第5話
夜が深まり、村は静寂に包まれた。
外からは風の音と、遠くの森から聞こえる小動物たちの鳴き声が聞こえるだけだ。村の家々からは、暖かな光が漏れ、煙突からは白い煙が上がっている。
まるで何も起こらない、平穏な日常が流れている。しかし、村長の言葉を思い出すたび、胸の奥に不安が広がっていた。
その晩、俺は村の一角にある小さな家で寝泊まりしている。
家の中は予想以上に暖かく、素朴でありながら落ち着く空間だ。しかし、寝床につこうとしたそのとき、ふと窓の外に何かが動いたような気配を感じた。
窓を少し開けて、周囲を見渡す。
月明かりが照らす中、森の端に人影がちらりと見えた。
村の人々ではないことは一目瞭然だった。黒い衣を纏った人物が、ゆっくりと森の方へと向かっているのが見える。
その姿は、村長が言っていた「異様な者たち」に違いない。
迷うことなく、俺はその人物が去った後に足音を忍ばせてその後を追うことに決めた。おそらく、何か重要な情報を得るチャンスだ。
音を立てないように慎重に歩を進めると、森の入り口に近づいたあたりでその人物が立ち止まり、何かを待っている様子だった。
だが、それからしばらくして、別の人影が現れた。黒い衣を着た別の人物だ。
二人は何か言葉を交わすが、距離があるため、内容までは聞き取れなかった。
ただ、やり取りの後、その人物たちは再び別々の方向へと歩き始めた。
これが、村に不穏な影を落としている「異様な者たち」の正体だろうか。
俺は、彼らが何をしているのか確かめるために、さらに少し近づいてみた。
が、動きが速く、すぐにその後を追うのは難しくなってきた。
だが、少なくとも、何か重要な会話が交わされていたことは確かだ。
その日の夜は、眠れぬまま過ぎていった。
朝が来ても、まだ昨晩の出来事が頭の中でぐるぐると回っていた。
村長が話していた異常な出来事――それは、村の外に現れる「異様な者たち」だけではなく、この村の周囲で確かに何かが起こっているということだ。
だが、村人たちは未だにその詳細については知る由もなく、平穏を守ろうと暮らしている。
俺も、彼らを巻き込まないように慎重に行動しながら、この謎を解き明かす方法を考えなければならない。
村の中でどこから手を付けていいのか悩んでいたが、まずは村長と話をし、何か新たな情報を得るのが良さそうだと思った。これからの方向性を決めるために、俺の手がかりが少しでも増えることを願って、再び村長の元へ向かうことにした。
不安の中、少しでも村の安全を確保するため、そしてこの世界の謎を解くため、俺の冒険が始まったばかりだと感じる。