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自己満足の涙

作者: 多之 良世

 僕のじっちゃんが死んだ。ちょうど高校のための準備を始めた頃だった。


 じっちゃんはここ数年は軽いボケがきていた。自分の名前はわかる。家族の名前もわかる。でも今が何時かなんてわからない。昼か夜かなんてわからない。自分がいつ食事をしたのかなんてわからない。


 ばっちゃんがいなくなってから。それから。


 最近では耳も遠くなって、会話するのも嫌だった。いちいち大きな声で話すのが面倒だった。


 昔は映画館に連れて行ってくれたし、公園にも行った。楽しかった。


 でも、もう何を聞かれても、首だけで返事してた。そんな素っ気ない返事でもじっちゃんは嬉しそうに人懐こく笑ってた。


 母ちゃんもじっちゃんの介護には疲れてた。



 葬式の日、僕は泣いた。もうじっちゃんに逢えないんだ。そう思うと悲しくて悲しくて。


 じっちゃん、ごめんね。最後の会話も首で返事しちゃった。なんでもっと言葉で話さなかったんだろう。僕の頭にはあの人懐こい笑顔が浮かんでいた。


 涙は止まらなかった。鼻水をすすってもすすっても止まらない。


 でも、僕はふと思った。


 僕は、じっちゃんという人間を失って、悲しんでいるんじゃない。


 僕は、僕の後悔のせいで泣いているのだ。この涙は自己満足の涙なんだ。



 そう思うと、僕は一気に涙が止まった。そしてわかった。


 そうだ。そんなもんなんだ。後悔しなきゃいいんだ。後悔しなきゃいいんだ。


 後悔しなきゃ、涙は出ないんだ。


 泣いていない人は後悔してないからなんだね。


 そうか。


 母ちゃんも殺したことには後悔してないんだね。

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