第134話「リーダーの迷い(佐藤君視点)」
#第134話「リーダーの迷い(佐藤君視点)」
僕はクラン『エクリプス』のリーダーになった。
あの御影君が外され、代わりに任されたのだ。ちょっと有頂天になった。
しかも今は、会社でも有名な石動さんがバックについている。責任は重いけれど、ここで結果を出せば確実に評価は上がる。
凄いクランを率いているリーダー。そうなれば地位も名声もお金も自由になる。少し前までは御影君がリーダーで、夢を現実にするのは厳しいだけだと思っていたけど……その夢がある世界が戻ってきた。
(……やるしかない)
そう思ってリーダーとしてみんなを引っ張っていきたい――けれど、どうも上手くいかない。何が悪いのだろう。僕はこんなに頑張っているのにみんなが付いて来てくれない。
みんな何を考えているの?
以前は、御影君が怒鳴り散らして、それに反発するように皆が奮起していた。
けれど今は、あの緊張感が全くないように感じる。どうしたのだろう?
確かに全員が時間通りに来て、最低限の努力はしている。
でも――がむしゃらさが、ない。どこか気が抜けている。緩んでいるといっていいだろう。
(このままではまずい。みんなを奮起させよう!)
「みんな、頑張ろうよ! このままだと目標に届かないよ!せっかく司くんが抜けて僕ら中心のチームになったのだから頑張ろうよ」
そう声をかけると、メンバーの一人が苦笑して言った。
「でもさ、計画書の通りやるとなると今俺らが頑張るのって全て佐藤くんのレベル上げのためでしょ? いくら頑張ってもトドメは佐藤くん。今は俺たちには何の得もないんだよ。そりゃ、頑張りたいとは思うけどさ、俺らの気合が入らないのは当然だと思わない?」
ぐっ……何も言い返せなかった。
確かに今は、僕のレベルアップを優先してもらっている。みんなの頑張りが全て僕の経験値になっている状況だ。現時点ではみんなに何の恩恵もないのは事実。
みんなが支えてくれている立場で、強くは言えそうにない。
「まあ、以前の御影君の時よりはいいけどさ。俺たちも多少は見返りがないとやってられないよ。それに怪我したらもともこもないからね。安全運転も必要だよ。あまり根を詰めすぎるのは怪我の元だよ。余裕持ってやっていこうよ」
「大丈夫、僕がレベル4になったら、みんなのレベル上げを優先するから! 今は一生懸命に頑張ろうよ」
「それっていつになるのさ? 佐藤くんだってレベル4まではまだまだ先でしょ? 頑張る気はあるけど、今は正直テンション上がらないよ。リーダーなんだから俺たちの気持ちも分かるでしょ」
痛いところを突かれた。確かにみんなの気合の入らない理由は痛いほど分かる。分かるだけに何も言えない。
言葉に詰まる僕を見て、別のメンバーがつぶやく。
「一応、御影君は俺たちをレベリングでレベル3まで引き上げてくれたからね。佐藤くんはまだ何も結果を出してない。何もしてくれない。俺たちだけに求めるだけじゃ正直、キツいよ」
(うう……それも言われると辛い)
「それに、肝心な御影君はどうしたの? リーダーなら御影君を呼んでこないと駄目じゃない? 彼がいないと佐藤くんのレベル上げも進まないでしょ? それをしないで俺たちだけに頑張れって言うのは違うんじゃない? 最低限のリーダーの仕事をしてから言ってくれないとね」
確かに、その通りだ。
でも――御影君は、ずっと姿を見せない。一応、スマホで連絡はしているが既読スルーの状況だ。現状は手詰まり。
そこで僕は紗月さんに相談してみた。
「紗月さん、御影君がどうしてるか知ってます? 最近姿を見せないのだけど?」
「なんで私に聞くの? 私は司くんのお目付け役じゃないわよ。自分で直接聞けばいいじゃない。それじゃリーダーの自覚が足りないと思うよ。しっかりしてよ」
もっともな返しだった。
でも、少しくらい協力してくれてもいいのに。これじゃ僕がリーダーの意味が全くない。でも役割分担を決めたわけでもないので紗月さんの言うことにも一理ある。何も決めてないなら押し付けること自体が間違っている。
そう思っていると、紗月さんがため息をついて言った。
「まあ、一応私も気になって連絡は取ってるから教えるけど……どうも病気みたいよ。コロナらしいわ」
「コロナ……」
「だからみんなから距離を取ってるみたい。それが理由ならば当然よね。診断書ももらうって言ってたから、届いたら確認してね」
数日後、診断書が届いた。
医師名の印もあり、PCR陽性の記載。
どうやら本当に病気らしい。
(仮病じゃない……のか。ならば仕方がないよね。僕は疑ってばかりでリーダー失格だ)
そうなると、ダンジョン攻略はしばらく停滞する。
メンバーは気が緩み、僕の声も届かない。
(僕はどうしたらいいんだろう……)
リーダーとしての自信が、少しずつ削れていくのを感じた。みんなが僕の言う通りに動いてくれない。気合をいれようにも反論されるだけでどうにもならない。現実にみんなの反論が事実だからどうしようもない。
そして紗月さんは文句は言いながらもきちんと冷静に動いてくれている。やるべきことはやっている。口だけで何も結果を出していない僕とは大違いだ。
彼女が弱っていたら声をかけて奪うことも可能かも?とか思っていたけど、とんでもないな。奪うどころか、今の僕のほうがよっぽど弱い。僕にはリーダーという肩書きだけしかない。現実には立場も弱いかもしれない。
駄目だ。このままではクランがうまく回らない。リーダーとして、何をすべきなのか――答えが出ない。
でも、このままでは終われない。
(……やっぱり、石動さんに相談するしかないか)
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