷹見、よく分かっている。
最終的に俺がリーダーの座に戻れるならばそれでいい。臨時で人を使うくらい構わん。
よし、その案でいこう。
月15万円など安い投資だ。俺のポケットマネーで出してやる。今は収入がないからちょっと痛いけどな。それは仕方がない。必要経費だ。
「でも、その人選はどうするんだ?」
「人選は任しておいてください。伝手はいくらでもありますので」
やはり鷹見はなかなかやるな。使えるじゃないか。俺が社長の座に付いたら出世させてやろう。
ふっ……見ていろよ、佐藤。
お前が調子に乗っていられるのも今のうちだ。
この俺、御影司が――必ずお前を引きずり下ろしてやる。
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