第6話
次の日の朝、陽の光が窓から差し込んできた。
村は静けさの中で目覚め、鳥のさえずりや風の音が、どこか心地よく感じられる。
だが、俺の心はその静けさとは裏腹に、昨晩の出来事が頭の中を巡っていた。
村長に再び会うため、俺は朝食を済ませてからその家へ向かった。家の周りには、すでに村人たちが仕事に出かける準備をしている。
だが、昨日の黒衣の人物のことを考えると、誰もが何かを気づいているような、そんな気配を感じてしまう。
村長の家に到着すると、昨日と変わらぬ静かな佇まいが迎えてくれた。
村長は、窓辺で外の様子を眺めていたが、俺の姿に気づくとすぐにこちらに振り向いた。
「おはよう。昨晩のこと、何か分かったか?」
村長の言葉に、俺は少し考え込んだ。
昨晩見た黒衣の人物たちが一体何をしていたのか、その真相をつかむ手がかりは得られなかったが、確かに不審な点は多かった。
「昨晩、あの黒衣の人物たちを追ったんですが、何をしているのかは分かりませんでした。ただ、彼らが会話していたようですが、その内容までは聞き取れませんでした。どうやら、村に害を及ぼすようなことはしていないようですが、まだ慎重に見守る必要がありそうです」
村長は黙って頷き、しばらくの間、考え込んだように窓の外を見つめていた。彼の目には、村を守りたいという強い決意と、同時にこの状況に対する不安が交錯しているように見えた。
「分かった。だが、気をつけてくれ。あの者たちが本当に何者か、誰も知らない。もしかしたら、何か裏があるのかもしれん。少なくとも、これ以上の情報を得るまでは、村の外に出ない方がいいだろう」
村長の言葉に、俺は頷いた。
村の安全を守るためには、焦らず慎重に行動することが大切だろう。何か動きがあれば、すぐに村長に報告しよう。
「分かりました。何かあったら、すぐにお伝えします」
そう言って、俺は村長の家を後にした。
村の外に出ることなく、しばらく村の周辺の状況を見守りながら、慎重に行動していくしかない。俺の役目は、騒ぎを引き起こさずに、村を守ることだ。
村の広場に戻ると、村人たちはいつものように商売や作業に取り掛かっていた。何も変わらない日常が、そこには広がっている。
しかし、どこかで見えない不安が渦巻いているような気がしてならなかった。
今日は特に大きな出来事もなく、静かな一日が過ぎていった。
黒衣の人物たちの動きも、特に変化はなかった。
ただ、日が暮れるころ、再び村長から声がかかることを期待しつつ、俺はそのまま家で夜を迎えた。
だが、あの不穏な予感だけは消えなかった。
世界のどこかで何かが動いているような、そんな感覚を胸に抱えながら、俺は眠りについた。