第131話「若き執行役の策謀」
#第131話「若き執行役の策謀」
御影グループの若手のホープ、鷹見翔(たかみ しょう・32歳)はやや焦っていた。
これまでそれなりの結果は出してきた。大きな成果を上げたこともある。だがその裏でポカも多く、周囲の評価はどうしても分かれていた。
堅実に成果を積み重ねている石動と比べられるとかなり分が悪い。その差は広がる一方でこのままでは埋めようがない。
これは日本の悪い面でもある。どうしても着実に成果を出した人間が評価されやすく、チャレンジした人間の評価はあまり高くならない。そして逆に失敗は過大に問題視される。
とは言え社長や石動は鷹見をかなり高く評価していた。異例の出世をさせたのもそのためだが鷹見はそこまで評価されていると感じていなかった。
(何とかしなければ……俺はこれ以上は上に行けない)
そう考えていた矢先、彼の視界に飛び込んできたのは、石動と並んで歩く社長の息子――御影司だった。なんで石動と一緒にいる?
調べてみると、どうやら石動は司の相談役を務めているらしい。
司のクラン運営は目も当てられない惨状。だからこそ石動が付けられたということだ。
――石動に任せても駄目なら、社長も諦めがつく。そのための“最後の切り札”という感じかなと鷹見は考えていた。
それにしても調べれば調べるほどひどい。これが本当に社長の息子なのかと疑いたくなるレベルだった。
(だが、逆にこれはチャンスかもしれないな。石動が手を焼いているクランを俺が立て直せば、一気に評価が覆る……とは言え今はタイミングが悪い。俺が動いてうまくいったとしても石動の評価になるだけだ。まずは司に実際に会ってみるか)
決意した鷹見はまず司に接触することにした。
「どうも司さん。御影グループ会社の執行役を務めている、鷹見翔と申します」
突然の挨拶に、司は面倒くさそうな表情を浮かべた。
「執行役? 鷹見? 俺になんの用だ?」
「はい。石動が相談役に付いて勝手に動いていることでかなり不満を持っていると聞いたもので。少し気の毒に思い確認させていただければと」
「ああ、石動には不満だらけだ! まるで俺を無能のように扱いやがって! この前は俺をリーダーから引きずりおろしやがった。あいつはとんでもない奴だ」
「分かります。石動は頭が固い。定石通りでしか動けない堅物です。天才タイプの司さんはさぞ苦労していることでしょう」
司の声は荒かった。
「うん? 俺が天才だと。お前は話が分かるじゃないか。 だよな、リーダーってのは指示を出すだけでいいはずだろ? なのにあいつは俺に何でもやらせようとする。本当に理解できん! しかもメンバーどもは石動の味方ばかり。薄情な奴らめ!」
(いや、それは当たり前だろう。リーダーが動くからこそメンバーも動く。そんな考えでメンバーが付いてくるはずもない。社長の息子とはいえ、ここまで無能とは……ちょっとひどすぎる。さすがに演技じゃないよな?)
鷹見は内心で呆れながらも、にこやかに応じた。
「それは大変でしたね。せっかく司さんは能力があるのに、石動は頑固者ですから、その能力を潰しにかかる。さぞやりにくかったでしょう」
「そうだ! 分かってくれるか!俺の気持ちを分かってくれるのはお前だけだ!」
司は機嫌を良くしたように笑う。だが鷹見の目には、その姿は滑稽にしか映らなかった。
(噂はさすがに誇張されていると思ったが実際に見て確信した。こいつは本当に駄目だ。変に知恵を与えれば暴走するのは目に見えている。……だが、それを利用して石動を失点させるのは1つの手だな。ただしカードを簡単に切るのはもったいない。1つの失点ぐらいでは石動の優位は動かない。失点させるならばこれ以上ないくらいの問題を起こしてもらわないとな)
話を更に詳しく聞くと司自身はレベル5、そして他のメンバーはレベル3ばかり。なんともバランスの悪い。
「だから俺は外部から人間を呼んで下の人間を引き上げようとしたんだ!それなのに石動は俺が動けという。おかしな話だ」
「そうですよね。外部の人間を効率良く使うのはリーダーの権限でしょう。それに反対するなど、石動は本当に頭が固い」
(はぁ、本当にこいつはどうしようもない馬鹿だな。自分が動けばいいだけなのに、それをアドバイスする人間を批判するとかどうしようもないクズだ。石動が言うのは当たり前の話なんだがな)
今、アドバイスするのは簡単だ。でも司にまともな助言をしても意味が無さそうにも見える。そして仮にアドバイス通りに動いても石動の功績になるだけで意味がない。
それよりも、司の愚かさを逆手に取り、石動を追い詰める――その方が自分の得になるだろう。しかしそのカードも上手に切らないと大して効果もない。
(しかし……あの社長から、なぜこんな無能な息子が生まれたのか)
鷹見はふと苦笑する。
世の中の二世は大抵ボンボンで会社を潰すという。司もその典型なのだろう。会社の社長は有能とは言え息子にはどうしても甘くなってしまうものだ。こんなに近くにその実例がいることにびっくりしつつもそのひどさに呆れた。
少なくとも次期社長の器ではない。社長自身もそれは理解しているはずだ。さすがにこんな馬鹿を社長に据えるようなことはしないだろう。
(さて……どう料理してやるか)
目の前で満足げに語る御影司を眺めながら、鷹見は心の中で冷たく笑った。
ここまで無能なら操作は簡単だ。ただ、どの方向に導けば最も自分の利益になるのか――それが難題だった。
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