学園入学の日
まぶしいくらいの晴れやかな春の日、今日は晴天だ。
ほど良い白い光とさわやかな風だ。目の前には白い花が咲き乱れる樹木が学園の門の左右に立ち並んでいる。
学園の入学式としてまさにふさわしい光景だ。
ゆっくりと見てたいがそうもいかない。
門をくぐり抜けると講堂に向かって歩き出す。幸い迷うこともなく、途中で教員らしき人たちが迎えにきてくれた。
「ようこそ、お待ちしておりました。ペルセ・ソルディン様」恭しい態度で頭を下げる。恭しすぎるくらいだ。
でもまあ、仕方ない。ペルセの実家ソルディン家は公爵の位を賜るどころか、王位継承権も持つほどの家だ。武門の家柄としてはこの国最高の家だろう。
王家の子息が入学してこない今年、ペルセが新入生の答辞を指名されるのは必然だった。
エルンセル国立学園。この国一の名門校であり、この国の貴族ならだれもが通っている。ペルセも貴族の義務としてこの学園に入学した。
その学園で新入生代表として答辞。これが入学式で最初のペルセの役目だ。
実は学園から指名された時、正直盛大にペルセはいやがった。
「こう言うことにも慣れておけ」有無を言わない父と祖父の圧により受けたが、内心まだまだ面倒だった。
一応あれやこれやといってはみたが、武門の家柄であるソルディン家は騎士や軍隊の訓示を任されることもある。その練習のためにもなると言われて引き受けることになった。
「とは言えなあ・・・」
いくら社交界に出て大勢の貴族達に囲まれてきたとはいえまだまだ未熟。
「まあ、誕生日会の時よりはましか」誕生日会に大勢の腹黒い貴族たちにじっと見つめられたあの時よりはましだろう。
そう思いなおしてペルセは講堂に入っていった。