弱者ってかわいそーう(嘲笑)
ミィナは、ユティリアの神戯に関するデタラメな情報を流した。
「ユティリアは、他人の神戯を奪う能力を持っている」
「彼女に触れられた者は、能力を吸い取られてしまう」
そんな根も葉もない噂が、瞬く間に学園中に広まった。ミィナは、この噂によってユティリアが孤立し、ノインも彼女から離れていくと信じて疑わなかった。
だが、現実はミィナの想像とはかけ離れていた。
ユティリアは、噂を気にすることなく、いつも通りノインと一緒にいた。
それどころか、噂を聞きつけたノインは、ユティリアの隣から片時も離れなくなったのだ。
「ユティ、大丈夫か? オレが守ったるからな」
ノインは、ユティリアの手を握り、真剣な眼差しでそう言った。ユティリアは、そんなノインの様子に、クスクスと笑う。
「んはは、ありがとうノア。でも、わたしは大丈夫だよ」
ユティリアの言葉に、ノインはさらにユティリアに密着した。
「あかんな、他のやつにユティを奪われるかもしれへん」
「うーん、そうだね。じゃあ、ノアに『独占』してもらおうかな?」
二人の甘いやりとりに、ミィナは歯噛みするしかなかった。
ユティリアは、ミィナの仕掛けた噂話を逆手にとり、ノインとの関係をさらに深めていたのだ。
ミィナの企みは、ユティリアによって完全に無力化された。それどころか、ミィナはユティリアによって、さらに深い絶望の淵に突き落とされることになる。
ユティリアは、ミィナの父親の盗聴器から得た情報を、理事長を通して公安に提出した。
ミィナの父親は、神戯売買の主犯として逮捕され、ミィナ自身も、事件への関与が疑われ、退学処分となった。
ミィナは、すべてを失った。
ノインに愛されるという夢も、学園での人気者という地位も、そして、父親という後ろ盾も。
ミィナは、何もかも失い、学園を去ることになった。
彼女の瞳には、もう狂気も憎しみもなかった。あるのは、ただ虚ろな光だけ。
(どうして……どうして、こうなったの……)
ミィナは、そう呟き、二度と学園に戻ることはなかった。
◇◇◇◇◇
「憐れだねぇ。欲しいもの全てを求めた結果、結局何も手に入らず、元より持っていたものさえ失うなんて……んははっ、弱者ってかわいそーう」
「ほんまその通りやわ」
ノインは、ユティリアの言葉に同意しながら、彼女の髪を指でくるくると巻きつけた。
ミィナの事件は、二人の関係をより強固なものにした。
ユティリアは、もう誰にも、ノインを奪われる心配がない。ノインも、ユティリアの隣にいることが当たり前になっていた。
「ノア、なんか甘えん坊になった?」
ユティリアがそう言って笑うと、ノインはフッと口元だけで笑った。
「ユティが、オレのそばから離れへんからや」
ノインは、そう言いながら、ユティリアの首に顔を埋めた。甘い香りが、ノインの鼻腔をくすぐる。
「……ユティ」
「んー?」
「好きやで」
「知ってる」
ユティリアは、そう言いながら、ノインの頭を撫でた。ノインは、ユティリアの優しさに甘えるように、さらに顔を埋めた。
そんな二人の様子を、クラスメイトたちはもう驚きもせず、生暖かい目で見守っていた。




