天下一寝言選手権
「今年もこの日がやって来ました。天下一寝言選手権、開幕です! 実況は私、浅田と――」
「解説の蛭間です」
「二名でお伝えしていきます。ここで競技形式をおさらいしましょう。試合は五人一斉方式、競技時間は十五分です。各選手は時間内に就寝し、寝言の内容や面白さを競います」
「一般的な国際ルールですね」
「会場には、予選を勝ち抜いた五十名の選手が集まっています。今日一日で一回戦から決勝戦まで、四つのステージで寝言をぶつけ合い、優勝者を決定します」
「天下一は世界大会と併せて、寝言界の双璧と呼ばれていますね」
「最後まで目が離せませんね!」
「まあ、選手は寝るんですけどね」
「――それでは、一回戦開始です! ……」
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「……――遂に決勝戦ですね。これまでの試合はどうでしたか、蛭間さん?」
「かなり順当ですね。前回優勝の根室と、世界チャンプの夢屋が残ってますし」
「準決勝ではまさかの事態もありましたね」
「ええ。沖田の失格は意外でした。それも、天下一で寝たフリなんて……」
「脳波は偽れませんからね。一発退場となりました」
「今後の選手としての評判にも関わってきますから、心配ですね」
「……さあ、決勝戦がスタートしました! 各選手、一斉にそれぞれのベッドに入ります」
「いやあ、根室は早いですね。もうイビキをかいてますよ」
「他の選手も続々と入眠ランプが点灯していきます。夢屋選手は出遅れたか!」
『……これ唐揚げじゃねぇだろ』
「根室選手、早くも一ポイント!」
「いいですね。気になる寝言です」
『……パパ、その女の人、誰?』
「今のは深井選手ですね。……この寝言は、続きを聞いても大丈夫なんでしょうか?」
「……ま、まあ、所詮は寝言ですから」
『……か、母ちゃん!?』
「――ブハァッ! ……し、失礼しました! ここで夢屋選手の寝言が炸裂! 何があったのか!」
「……こ、これは高評価が期待できそうですね」
『絶対、大豆ミートだって』
「根室選手、二ポイント! 巻き返しなるか?」
「さっきの寝言から繋がってますね。さすがです」
『え、舞茸なの?』
「――グフゥッ! 根室選手、まさかの展開! いったい、何を食べてるんだ!」
「いや、これは上手いコンボですよ」
「――ここでタイムアップ! 優勝は……根室選手! 天下一大会、二連覇の達成です!」
「コンボで勝敗が決まりましたね。素晴らしい試合でした」
「それではみなさん、また来年も同じ日にお会いしましょう!」
「ありがとうございました」