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誤認識と置き換え
人間とAIの違いは、処理の効率化の差だ。AIは総当たり的に解析するが、人間は情報の多くを認識済みの記憶とすりかえている。
これに気が付いたのは、暗闇で目を閉じているにもかかわらず、部屋の様子が見えることだ。首を振ると、見えている光景も変化する。年をとるほど顕著になってきた。目を強くつむるほど、よりはっきり見えてくる。これは赤外線でも特殊能力ではない。瞼のわずかなむらや音から記憶が置き換えて見せているにすぎない。
なので、暗闇に入った時ほどはっきり見え、次第に見えなくなる。言葉も同じだ。逐一、解読しているわけではなく、それっぽい音を都合よく置き換えている。
これは、非常に効率がいい。意識的に見ているところにだけ、認識を集中すればいいのだ。もっとも効率はいいが、思い込みや見間違いなどのミスが生じやすい。自然界で生きるにはそれで充分だった。しかし、変化の激しい現代では予想外のことが多い。
もしかすると認知症は、大量の置き換えが生じて、脳が勘違いをおこしているのではないだろうか。